2.4. Operator Lifecycle Manager (OLM)
2.4.1. Operator Lifecycle Manager の概念およびリソース
以下で、OpenShift Container Platform での Operator Lifecycle Manager (OLM) に関連する概念を説明します。
2.4.1.1. Operator Lifecycle Manager について
Operator Lifecycle Manager (OLM) を使用することにより、ユーザーは Kubernetes ネイティブアプリケーション (Operator) および OpenShift Container Platform クラスター全体で実行される関連サービスにインストール、更新、およびそのライフサイクルの管理を実行できます。これは、Operator を効果的かつ自動化された拡張可能な方法で管理するために設計されたオープンソースツールキットの Operator Framework の一部です。
図2.2 Operator Lifecycle Manager ワークフロー
OLM は OpenShift Container Platform 4.14 でデフォルトで実行されます。これは、クラスター管理者がクラスターで実行されている Operator をインストールし、アップグレードし、アクセスをこれに付与するのに役立ちます。OpenShift Container Platform Web コンソールでは、クラスター管理者が Operator をインストールし、特定のプロジェクトアクセスを付与して、クラスターで利用可能な Operator のカタログを使用するための管理画面を利用できます。
開発者の場合は、セルフサービスを使用することで、専門的な知識がなくてもデータベースのインスタンスのプロビジョニングや設定、またモニタリング、ビッグデータサービスなどを実行できます。Operator にそれらに関するナレッジが織り込まれているためです。
2.4.1.2. OLM リソース
以下のカスタムリソース定義 (CRD) は Operator Lifecycle Manager (OLM) によって定義され、管理されます。
リソース | 短縮名 | 説明 |
---|---|---|
|
| アプリケーションメタデータ:例: 名前、バージョン、アイコン、必須リソース。 |
|
| CSV、CRD、およびアプリケーションを定義するパッケージのリポジトリー。 |
|
| パッケージのチャネルを追跡して CSV を最新の状態に保ちます。 |
|
| CSV を自動的にインストールするか、アップグレードするために作成されるリソースの計算された一覧。 |
|
|
|
| - |
OLM とそれが管理する Operator との間で通信チャネルを作成します。Operator は |
2.4.1.2.1. クラスターサービスバージョン
クラスターサービスバージョン (CSV) は、OpenShift Container Platform クラスター上で実行中の Operator の特定バージョンを表します。これは、クラスターでの Operator Lifecycle Manager (OLM) の Operator の実行に使用される Operator メタデータから作成される YAML マニフェストです。
OLM は Operator に関するこのメタデータを要求し、これがクラスターで安全に実行できるようにし、Operator の新規バージョンが公開される際に更新を適用する方法に関する情報を提供します。これは従来のオペレーティングシステムのソフトウェアのパッケージに似ています。OLM のパッケージ手順を、rpm
、deb
、または apk
バンドルを作成するステージとして捉えることができます。
CSV には、ユーザーインターフェイスに名前、バージョン、説明、ラベル、リポジトリーリンクおよびロゴなどの情報を設定するために使用される Operator コンテナーイメージに伴うメタデータが含まれます。
CSV は、Operator が管理したり、依存したりするカスタムリソース (CR)、RBAC ルール、クラスター要件、およびインストールストラテジーなどの Operator の実行に必要な技術情報の情報源でもあります。この情報は OLM に対して必要なリソースの作成方法と、Operator をデプロイメントとしてセットアップする方法を指示します。
2.4.1.2.2. カタログソース
カタログソース は、通常コンテナーレジストリーに保存されている インデックスイメージ を参照してメタデータのストアを表します。Operator Lifecycle Manager(OLM) はカタログソースをクエリーし、Operator およびそれらの依存関係を検出してインストールします。OpenShift Container Platform Web コンソールの OperatorHub は、カタログソースで提供される Operator も表示します。
クラスター管理者は、Web コンソールの Administration
CatalogSource
オブジェクトの spec
は、Pod の構築方法、または Operator レジストリー gRPC API を提供するサービスとの通信方法を示します。
例2.8 CatalogSource
オブジェクトの例
apiVersion: operators.coreos.com/v1alpha1 kind: CatalogSource metadata: generation: 1 name: example-catalog 1 namespace: openshift-marketplace 2 annotations: olm.catalogImageTemplate: 3 "quay.io/example-org/example-catalog:v{kube_major_version}.{kube_minor_version}.{kube_patch_version}" spec: displayName: Example Catalog 4 image: quay.io/example-org/example-catalog:v1 5 priority: -400 6 publisher: Example Org sourceType: grpc 7 grpcPodConfig: securityContextConfig: <security_mode> 8 nodeSelector: 9 custom_label: <label> priorityClassName: system-cluster-critical 10 tolerations: 11 - key: "key1" operator: "Equal" value: "value1" effect: "NoSchedule" updateStrategy: registryPoll: 12 interval: 30m0s status: connectionState: address: example-catalog.openshift-marketplace.svc:50051 lastConnect: 2021-08-26T18:14:31Z lastObservedState: READY 13 latestImageRegistryPoll: 2021-08-26T18:46:25Z 14 registryService: 15 createdAt: 2021-08-26T16:16:37Z port: 50051 protocol: grpc serviceName: example-catalog serviceNamespace: openshift-marketplace
- 1
CatalogSource
オブジェクトの名前。この値は、要求された namespace で作成される、関連の Pod 名の一部としても使用されます。- 2
- カタログを作成する namespace。カタログを全 namespace のクラスター全体で利用可能にするには、この値を
openshift-marketplace
に設定します。Red Hat が提供するデフォルトのカタログソースもopenshift-marketplace
namespace を使用します。それ以外の場合は、値を特定の namespace に設定し、Operator をその namespace でのみ利用可能にします。 - 3
- 任意: クラスターのアップグレードにより、Operator のインストールがサポートされていない状態になったり、更新パスが継続されなかったりする可能性を回避するために、クラスターのアップグレードの一環として、Operator カタログのインデックスイメージのバージョンを自動的に変更するように有効化することができます。
olm.catalogImageTemplate
アノテーションをインデックスイメージ名に設定し、イメージタグのテンプレートを作成する際に、1 つ以上の Kubernetes クラスターバージョン変数を使用します。アノテーションは、実行時にspec.image
フィールドを上書きします。詳細は、「カスタムカタログソースのイメージテンプレート」のセクションを参照してください。 - 4
- Web コンソールおよび CLI でのカタログの表示名。
- 5
- カタログのインデックスイメージ。オプションで、
olm.catalogImageTemplate
アノテーションを使用して実行時のプル仕様を設定する場合には、省略できます。 - 6
- カタログソースの重み。OLM は重みを使用して依存関係の解決時に優先順位付けします。重みが大きい場合は、カタログが重みの小さいカタログよりも優先されることを示します。
- 7
- ソースタイプには以下が含まれます。
-
image
参照のあるgrpc
: OLM はイメージをポーリングし、Pod を実行します。これにより、準拠 API が提供されることが予想されます。 -
address
フィールドのあるgrpc
: OLM は所定アドレスでの gRPC API へのアクセスを試行します。これはほとんどの場合使用することができません。 -
configmap
: OLM は設定マップデータを解析し、gRPC API を提供できる Pod を実行します。
-
- 8
legacy
またはrestricted
の値を指定します。フィールドが設定されていない場合、デフォルト値はlegacy
です。今後の OpenShift Container Platform リリースでは、デフォルト値がrestricted
になる予定です。restricted
権限でカタログを実行できない場合は、このフィールドを手動でlegacy
に設定することを推奨します。- 9
- オプション:
grpc
タイプのカタログソースの場合は、spec.image
でコンテンツを提供する Pod のデフォルトのノードセレクターをオーバーライドします (定義されている場合)。 - 10
- オプション:
grpc
タイプのカタログソースの場合は、spec.image
でコンテンツを提供する Pod のデフォルトの優先度クラス名をオーバーライドします (定義されている場合)。Kubernetes は、デフォルトで優先度クラスsystem-cluster-critical
およびsystem-node-critical
を提供します。フィールドを空 (""
) に設定すると、Pod にデフォルトの優先度が割り当てられます。他の優先度クラスは、手動で定義できます。 - 11
- オプション:
grpc
タイプのカタログソースの場合は、spec.image
でコンテンツを提供する Pod のデフォルトの Toleration をオーバーライドします (定義されている場合)。 - 12
- 最新の状態を維持するために、特定の間隔で新しいバージョンの有無を自動的にチェックします。
- 13
- カタログ接続が最後に監視された状態。以下に例を示します。
-
READY
: 接続が正常に確立されました。 -
CONNECTING
: 接続が確立中です。 -
TRANSIENT_FAILURE
: タイムアウトなど、接続の確立時一時的な問題が発生しました。状態は最終的にCONNECTING
に戻り、再試行されます。
詳細は、gRPC ドキュメントの 接続の状態 を参照してください。
-
- 14
- カタログイメージを保存するコンテナーレジストリーがポーリングされ、イメージが最新の状態であることを確認します。
- 15
- カタログの Operator レジストリーサービスのステータス情報。
サブスクリプションの CatalogSource
オブジェクトの name
を参照すると、要求された Operator を検索する場所を、OLM に指示します。
例2.9 カタログソースを参照する Subscription
オブジェクトの例
apiVersion: operators.coreos.com/v1alpha1 kind: Subscription metadata: name: example-operator namespace: example-namespace spec: channel: stable name: example-operator source: example-catalog sourceNamespace: openshift-marketplace
関連情報
2.4.1.2.2.1. カスタムカタログソースのイメージテンプレート
基礎となるクラスターとの Operator との互換性は、さまざまな方法でカタログソースにより表現できます。デフォルトの Red Hat が提供するカタログソースに使用される 1 つの方法として、OpenShift Container Platform 4.14 などの特定のプラットフォームリリース用に特別に作成されるインデックスイメージのイメージタグを特定することです。
クラスターのアップグレード時に、Red Hat が提供するデフォルトのカタログソースのインデックスイメージのタグは、Operator Lifecycle Manager (OLM) が最新版のカタログをプルするように、Cluster Version Operator (CVO) により自動更新されます。たとえば、OpenShift Container Platform 4.13 から 4.14 へのアップグレード時に、redhat-operators
カタログの CatalogSource
オブジェクトの spec.image
フィールドは以下のようになります。
registry.redhat.io/redhat/redhat-operator-index:v4.13
更新後は次のようになります。
registry.redhat.io/redhat/redhat-operator-index:v4.14
ただし、CVO ではカスタムカタログのイメージタグは自動更新されません。クラスターのアップグレード後、ユーザーが互換性があり、サポート対象の Operator のインストールを確実に行えるようにするには、カスタムカタログも更新して、更新されたインデックスイメージを参照する必要があります。
OpenShift Container Platform 4.9 以降、クラスター管理者はカスタムカタログの CatalogSource
オブジェクトの olm.catalogImageTemplate
アノテーションを、テンプレートなどのイメージ参照に追加できます。以下の Kubernetes バージョン変数は、テンプレートで使用できるようにサポートされています。
-
kube_major_version
-
kube_minor_version
-
kube_patch_version
OpenShift Container Platform クラスターのバージョンはテンプレートに現在しようできないので、このクラスターではなく、Kubernetes クラスターのバージョンを指定する必要があります。
更新された Kubernetes バージョンを指定するタグでインデックスイメージを作成してプッシュしている場合に、このアノテーションを設定すると、カスタムカタログのインデックスイメージのバージョンがクラスターのアップグレード後に自動的に変更されます。アノテーションの値は、CatalogSource
オブジェクトの spec.image
フィールドでイメージ参照を設定したり、更新したりするために使用されます。こうすることで、サポートなしの状態や、継続する更新パスなしの状態で Operator がインストールされないようにします。
格納されているレジストリーがどれであっても、クラスターのアップグレード時に、クラスターが、更新されたタグを含むインデックスイメージにアクセスできるようにする必要があります。
例2.10 イメージテンプレートを含むカタログソースの例
apiVersion: operators.coreos.com/v1alpha1 kind: CatalogSource metadata: generation: 1 name: example-catalog namespace: openshift-marketplace annotations: olm.catalogImageTemplate: "quay.io/example-org/example-catalog:v{kube_major_version}.{kube_minor_version}" spec: displayName: Example Catalog image: quay.io/example-org/example-catalog:v1.27 priority: -400 publisher: Example Org
spec.image
フィールドおよび olm.catalogImageTemplate
アノテーションの両方が設定されている場合には、spec.image
フィールドはアノテーションから解決された値で上書きされます。アノテーションが使用可能なプル仕様に対して解決されない場合は、カタログソースは spec.image
値にフォールバックします。
spec.image
フィールドが設定されていない場合に、アノテーションが使用可能なプル仕様に対して解決されない場合は、OLM はカタログソースの調整を停止し、人間が判読できるエラー条件に設定します。
Kubernetes 1.27 を使用する OpenShift Container Platform 4.14 クラスターでは、前述の例の olm.catalogImageTemplate
アノテーションは以下のイメージ参照に解決されます。
quay.io/example-org/example-catalog:v1.27
OpenShift Container Platform の今後のリリースでは、より新しい OpenShift Container Platform バージョンが使用する、より新しい Kubernetes バージョンを対象とした、カスタムカタログの更新済みインデックスイメージを作成できます。アップグレード前に olm.catalogImageTemplate
アノテーションを設定してから、クラスターを新しい OpenShift Container Platform バージョンにアップグレードすると、カタログのインデックスイメージも自動的に更新されます。
2.4.1.2.2.2. カタログの正常性要件
クラスター上の Operator カタログは、インストール解決の観点から相互に置き換え可能です。Subscription
オブジェクトは特定のカタログを参照する場合がありますが、依存関係はクラスターのすべてのカタログを使用して解決されます。
たとえば、カタログ A が正常でない場合、カタログ A を参照するサブスクリプションはカタログ B の依存関係を解決する可能性があります。通常、B のカタログ優先度は A よりも低いため、クラスター管理者はこれおを想定していない可能性があります。
その結果、OLM では、特定のグローバル namespace (デフォルトの openshift-marketplace
namespace やカスタムグローバル namespace など) を持つすべてのカタログが正常であることが必要になります。カタログが正常でない場合、その共有グローバル namespace 内のすべての Operator のインストールまたは更新操作は、CatalogSourcesUnhealthy
状態で失敗します。正常でない状態でこれらの操作が許可されている場合、OLM はクラスター管理者が想定しない解決やインストールを決定する可能性があります。
クラスター管理者が、カタログが正常でないことを確認し、無効とみなして Operator インストールを再開する必要がある場合は、「カスタムカタログの削除」または「デフォルトの OperatorHub カタログソースの無効化」セクションで、正常でないカタログの削除を確認してください。
2.4.1.2.3. サブスクリプション
サブスクリプション は、Subscription
オブジェクトによって定義され、Operator をインストールする意図を表します。これは、Operator をカタログソースに関連付けるカスタムリソースです。
サブスクリプションは、サブスクライブする Operator パッケージのチャネルや、更新を自動または手動で実行するかどうかを記述します。サブスクリプションが自動に設定された場合、Operator Lifecycle Manager (OLM) が Operator を管理し、アップグレードして、最新バージョンがクラスター内で常に実行されるようにします。
Subscription
オブジェクトの例
apiVersion: operators.coreos.com/v1alpha1 kind: Subscription metadata: name: example-operator namespace: example-namespace spec: channel: stable name: example-operator source: example-catalog sourceNamespace: openshift-marketplace
この Subscription
オブジェクトは、Operator の名前と namespace、および Operator データのあるカタログを定義します。alpha
、beta
、または stable
などのチャネルは、カタログソースからインストールする必要のある Operator ストリームを判別するのに役立ちます。
サブスクリプションのチャネルの名前は Operator 間で異なる可能性がありますが、命名スキームは指定された Operator 内の一般的な規則に従う必要があります。たとえば、チャネル名は Operator によって提供されるアプリケーションのマイナーリリース更新ストリーム (1.2
、1.3
) またはリリース頻度 (stable
、fast
) に基づく可能性があります。
OpenShift Container Platform Web コンソールから簡単に表示されるだけでなく、関連するサブスクリプションのステータスを確認して、Operator の新規バージョンが利用可能になるタイミングを特定できます。currentCSV
フィールドに関連付けられる値は OLM に認識される最新のバージョンであり、installedCSV
はクラスターにインストールされるバージョンです。
2.4.1.2.4. インストール計画
InstallPlan
オブジェクトによって定義される インストール計画 は、Operator Lifecycle Manager(OLM) が特定バージョンの Operator をインストールまたはアップグレードするために作成するリソースのセットを記述します。バージョンはクラスターサービスバージョン (CSV) で定義されます。
Operator、クラスター管理者、または Operator インストールパーミッションが付与されているユーザーをインストールするには、まず Subscription
オブジェクトを作成する必要があります。サブスクリプションでは、カタログソースから利用可能なバージョンの Operator のストリームにサブスクライブする意図を表します。次に、サブスクリプションは InstallPlan
オブジェクトを作成し、Operator のリソースのインストールを容易にします。
その後、インストール計画は、以下の承認ストラテジーのいずれかをもとに承認される必要があります。
-
サブスクリプションの
spec.installPlanApproval
フィールドがAutomatic
に設定されている場合には、インストール計画は自動的に承認されます。 -
サブスクリプションの
spec.installPlanApproval
フィールドがManual
に設定されている場合には、インストール計画はクラスター管理者または適切なパーミッションが割り当てられたユーザーによって手動で承認する必要があります。
インストール計画が承認されると、OLM は指定されたリソースを作成し、サブスクリプションで指定された namespace に Operator をインストールします。
例2.11 InstallPlan
オブジェクトの例
apiVersion: operators.coreos.com/v1alpha1 kind: InstallPlan metadata: name: install-abcde namespace: operators spec: approval: Automatic approved: true clusterServiceVersionNames: - my-operator.v1.0.1 generation: 1 status: ... catalogSources: [] conditions: - lastTransitionTime: '2021-01-01T20:17:27Z' lastUpdateTime: '2021-01-01T20:17:27Z' status: 'True' type: Installed phase: Complete plan: - resolving: my-operator.v1.0.1 resource: group: operators.coreos.com kind: ClusterServiceVersion manifest: >- ... name: my-operator.v1.0.1 sourceName: redhat-operators sourceNamespace: openshift-marketplace version: v1alpha1 status: Created - resolving: my-operator.v1.0.1 resource: group: apiextensions.k8s.io kind: CustomResourceDefinition manifest: >- ... name: webservers.web.servers.org sourceName: redhat-operators sourceNamespace: openshift-marketplace version: v1beta1 status: Created - resolving: my-operator.v1.0.1 resource: group: '' kind: ServiceAccount manifest: >- ... name: my-operator sourceName: redhat-operators sourceNamespace: openshift-marketplace version: v1 status: Created - resolving: my-operator.v1.0.1 resource: group: rbac.authorization.k8s.io kind: Role manifest: >- ... name: my-operator.v1.0.1-my-operator-6d7cbc6f57 sourceName: redhat-operators sourceNamespace: openshift-marketplace version: v1 status: Created - resolving: my-operator.v1.0.1 resource: group: rbac.authorization.k8s.io kind: RoleBinding manifest: >- ... name: my-operator.v1.0.1-my-operator-6d7cbc6f57 sourceName: redhat-operators sourceNamespace: openshift-marketplace version: v1 status: Created ...
2.4.1.2.5. Operator グループ
Operator グループ は、OperatorGroup
リソースによって定義され、マルチテナント設定を OLM でインストールされた Operator に提供します。Operator グループは、そのメンバー Operator に必要な RBAC アクセスを生成するために使用するターゲット namespace を選択します。
ターゲット namespace のセットは、クラスターサービスバージョン (CSV) の olm.targetNamespaces
アノテーションに保存されるコンマ区切りの文字列によって指定されます。このアノテーションは、メンバー Operator の CSV インスタンスに適用され、それらのデプロインメントに展開されます。
関連情報
2.4.1.2.6. Operator 条件
Operator のライフサイクル管理のロールの一部として、Operator Lifecycle Manager (OLM) は、Operator を定義する Kubernetes リソースの状態から Operator の状態を推測します。このアプローチでは、Operator が特定の状態にあることをある程度保証しますが、推測できない情報を Operator が OLM と通信して提供する必要がある場合も多々あります。続いて、OLM がこの情報を使用して、Operator のライフサイクルをより適切に管理することができます。
OLM は、Operator が OLM に条件を通信できる OperatorCondition
というカスタムリソース定義 (CRD) を提供します。OperatorCondition
リソースの Spec.Conditions
配列にある場合に、OLM による Operator の管理に影響するサポートされる条件のセットがあります。
デフォルトでは、Spec.Conditions
配列は、ユーザーによって追加されるか、カスタム Operator ロジックの結果として追加されるまで、OperatorCondition
オブジェクトに存在しません。
関連情報
2.4.2. Operator Lifecycle Manager アーキテクチャー
以下では、OpenShift Container Platform における Operator Lifecycle Manager (OLM) のコンポーネントのアーキテクチャーを説明します。
2.4.2.1. コンポーネントのロール
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、OLM Operator および Catalog Operator の 2 つの Operator で構成されています。
これらの Operator はそれぞれ OLM フレームワークのベースとなるカスタムリソース定義 (CRD) を管理します。
リソース | 短縮名 | 所有する Operator | 説明 |
---|---|---|---|
|
| OLM | アプリケーションのメタデータ: 名前、バージョン、アイコン、必須リソース、インストールなど。 |
|
| カタログ | CSV を自動的にインストールするか、アップグレードするために作成されるリソースの計算された一覧。 |
|
| カタログ | CSV、CRD、およびアプリケーションを定義するパッケージのリポジトリー。 |
|
| カタログ | パッケージのチャネルを追跡して CSV を最新の状態に保つために使用されます。 |
|
| OLM |
|
これらの Operator のそれぞれは以下のリソースの作成も行います。
リソース | 所有する Operator |
---|---|
| OLM |
| |
| |
| |
| カタログ |
|
2.4.2.2. OLM Operator
OLM Operator は、CSV で指定された必須リソースがクラスター内にあることが確認された後に CSV リソースで定義されるアプリケーションをデプロイします。
OLM Operator は必須リソースの作成には関与せず、ユーザーが CLI またはカタログ Operator を使用してこれらのリソースを手動で作成することを選択できます。このタスクの分離により、アプリケーションに OLM フレームワークをどの程度活用するかに関連してユーザーによる追加機能の購入を可能にします。
OLM Operator は以下のワークフローを使用します。
- namespace でクラスターサービスバージョン (CSV) の有無を確認し、要件を満たしていることを確認します。
要件が満たされている場合、CSV のインストールストラテジーを実行します。
注記CSV は、インストールストラテジーの実行を可能にするために Operator グループのアクティブなメンバーである必要があります。
2.4.2.3. Catalog Operator
Catalog Operator はクラスターサービスバージョン (CSV) およびそれらが指定する必須リソースを解決し、インストールします。また、カタログソースでチャネル内のパッケージへの更新の有無を確認し、必要な場合はそれらを利用可能な最新バージョンに自動的にアップグレードします。
チャネル内のパッケージを追跡するために、必要なパッケージ、チャネル、および更新のプルに使用する CatalogSource
オブジェクトを設定して Subscription
オブジェクトを作成できます。更新が見つかると、ユーザーに代わって適切な InstallPlan
オブジェクトの namespace への書き込みが行われます。
Catalog Operator は以下のワークフローを使用します。
- クラスターの各カタログソースに接続します。
ユーザーによって作成された未解決のインストール計画の有無を確認し、これがあった場合は以下を実行します。
- 要求される名前に一致する CSV を検索し、これを解決済みリソースとして追加します。
- マネージドまたは必須の CRD のそれぞれについて、これを解決済みリソースとして追加します。
- 必須 CRD のそれぞれについて、これを管理する CSV を検索します。
- 解決済みのインストール計画の有無を確認し、それに関する検出されたすべてのリソースを作成します (ユーザーによって、または自動的に承認される場合)。
- カタログソースおよびサブスクリプションの有無を確認し、それらに基づいてインストール計画を作成します。
2.4.2.4. カタログレジストリー
カタログレジストリーは、クラスター内での作成用に CSV および CRD を保存し、パッケージおよびチャネルに関するメタデータを保存します。
パッケージマニフェスト は、パッケージアイデンティティーを CSV のセットに関連付けるカタログレジストリー内のエントリーです。パッケージ内で、チャネルは特定の CSV を参照します。CSV は置き換え対象の CSV を明示的に参照するため、パッケージマニフェストは Catalog Operator に対し、CSV をチャネル内の最新バージョンに更新するために必要なすべての情報を提供します (各中間バージョンをステップスルー)。
2.4.3. Operator Lifecycle Manager ワークフロー
以下では、OpenShift Container Platform における Operator Lifecycle Manager (OLM) のワークロードを説明します。
2.4.3.1. OLM での Operator のインストールおよびアップグレードのワークフロー
Operator Lifecycle Manager (OLM) エコシステムでは、以下のリソースを使用して Operator インストールおよびアップグレードを解決します。
-
ClusterServiceVersion
(CSV) -
CatalogSource
-
Subscription
CSV で定義される Operator メタデータは、カタログソースというコレクションに保存できます。OLM はカタログソースを使用します。これは Operator Registry API を使用して利用可能な Operator やインストールされた Operator のアップグレードをクエリーします。
図2.3 カタログソースの概要
カタログソース内で、Operator は パッケージ と チャネル という更新のストリームに編成されます。これは、Web ブラウザーのような継続的なリリースサイクルの OpenShift Container Platform や他のソフトウェアで使用される更新パターンです。
図2.4 カタログソースのパッケージおよびチャネル
ユーザーは サブスクリプション の特定のカタログソースの特定のパッケージおよびチャネルを指定できます (例: etcd
パッケージおよびその alpha
チャネル)。サブスクリプションが namespace にインストールされていないパッケージに対して作成されると、そのパッケージの最新 Operator がインストールされます。
OLM では、バージョンの比較が意図的に避けられます。そのため、所定の catalog
各 CSV には、これが置き換える Operator を示唆する replaces
パラメーターがあります。これにより、OLM でクエリー可能な CSV のグラフが作成され、更新がチャネル間で共有されます。チャネルは、更新グラフのエントリーポイントと見なすことができます。
図2.5 利用可能なチャネル更新に関する OLM グラフ
パッケージのチャネルの例
packageName: example channels: - name: alpha currentCSV: example.v0.1.2 - name: beta currentCSV: example.v0.1.3 defaultChannel: alpha
カタログソース、パッケージ、チャネルおよび CSV がある状態で、OLM が更新のクエリーを実行できるようにするには、カタログが入力された CSV の置き換え (replaces
) を実行する単一 CSV を明確にかつ確定的に返すことができる必要があります。
2.4.3.1.1. アップグレードパスの例
アップグレードシナリオのサンプルについて、CSV バージョン 0.1.1
に対応するインストールされた Operator を見てみましょう。OLM はカタログソースをクエリーし、新規 CSV バージョン 0.1.3
について、サブスクライブされたチャネルのアップグレードを検出します。これは、古いバージョンでインストールされていない CSV バージョン 0.1.2
を置き換えます。その後、さらに古いインストールされた CSV バージョン 0.1.1
を置き換えます。
OLM は、チャネルヘッドから CSV で指定された replaces
フィールドで以前のバージョンに戻り、アップグレードパス 0.1.3
0.1.2
0.1.1
を判別します。矢印の方向は前者が後者を置き換えることを示します。OLM は、チャネルヘッドに到達するまで Operator を 1 バージョンずつアップグレードします。
このシナリオでは、OLM は Operator バージョン 0.1.2
をインストールし、既存の Operator バージョン 0.1.1
を置き換えます。その後、Operator バージョン 0.1.3
をインストールし、直前にインストールされた Operator バージョン 0.1.2
を置き換えます。この時点で、インストールされた Operator のバージョン 0.1.3
はチャネルヘッドに一致し、アップグレードは完了します。
2.4.3.1.2. アップグレードの省略
OLM のアップグレードの基本パスは以下の通りです。
- カタログソースは Operator への 1 つ以上の更新によって更新されます。
- OLM は、カタログソースに含まれる最新バージョンに到達するまで、Operator のすべてのバージョンを横断します。
ただし、この操作の実行は安全でない場合があります。公開されているバージョンの Operator がクラスターにインストールされていない場合、そのバージョンによって深刻な脆弱性が導入される可能性があるなどの理由でその Operator をがクラスターにインストールできないことがあります。
この場合、OLM は以下の 2 つのクラスターの状態を考慮に入れて、それらの両方に対応する更新グラフを提供する必要があります。
- "問題のある" 中間 Operator がクラスターによって確認され、かつインストールされている。
- "問題のある" 中間 Operator がクラスターにまだインストールされていない。
OLM は、新規カタログを送り、省略されたリリースを追加することで、クラスターの状態や問題のある更新が発見されたかどうかにかかわらず、単一の固有の更新を常に取得することができます。
省略されたリリースの CSV 例
apiVersion: operators.coreos.com/v1alpha1 kind: ClusterServiceVersion metadata: name: etcdoperator.v0.9.2 namespace: placeholder annotations: spec: displayName: etcd description: Etcd Operator replaces: etcdoperator.v0.9.0 skips: - etcdoperator.v0.9.1
古い CatalogSource および 新規 CatalogSource に関する以下の例を見てみましょう。
図2.6 更新のスキップ
このグラフは、以下を示しています。
- 古い CatalogSource の Operator には、新規 CatalogSource の単一の置き換えがある。
- 新規 CatalogSource の Operator には、新規 CatalogSource の単一の置き換えがある。
- 問題のある更新がインストールされていない場合、これがインストールされることはない。
2.4.3.1.3. 複数 Operator の置き換え
説明されているように 新規 CatalogSource を作成するには、1 つの Operator を置き換える (置き換える
) が、複数バージョンを省略 (skip
) できる CSV を公開する必要があります。これは、skipRange
アノテーションを使用して実行できます。
olm.skipRange: <semver_range>
ここで <semver_range>
には、semver ライブラリー でサポートされるバージョン範囲の形式が使用されます。
カタログで更新を検索する場合、チャネルのヘッドに skipRange
アノテーションがあり、現在インストールされている Operator にその範囲内のバージョンフィールドがある場合、OLM はチャネル内の最新エントリーに対して更新されます。
以下は動作が実行される順序になります。
-
サブスクリプションの
sourceName
で指定されるソースのチャネルヘッド (省略する他の条件が満たされている場合)。 -
sourceName
で指定されるソースの現行バージョンを置き換える次の Operator。 - サブスクリプションに表示される別のソースのチャネルヘッド (省略する他の条件が満たされている場合)。
- サブスクリプションに表示されるソースの現行バージョンを置き換える次の Operator。
skipRange
を含む CSV の例
apiVersion: operators.coreos.com/v1alpha1 kind: ClusterServiceVersion metadata: name: elasticsearch-operator.v4.1.2 namespace: <namespace> annotations: olm.skipRange: '>=4.1.0 <4.1.2'
2.4.3.1.4. z-stream サポート
z-streamまたはパッチリリースは、同じマイナーバージョンの以前のすべての z-stream リリースを置き換える必要があります。OLM は、メジャー、マイナーまたはパッチバージョンを考慮せず、カタログ内で正確なグラフのみを作成する必要があります。
つまり、OLM では 古い CatalogSource のようにグラフを使用し、以前と同様に 新規 CatalogSource にあるようなグラフを生成する必要があります。
図2.7 複数 Operator の置き換え
このグラフは、以下を示しています。
- 古い CatalogSource の Operator には、新規 CatalogSource の単一の置き換えがある。
- 新規 CatalogSource の Operator には、新規 CatalogSource の単一の置き換えがある。
- 古い CatalogSource の z-stream リリースは、新規 CatalogSource の最新 z-stream リリースに更新される。
- 使用不可のリリースは "仮想" グラフノードと見なされる。それらのコンテンツは存在する必要がなく、レジストリーはグラフが示すように応答することのみが必要になります。
2.4.4. Operator Lifecycle Manager の依存関係の解決
以下で、OpenShift Container Platform の Operator Lifecycle Manager (OLM) での依存関係の解決およびカスタムリソース定義 (CRD) アップグレードライフサイクルを説明します。
2.4.4.1. 依存関係の解決
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、実行中の Operator の依存関係の解決とアップグレードのライフサイクルを管理します。多くの場合、OLM が直面する問題は、yum
やrpm
などの他のシステムまたは言語パッケージマネージャーと同様です。
ただし、OLM にはあるものの、通常同様のシステムにはない 1 つの制約があります。Operator は常に実行されており、OLM は相互に機能しない Operator のセットの共存を防ごうとします。
その結果、以下のシナリオで OLM を使用しないでください。
- 提供できない API を必要とする Operator のセットのインストール
- Operator と依存関係のあるものに障害を発生させる仕方での Operator の更新
これは、次の 2 種類のデータで可能になります。
プロパティー | Operator に関する型付きのメタデータ。これは、依存関係のリゾルバーで Operator の公開インターフェイスを構成します。例としては、Operator が提供する API の group/version/kind (GVK) や Operator のセマンティックバージョン (semver) などがあります。 |
制約または依存関係 | ターゲットクラスターにすでにインストールされているかどうかに関係なく、他の Operator が満たす必要のある Operator の要件。これらは、使用可能なすべての Operator に対するクエリーまたはフィルターとして機能し、依存関係の解決およびインストール中に選択を制限します。クラスターで特定の API が利用できる状態にする必要がある場合や、特定のバージョンに特定の Operator をインストールする必要がある場合など、例として挙げられます。 |
OLM は、これらのプロパティーと制約をブール式のシステムに変換して SAT ソルバーに渡します。これは、ブールの充足可能性を確立するプログラムであり、インストールする Operator を決定する作業を行います。
2.4.4.2. Operator のプロパティー
カタログ内の Operator にはすべて、次のプロパティーが含まれます。
olm.package
- パッケージの名前と Operator のバージョンを含めます。
olm.gvk
- クラスターサービスバージョン (CSV) から提供された API ごとに 1 つのプロパティー
追加のプロパティーは、Operator バンドルの metadata/
ディレクトリーにproperties.yaml
ファイルを追加して、Operator 作成者が直接宣言することもできます。
任意のプロパティーの例
properties: - type: olm.kubeversion value: version: "1.16.0"
2.4.4.2.1. 任意のプロパティー
Operator の作成者は、Operator バンドルのmetadata/
ディレクトリーにあるproperties.yaml
ファイルで任意のプロパティーを宣言できます。これらのプロパティーは、実行時に Operator Lifecycle Manager (OLM) リゾルバーへの入力として使用されるマップデータ構造に変換されます。
これらのプロパティーはリゾルバーには不透明です。リゾルバーはプロパティーを理解しませんが、これらのプロパティーに対する一般的な制約を評価して、プロパティーリストを指定することで制約を満たすことができるかどうかを判断します。
任意のプロパティーの例
properties: - property: type: color value: red - property: type: shape value: square - property: type: olm.gvk value: group: olm.coreos.io version: v1alpha1 kind: myresource
この構造を使用して、ジェネリック制約の Common Expression Language (CEL) 式を作成できます。
2.4.4.3. Operator の依存関係
Operator の依存関係は、バンドルの metadata/
フォルダー内の dependencies.yaml
ファイルに一覧表示されます。このファイルはオプションであり、現時点では明示的な Operator バージョンの依存関係を指定するためにのみ使用されます。
依存関係の一覧には、依存関係の内容を指定するために各項目の type
フィールドが含まれます。次のタイプの Operator 依存関係がサポートされています。
olm.package
-
このタイプは、特定の Operator バージョンの依存関係であることを意味します。依存関係情報には、パッケージ名とパッケージのバージョンを semver 形式で含める必要があります。たとえば、
0.5.2
などの特定バージョンや>0.5.1
などのバージョンの範囲を指定することができます。 olm.gvk
- このタイプの場合、作成者は CSV の既存の CRD および API ベースの使用方法と同様に group/version/kind (GVK) 情報で依存関係を指定できます。これは、Operator の作成者がすべての依存関係、API または明示的なバージョンを同じ場所に配置できるようにするパスです。
olm.constraint
- このタイプは、任意の Operator プロパティーに対するジェネリック制約を宣言します。
以下の例では、依存関係は Prometheus Operator および etcd CRD について指定されます。
dependencies.yaml
ファイルの例
dependencies: - type: olm.package value: packageName: prometheus version: ">0.27.0" - type: olm.gvk value: group: etcd.database.coreos.com kind: EtcdCluster version: v1beta2
2.4.4.4. 一般的な制約
olm.constraint
プロパティーは、特定のタイプの依存関係制約を宣言し、非制約プロパティーと制約プロパティーを区別します。その値
フィールドは、制約メッセージの文字列表現を保持するfailureMessage
フィールドを含むオブジェクトです。このメッセージは、実行時に制約が満たされない場合に、ユーザーへの参考のコメントとして表示されます。
次のキーは、使用可能な制約タイプを示します。
gvk
-
値と解釈が
olm.gvk
タイプと同じタイプ package
-
値と解釈が
olm.package
タイプと同じタイプ cel
- 任意のバンドルプロパティーとクラスター情報に対して Operator Lifecycle Manager (OLM) リゾルバーによって実行時に評価される Common Expression Language (CEL) 式
all
、any
、not
-
gvk
やネストされた複合制約など、1 つ以上の具体的な制約を含む、論理積、論理和、否定の制約。
2.4.4.4.1. Common Expression Language (CEL) の制約
cel
制約型は、式言語としてCommon Expression Language (CEL)をサポートしています。cel
構造には、Operator が制約を満たしているかどうかを判断するために、実行時に Operator プロパティーに対して評価される CEL 式文字列を含む rule
フィールドがあります。
cel
制約の例
type: olm.constraint value: failureMessage: 'require to have "certified"' cel: rule: 'properties.exists(p, p.type == "certified")'
CEL 構文は、AND
や OR
などの幅広い論理演算子をサポートします。その結果、単一の CEL 式は、これらの論理演算子で相互にリンクされる複数の条件に対して複数のルールを含めることができます。これらのルールは、バンドルまたは任意のソースからの複数の異なるプロパティーのデータセットに対して評価され、出力は、単一の制約内でこれらのルールのすべてを満たす単一のバンドルまたは Operator に対して解決されます。
複数のルールが指定されたcel
制約の例
type: olm.constraint value: failureMessage: 'require to have "certified" and "stable" properties' cel: rule: 'properties.exists(p, p.type == "certified") && properties.exists(p, p.type == "stable")'
2.4.4.4.2. 複合制約 (all, any, not)
複合制約タイプは、論理定義に従って評価されます。
以下は、2 つのパッケージと 1 つの GVK の接続制約 (all
) の例です。つまり、インストールされたバンドルがすべての制約を満たす必要があります。
all
制約の例
schema: olm.bundle name: red.v1.0.0 properties: - type: olm.constraint value: failureMessage: All are required for Red because... all: constraints: - failureMessage: Package blue is needed for... package: name: blue versionRange: '>=1.0.0' - failureMessage: GVK Green/v1 is needed for... gvk: group: greens.example.com version: v1 kind: Green
以下は、同じ GVK の 3 つのバージョンの選言的制約 ( any
) の例です。つまり、インストールされたバンドルが少なくとも 1 つの制約を満たす必要があります。
any
制約の例
schema: olm.bundle name: red.v1.0.0 properties: - type: olm.constraint value: failureMessage: Any are required for Red because... any: constraints: - gvk: group: blues.example.com version: v1beta1 kind: Blue - gvk: group: blues.example.com version: v1beta2 kind: Blue - gvk: group: blues.example.com version: v1 kind: Blue
以下は、GVK の 1 つのバージョンの否定制約 (not
) の例です。つまり、この結果セットのバンドルでは、この GVK を提供できません。
not
の制約例
schema: olm.bundle name: red.v1.0.0 properties: - type: olm.constraint value: all: constraints: - failureMessage: Package blue is needed for... package: name: blue versionRange: '>=1.0.0' - failureMessage: Cannot be required for Red because... not: constraints: - gvk: group: greens.example.com version: v1alpha1 kind: greens
否定のセマンティクスは、not
制約のコンテキストで不明確であるように見える場合があります。つまり、この否定では、特定の GVK、あるバージョンのパッケージを含むソリューション、または結果セットからの子の複合制約を満たすソリューションを削除するように、リゾルバーに対して指示を出しています。
当然の結果として、最初に可能な依存関係のセットを選択せずに否定することは意味がないため、複合ではnot
制約はall
またはany
制約内でのみ使用する必要があります。
2.4.4.4.3. ネストされた複合制約
ネストされた複合制約 (少なくとも 1 つの子複合制約と 0 個以上の単純な制約を含む制約) は、前述の各制約タイプの手順に従って、下から上に評価されます。
以下は、接続詞の論理和の例で、one、the other、または both が制約を満たすことができます。
ネストされた複合制約の例
schema: olm.bundle name: red.v1.0.0 properties: - type: olm.constraint value: failureMessage: Required for Red because... any: constraints: - all: constraints: - package: name: blue versionRange: '>=1.0.0' - gvk: group: blues.example.com version: v1 kind: Blue - all: constraints: - package: name: blue versionRange: '<1.0.0' - gvk: group: blues.example.com version: v1beta1 kind: Blue
olm.constraint
タイプの最大 raw サイズは 64KB に設定されており、リソース枯渇攻撃を制限しています。
2.4.4.5. 依存関係の設定
Operator の依存関係を同等に満たすオプションが多数ある場合があります。Operator Lifecycle Manager (OLM) の依存関係リゾルバーは、要求された Operator の要件に最も適したオプションを判別します。Operator の作成者またはユーザーとして、依存関係の解決が明確になるようにこれらの選択方法を理解することは重要です。
2.4.4.5.1. カタログの優先順位
OpenShift Container Platform クラスターでは、OLM はカタログソースを読み取り、インストールに使用できる Operator を確認します。
CatalogSource
オブジェクトの例
apiVersion: "operators.coreos.com/v1alpha1"
kind: "CatalogSource"
metadata:
name: "my-operators"
namespace: "operators"
spec:
sourceType: grpc
grpcPodConfig:
securityContextConfig: <security_mode> 1
image: example.com/my/operator-index:v1
displayName: "My Operators"
priority: 100
- 1
legacy
またはrestricted
の値を指定します。フィールドが設定されていない場合、デフォルト値はlegacy
です。今後の OpenShift Container Platform リリースでは、デフォルト値がrestricted
になる予定です。restricted
権限でカタログを実行できない場合は、このフィールドを手動でlegacy
に設定することを推奨します。
CatalogSource
オブジェクトには priority
フィールドがあります。このフィールドは、依存関係のオプションを優先する方法を把握するためにリゾルバーによって使用されます。
カタログ設定を規定する 2 つのルールがあります。
- 優先順位の高いカタログにあるオプションは、優先順位の低いカタログのオプションよりも優先されます。
- 依存オブジェクトと同じカタログにあるオプションは他のカタログよりも優先されます。
2.4.4.5.2. チャネルの順序付け
カタログの Operator パッケージは、ユーザーが OpenShift Container Platform クラスターでサブスクライブできる更新チャネルのコレクションです。チャネルは、マイナーリリース (1.2
、1.3
) またはリリース頻度 (stable
、fast
) に関する特定の更新ストリームを提供するために使用できます。
同じパッケージの Operator によって依存関係が満たされる可能性がありますが、その場合、異なるチャネルの Operator のバージョンによって満たされる可能性があります。たとえば、Operator のバージョン 1.2
は stable
および fast
チャネルの両方に存在する可能性があります。
それぞれのパッケージにはデフォルトのチャネルがあり、これは常にデフォルト以外のチャネルよりも優先されます。デフォルトチャネルのオプションが依存関係を満たさない場合には、オプションは、チャネル名の辞書式順序 (lexicographic order) で残りのチャネルから検討されます。
2.4.4.5.3. チャネル内での順序
ほとんどの場合、単一のチャネル内に依存関係を満たすオプションが複数あります。たとえば、1 つのパッケージおよびチャネルの Operator は同じセットの API を提供します。
ユーザーがサブスクリプションを作成すると、それらはどのチャネルから更新を受け取るかを示唆します。これにより、すぐにその 1 つのチャネルだけに検索が絞られます。ただし、チャネル内では、多くの Operator が依存関係を満たす可能性があります。
チャネル内では、更新グラフでより上位にある新規 Operator が優先されます。チャネルのヘッドが依存関係を満たす場合、これがまず試行されます。
2.4.4.5.4. その他の制約
OLM には、パッケージの依存関係で指定される制約のほかに、必要なユーザーの状態を表し、常にメンテナンスする必要のある依存関係の解決を適用するための追加の制約が含まれます。
2.4.4.5.4.1. サブスクリプションの制約
サブスクリプションの制約は、サブスクリプションを満たすことのできる Operator のセットをフィルターします。サブスクリプションは、依存関係リゾルバーに関するユーザー指定の制約です。それらは、クラスター上にない場合は新規 Operator をインストールすることを宣言するか、既存 Operator の更新された状態を維持することを宣言します。
2.4.4.5.4.2. パッケージの制約
namespace 内では、2 つの Operator が同じパッケージから取得されることはありません。
2.4.4.5.5. 関連情報
2.4.4.6. CRD のアップグレード
OLM は、単一のクラスターサービスバージョン (CSV) によって所有されている場合にはカスタムリソース定義 (CRD) をすぐにアップグレードします。CRD が複数の CSV によって所有されている場合、CRD は、以下の後方互換性の条件のすべてを満たす場合にアップグレードされます。
- 現行 CRD の既存の有効にされたバージョンすべてが新規 CRD に存在する。
- 検証が新規 CRD の検証スキーマに対して行われる場合、CRD の提供バージョンに関連付けられる既存インスタンスまたはカスタムリソースすべてが有効である。
2.4.4.7. 依存関係のベストプラクティス
依存関係を指定する際には、ベストプラクティスを考慮する必要があります。
- Operator の API または特定のバージョン範囲によって異なります。
-
Operator は API をいつでも追加または削除できます。Operator が必要とする API に
olm.gvk
依存関係を常に指定できます。これの例外は、olm.package
制約を代わりに指定する場合です。 - 最小バージョンの設定
API の変更に関する Kubernetes ドキュメントでは、Kubernetes 形式の Operator で許可される変更を説明しています。これらのバージョン管理規則により、Operator は API バージョンに後方互換性がある限り、API バージョンに影響を与えずに API を更新することができます。
Operator の依存関係の場合、依存関係の API バージョンを把握するだけでは、依存する Operator が確実に意図された通りに機能することを確認できないことを意味します。
以下に例を示します。
-
TestOperator v1.0.0 は、v1alpha1 API バージョンの
MyObject
リソースを提供します。 -
TestOperator v1.0.1 は新しいフィールド
spec.newfield
をMyObject
に追加しますが、v1alpha1 のままになります。
Operator では、
spec.newfield
をMyObject
リソースに書き込む機能が必要になる場合があります。olm.gvk
制約のみでは、OLM で TestOperator v1.0.0 ではなく TestOperator v1.0.1 が必要であると判断することはできません。可能な場合には、API を提供する特定の Operator が事前に分かっている場合、最小値を設定するために追加の
olm.package
制約を指定します。-
TestOperator v1.0.0 は、v1alpha1 API バージョンの
- 最大バージョンを省略するか、幅広いバージョンを許可します。
Operator は API サービスや CRD などのクラスタースコープのリソースを提供するため、依存関係に小規模な範囲を指定する Operator は、その依存関係の他のコンシューマーの更新に不要な制約を加える可能性があります。
可能な場合は、最大バージョンを設定しないでください。または、他の Operator との競合を防ぐために、幅広いセマンティクスの範囲を設定します。例:
>1.0.0 <2.0.0
従来のパッケージマネージャーとは異なり、Operator の作成者は更新が OLM のチャネルで更新を安全に行われるように Operator を明示的にエンコードします。更新が既存のサブスクリプションで利用可能な場合、Operator の作成者がこれが以前のバージョンから更新できることを示唆していることが想定されます。依存関係の最大バージョンを設定すると、特定の上限で不必要な切り捨てが行われることにより、作成者の更新ストリームが上書きされます。
注記クラスター管理者は、Operator の作成者が設定した依存関係を上書きすることはできません。
ただし、回避する必要がある非互換性があることが分かっている場合は、最大バージョンを設定でき、およびこれを設定する必要があります。特定のバージョンは、バージョン範囲の構文 (例:
1.0.0 !1.2.1
) で省略できます。
関連情報
- Kubernetes ドキュメント: Changing the API
2.4.4.8. 依存関係に関する注意事項
依存関係を指定する際には、考慮すべき注意事項があります。
- 複合制約がない (AND)
現時点で、制約の間に AND 関係を指定する方法はありません。つまり、ある Operator が、所定の API を提供し、バージョン
>1.1.0
を持つ別の Operator に依存するように指定することはできません。依存関係を指定すると、以下のようになります。
dependencies: - type: olm.package value: packageName: etcd version: ">3.1.0" - type: olm.gvk value: group: etcd.database.coreos.com kind: EtcdCluster version: v1beta2
OLM は EtcdCluster を提供する Operator とバージョン
>3.1.0
を持つ Operator の 2 つの Operator で、上記の依存関係の例の条件を満たすことができる可能性があります。その場合や、または両方の制約を満たす Operator が選択されるかどうかは、選択できる可能性のあるオプションが参照される順序によって変わります。依存関係の設定および順序のオプションは十分に定義され、理にかなったものであると考えられますが、Operator は継続的に特定のメカニズムをベースとする必要があります。- namespace 間の互換性
- OLM は namespace スコープで依存関係の解決を実行します。ある namespace での Operator の更新が別の namespace の Operator の問題となる場合、更新のデッドロックが生じる可能性があります。
2.4.4.9. 依存関係解決のシナリオ例
以下の例で、プロバイダー は CRD または API サービスを "所有" する Operator です。
例: 依存 API を非推奨にする
A および B は API (CRD):
- A のプロバイダーは B によって異なる。
- B のプロバイダーにはサブスクリプションがある。
- B のプロバイダーは C を提供するように更新するが、B を非推奨にする。
この結果は以下のようになります。
- B にはプロバイダーがなくなる。
- A は機能しなくなる。
これは OLM がアップグレードストラテジーで回避するケースです。
例: バージョンのデッドロック
A および B は API である:
- A のプロバイダーは B を必要とする。
- B のプロバイダーは A を必要とする。
- A のプロバイダーは (A2 を提供し、B2 を必要とするように) 更新し、A を非推奨にする。
- B のプロバイダーは (B2 を提供し、A2 を必要とするように) 更新し、B を非推奨にする。
OLM が B を同時に更新せずに A を更新しようとする場合や、その逆の場合、OLM は、新しい互換性のあるセットが見つかったとしても Operator の新規バージョンに進むことができません。
これは OLM がアップグレードストラテジーで回避するもう 1 つのケースです。
2.4.5. Operator グループ
以下では、OpenShift Container Platform で Operator Lifecycle Manager (OLM) を使用した Operator グループの使用を説明します。
2.4.5.1. Operator グループについて
Operator グループ は、OperatorGroup
リソースによって定義され、マルチテナント設定を OLM でインストールされた Operator に提供します。Operator グループは、そのメンバー Operator に必要な RBAC アクセスを生成するために使用するターゲット namespace を選択します。
ターゲット namespace のセットは、クラスターサービスバージョン (CSV) の olm.targetNamespaces
アノテーションに保存されるコンマ区切りの文字列によって指定されます。このアノテーションは、メンバー Operator の CSV インスタンスに適用され、それらのデプロインメントに展開されます。
2.4.5.2. Operator グループメンバーシップ
Operator は、以下の条件が true の場合に Operator グループの メンバー とみなされます。
- Operator の CSV が Operator グループと同じ namespace にある。
- Operator の CSV のインストールモードは Operator グループがターゲットに設定する namespace のセットをサポートする。
CSV のインストールモードは InstallModeType
フィールドおよびブール値の Supported
フィールドで構成されます。CSV の仕様には、4 つの固有の InstallModeTypes
のインストールモードのセットを含めることができます。
InstallMode タイプ | 説明 |
---|---|
| Operator は、独自の namespace を選択する Operator グループのメンバーにすることができます。 |
| Operator は 1 つの namespace を選択する Operator グループのメンバーにすることができます。 |
| Operator は複数の namespace を選択する Operator グループのメンバーにすることができます。 |
|
Operator はすべての namespace を選択する Operator グループのメンバーにすることができます (設定されるターゲット namespace は空の文字列 |
CSV の仕様が InstallModeType
のエントリーを省略する場合、そのタイプは暗黙的にこれをサポートする既存エントリーによってサポートが示唆されない限り、サポートされないものとみなされます。
2.4.5.3. ターゲット namespace の選択
spec.targetNamespaces
パラメーターを使用して Operator グループのターゲット namespace に名前を明示的に指定することができます。
apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OperatorGroup metadata: name: my-group namespace: my-namespace spec: targetNamespaces: - my-namespace
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、各 Operator グループに対して次のクラスターロールを作成します。
-
<operatorgroup_name>-admin
-
<operatorgroup_name>-edit
-
<operatorgroup_name>-view
Operator グループを手動で作成する場合は、既存のクラスターロールまたはクラスター上の他のOperator グループと競合しない一意の名前を指定する必要があります。
または、spec.selector
パラメーターでラベルセレクターを使用して namespace を指定することもできます。
apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OperatorGroup metadata: name: my-group namespace: my-namespace spec: selector: cool.io/prod: "true"
spec.targetNamespaces
で複数の namespace をリスト表示したり、spec.selector
でラベルセレクターを使用したりすることは推奨されません。Operator グループの複数のターゲット namespace のサポートは今後のリリースで取り除かれる可能性があります。
spec.targetNamespaces
と spec.selector
の両方が定義されている場合、spec.selector
は無視されます。または、spec.selector
と spec.targetNamespaces
の両方を省略し、global Operator グループを指定できます。これにより、すべての namespace が選択されます。
apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OperatorGroup metadata: name: my-group namespace: my-namespace
選択された namespace の解決済みのセットは Operator グループの status.namespaces
パラメーターに表示されます。グローバル Operator グループの status.namespace
には空の文字列 (""
) が含まれます。 これは、消費する Operator に対し、すべての namespace を監視するように示唆します。
2.4.5.4. Operator グループの CSV アノテーション
Operator グループのメンバー CSV には以下のアノテーションがあります。
アノテーション | 説明 |
---|---|
| Operator グループの名前が含まれます。 |
| Operator グループの namespace が含まれます。 |
| Operator グループのターゲット namespace 選択をリスト表示するコンマ区切りの文字列が含まれます。 |
olm.targetNamespaces
以外のすべてのアノテーションがコピーされた CSV と共に含まれます。olm.targetNamespaces
アノテーションをコピーされた CSV で省略すると、テナント間のターゲット namespace の重複が回避されます。
2.4.5.5. 提供される API アノテーション
group/version/kind(GVK) は Kubernetes API の一意の識別子です。Operator グループによって提供される GVK に関する情報が olm.providedAPIs
アノテーションに表示されます。アノテーションの値は、コンマで区切られた <kind>.<version>.<group>
で構成される文字列です。Operator グループのすべてのアクティブメンバーの CSV によって提供される CRD および API サービスの GVK が含まれます。
PackageManifest
リースを提供する単一のアクティブメンバー CSV を含む OperatorGroup
オブジェクトの以下の例を確認してください。
apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OperatorGroup metadata: annotations: olm.providedAPIs: PackageManifest.v1alpha1.packages.apps.redhat.com name: olm-operators namespace: local ... spec: selector: {} serviceAccount: metadata: creationTimestamp: null targetNamespaces: - local status: lastUpdated: 2019-02-19T16:18:28Z namespaces: - local
2.4.5.6. ロールベースのアクセス制御
Operator グループの作成時に、3 つのクラスタールールが生成されます。それぞれには、以下に示すようにクラスターロールセレクターがラベルに一致するように設定された単一の集計ルールが含まれます。
クラスターロール | 一致するラベル |
---|---|
|
|
|
|
|
|
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、各 Operator グループに対して次のクラスターロールを作成します。
-
<operatorgroup_name>-admin
-
<operatorgroup_name>-edit
-
<operatorgroup_name>-view
Operator グループを手動で作成する場合は、既存のクラスターロールまたはクラスター上の他のOperator グループと競合しない一意の名前を指定する必要があります。
以下の RBAC リソースは、CSV が AllNamespaces
インストールモードのあるすべての namespace を監視しており、理由が InterOperatorGroupOwnerConflict
の失敗状態にない限り、CSV が Operator グループのアクティブメンバーになる際に生成されます。
- CRD からの各 API リソースのクラスターロール
- API サービスからの各 API リソースのクラスターロール
- 追加のロールおよびロールバインディング
クラスターロール | 設定 |
---|---|
|
集計ラベル:
|
|
集計ラベル:
|
|
集計ラベル:
|
|
Verbs on
集計ラベル:
|
クラスターロール | 設定 |
---|---|
|
集計ラベル:
|
|
集計ラベル:
|
|
集計ラベル:
|
追加のロールおよびロールバインディング
-
CSV が
*
が含まれる 1 つのターゲット namespace を定義する場合、クラスターロールと対応するクラスターロールバインディングが CSV のpermissions
フィールドに定義されるパーミッションごとに生成されます。生成されたすべてのリソースにはolm.owner: <csv_name>
およびolm.owner.namespace: <csv_namespace>
ラベルが付与されます。 -
CSV が
*
が含まれる 1 つのターゲット namespace を定義 しない 場合、olm.owner: <csv_name>
およびolm.owner.namespace: <csv_namespace>
ラベルの付いた Operator namespace にあるすべてのロールおよびロールバインディングがターゲット namespace にコピーされます。
2.4.5.7. コピーされる CSV
OLM は、それぞれの Operator グループのターゲット namespace の Operator グループのすべてのアクティブな CSV のコピーを作成します。コピーされる CSV の目的は、ユーザーに対して、特定の Operator が作成されるリソースを監視するように設定されたターゲット namespace について通知することにあります。
コピーされる CSV にはステータスの理由 Copied
があり、それらのソース CSV のステータスに一致するように更新されます。olm.targetNamespaces
アノテーションは、クラスター上でコピーされる CSV が作成される前に取られます。ターゲット namespace 選択を省略すると、テナント間のターゲット namespace の重複が回避されます。
コピーされる CSV はそれらのソース CSV が存在しなくなるか、それらのソース CSV が属する Operator グループが、コピーされた CSV の namespace をターゲットに設定しなくなると削除されます。
デフォルトでは、disableCopiedCSVs
フィールドは無効になっています。disableCopiedCSVs
フィールドを有効にすると、OLM はクラスター上の既存のコピーされた CSV を削除します。disableCopiedCSVs
フィールドが無効になると、OLM はコピーされた CSV を再度追加します。
disableCopiedCSVs
フィールドを無効にします。$ cat << EOF | oc apply -f - apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OLMConfig metadata: name: cluster spec: features: disableCopiedCSVs: false EOF
disableCopiedCSVs
フィールドを有効にします。$ cat << EOF | oc apply -f - apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OLMConfig metadata: name: cluster spec: features: disableCopiedCSVs: true EOF
2.4.5.8. 静的 Operator グループ
Operator グループはその spec.staticProvidedAPIs
フィールドが true
に設定されると 静的 になります。その結果、OLM は Operator グループの olm.providedAPIs
アノテーションを変更しません。つまり、これを事前に設定することができます。これは、ユーザーが Operator グループを使用して namespace のセットでリソースの競合を防ぐ必要がある場合で、それらのリソースの API を提供するアクティブなメンバーの CSV がない場合に役立ちます。
以下は、something.cool.io/cluster-monitoring: "true"
アノテーションのあるすべての namespace の Prometheus
リソースを保護する Operator グループの例です。
apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OperatorGroup metadata: name: cluster-monitoring namespace: cluster-monitoring annotations: olm.providedAPIs: Alertmanager.v1.monitoring.coreos.com,Prometheus.v1.monitoring.coreos.com,PrometheusRule.v1.monitoring.coreos.com,ServiceMonitor.v1.monitoring.coreos.com spec: staticProvidedAPIs: true selector: matchLabels: something.cool.io/cluster-monitoring: "true"
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、各 Operator グループに対して次のクラスターロールを作成します。
-
<operatorgroup_name>-admin
-
<operatorgroup_name>-edit
-
<operatorgroup_name>-view
Operator グループを手動で作成する場合は、既存のクラスターロールまたはクラスター上の他のOperator グループと競合しない一意の名前を指定する必要があります。
2.4.5.9. Operator グループの交差部分
2 つの Operator グループは、それらのターゲット namespace セットの交差部分が空のセットではなく、olm.providedAPIs
アノテーションで定義されるそれらの指定 API セットの交差部分が空のセットではない場合に、交差部分のある指定 API があると見なされます。
これによって生じ得る問題として、交差部分のある指定 API を持つ複数の Operator グループは、一連の交差部分のある namespace で同じリソースに関して競合関係になる可能性があります。
交差ルールを確認すると、Operator グループの namespace は常に選択されたターゲット namespace の一部として組み込まれます。
交差のルール
アクティブメンバーの CSV が同期する際はいつでも、OLM はクラスターで、CSV の Operator グループとそれ以外のすべての間での交差部分のある指定 API のセットをクエリーします。その後、OLM はそのセットが空のセットであるかどうかを確認します。
true
であり、CSV の指定 API が Operator グループのサブセットである場合:- 移行を継続します。
true
であり、CSV の指定 API が Operator グループのサブセット ではない 場合:Operator グループが静的である場合:
- CSV に属するすべてのデプロイメントをクリーンアップします。
-
ステータスの理由
CannotModifyStaticOperatorGroupProvidedAPIs
のある失敗状態に CSV を移行します。
Operator グループが静的 ではない 場合:
-
Operator グループの
olm.providedAPIs
アノテーションを、それ自体と CSV の指定 API の集合に置き換えます。
-
Operator グループの
false
であり、CSV の指定 API が Operator グループのサブセット ではない 場合:- CSV に属するすべてのデプロイメントをクリーンアップします。
-
ステータスの理由
InterOperatorGroupOwnerConflict
のある失敗状態に CSV を移行します。
false
であり、CSV の指定 API が Operator グループのサブセットである場合:Operator グループが静的である場合:
- CSV に属するすべてのデプロイメントをクリーンアップします。
-
ステータスの理由
CannotModifyStaticOperatorGroupProvidedAPIs
のある失敗状態に CSV を移行します。
Operator グループが静的 ではない 場合:
-
Operator グループの
olm.providedAPIs
アノテーションを、それ自体と CSV の指定 API 間の差異部分に置き換えます。
-
Operator グループの
Operator グループによって生じる失敗状態は非終了状態です。
以下のアクションは、Operator グループが同期するたびに実行されます。
- アクティブメンバーの CSV の指定 API のセットは、クラスターから計算されます。コピーされた CSV は無視されることに注意してください。
-
クラスターセットは
olm.providedAPIs
と比較され、olm.providedAPIs
に追加の API が含まれる場合は、それらの API がプルーニングされます。 - すべての namespace で同じ API を提供するすべての CSV は再びキューに入れられます。これにより、交差部分のあるグループ間の競合する CSV に対して、それらの競合が競合する CSV のサイズ変更または削除のいずれかによって解決されている可能性があることが通知されます。
2.4.5.10. マルチテナント Operator 管理の制限事項
OpenShift Container Platform は、異なるバージョンの Operator を同じクラスターに同時にインストールするための限定的なサポートを提供します。Operator Lifecycle Manager (OLM) は、Operator を異なる namespace に複数回インストールします。その 1 つの制約として、Operator の API バージョンは同じである必要があります。
Operator は、Kubernetes のグローバルリソースである CustomResourceDefinition
オブジェクト (CRD) を使用するため、コントロールプレーンの拡張機能です。多くの場合、Operator の異なるメジャーバージョンには互換性のない CRD があります。これにより、クラスター上の異なる namespace に同時にインストールするのに互換性がなくなります。
すべてのテナントまたは namespace がクラスターの同じコントロールプレーンを共有します。したがって、マルチテナントクラスター内のテナントはグローバル CRD も共有するため、同じクラスターで同じ Operator の異なるインスタンスを並行して使用できるシナリオが制限されます。
サポートされているシナリオは次のとおりです。
- まったく同じ CRD 定義を提供する異なるバージョンの Operator (バージョン管理された CRD の場合は、まったく同じバージョンのセット)
- CRD を同梱せず、代わりに OperatorHub の別のバンドルで CRD を利用できる異なるバージョンの Operator
他のすべてのシナリオはサポートされていません。これは、異なる Operator バージョンからの複数の競合または重複する CRD が同じクラスター上で調整される場合、クラスターデータの整合性が保証されないためです。
2.4.5.11. Operator グループのトラブルシューティング
メンバーシップ
インストールプランの namespace には、Operator グループを 1 つだけ含める必要があります。namespace でクラスターサービスバージョン (CSV) を生成しようとすると、インストールプランでは、以下のシナリオの Operator グループが無効であると見なされます。
- インストールプランの namespace に Operator グループが存在しない。
- インストールプランの namespace に複数の Operator グループが存在する。
- Operator グループに、正しくないサービスアカウント名または存在しないサービスアカウント名が指定されている。
インストールプランで無効な Operator グループが検出された場合には、CSV は生成されず、
InstallPlan
リソースは関連するメッセージを出力して、インストールを続行します。たとえば、複数の Operator グループが同じ namespace に存在する場合に以下のメッセージが表示されます。attenuated service account query failed - more than one operator group(s) are managing this namespace count=2
ここでは、
count=
は、namespace 内の Operator グループの数を指します。-
CSV のインストールモードがその namespace で Operator グループのターゲット namespace 選択をサポートしない場合、CSV は
UnsupportedOperatorGroup
の理由で失敗状態に切り替わります。この理由で失敗した状態にある CSV は、Operator グループのターゲット namespace の選択がサポートされる設定に変更されるか、CSV のインストールモードがターゲット namespace 選択をサポートするように変更される場合に、保留状態に切り替わります。
2.4.6. マルチテナント対応と Operator のコロケーション
このガイドでは、Operator Lifecycle Manager (OLM) のマルチテナント対応と Operator のコロケーションを説明します。
2.4.6.1. namespace 内での Operator コロケーション
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、同じ namespace にインストールされている OLM 管理 Operator を処理します。つまり、それらの Subscription
リソースは、関連する Operator として同じ namespace に配置されます。それらが実際には関連していなくても、いずれかが更新されると、OLM はバージョンや更新ポリシーなどの状態を考慮します。
このデフォルトの動作は、次の 2 つの方法で現れます。
-
保留中の更新の
InstallPlan
リソースには、同じ namespace にある他のすべての Operator のClusterServiceVersion
(CSV) リソースが含まれます。 - 同じ namespace 内のすべての Operator は、同じ更新ポリシーを共有します。たとえば、1 つの Operator が手動更新に設定されている場合は、他のすべての Operator の更新ポリシーも手動に設定されます。
これらのシナリオは、次の問題につながる可能性があります。
- 更新された Operator だけでなく、より多くのリソースが定義されているため、Operator 更新のインストール計画を推論するのは難しくなります。
- ネームスペース内の一部の Operator を自動的に更新し、他の Operator を手動で更新することは不可能になります。これは、クラスター管理者にとって一般的な要望です。
OpenShift Container Platform Web コンソールを使用して Operator をインストールすると、デフォルトの動作により、All namespaces インストールモードをサポートする Operator がデフォルトの openshift-operators
グローバル namespace にインストールされるため、これらの問題は通常表面化します。
クラスター管理者は、次のワークフローを使用して、このデフォルトの動作を手動でバイパスできます。
- Operator のインストール用の namespace を作成します。
- すべての namespace を監視する Operator グループである、カスタム グローバル Operator グループ を作成します。この Operator グループを作成した namespace に関連付けることで、インストール namespace がグローバル namespace になり、そこにインストールされた Operator がすべての namespace で使用できるようになります。
- 必要な Operator をインストール namespace にインストールします。
Operator に依存関係がある場合、依存関係は事前に作成された namespace に自動的にインストールされます。その結果、依存関係 Operator が同じ更新ポリシーと共有インストールプランを持つことが有効になります。詳細な手順は、「カスタム namespace へのグローバル Operator のインストール」を参照してください。
2.4.7. Operator 条件
以下では、Operator Lifecycle Manager (OLM) による Operator 条件の使用方法を説明します。
2.4.7.1. Operator 条件について
Operator のライフサイクル管理のロールの一部として、Operator Lifecycle Manager (OLM) は、Operator を定義する Kubernetes リソースの状態から Operator の状態を推測します。このアプローチでは、Operator が特定の状態にあることをある程度保証しますが、推測できない情報を Operator が OLM と通信して提供する必要がある場合も多々あります。続いて、OLM がこの情報を使用して、Operator のライフサイクルをより適切に管理することができます。
OLM は、Operator が OLM に条件を通信できる OperatorCondition
というカスタムリソース定義 (CRD) を提供します。OperatorCondition
リソースの Spec.Conditions
配列にある場合に、OLM による Operator の管理に影響するサポートされる条件のセットがあります。
デフォルトでは、Spec.Conditions
配列は、ユーザーによって追加されるか、カスタム Operator ロジックの結果として追加されるまで、OperatorCondition
オブジェクトに存在しません。
2.4.7.2. サポートされる条件
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、以下の Operator 条件をサポートします。
2.4.7.2.1. アップグレード可能な条件
Upgradeable
Operator 条件は、既存のクラスターサービスバージョン (CSV) が、新規の CSV バージョンに置き換えられることを阻止します。この条件は、以下の場合に役に立ちます。
- Operator が重要なプロセスを開始するところで、プロセスが完了するまでアップグレードしてはいけない場合
- Operator が、Operator のアップグレードの準備ができる前に完了する必要のあるカスタムリソース (CR) の移行を実行している場合
Upgradeable
Operator の条件を False
値に設定しても、Pod の中断は回避できません。Pod が中断されないようにする必要がある場合は、「追加リソース」セクションの「Pod 中断バジェットを使用して稼働させなければならない Pod の数を指定する」と「正常な終了」を参照してください。
Upgradeable
Operator 条件の例
apiVersion: operators.coreos.com/v1 kind: OperatorCondition metadata: name: my-operator namespace: operators spec: conditions: - type: Upgradeable 1 status: "False" 2 reason: "migration" message: "The Operator is performing a migration." lastTransitionTime: "2020-08-24T23:15:55Z"
2.4.7.3. 関連情報
2.4.8. Operator Lifecycle Manager メトリクス
2.4.8.1. 公開されるメトリック
Operator Lifecycle Manager (OLM) は、Prometheus ベースの OpenShift Container Platform クラスターモニタリングスタックで使用される特定の OLM 固有のリソースを公開します。
名前 | 説明 |
---|---|
| カタログソースの数。 |
|
カタログソースの状態。値 |
|
クラスターサービスバージョン (CSV) を調整する際に、(インストールされていない場合など) CSV バージョンが |
| 正常に登録された CSV の数。 |
|
CSV を調整する際に、CSV バージョンが |
| CSV アップグレードの単調 (monotonic) カウント。 |
| インストール計画の数。 |
| インストール計画に含まれる非推奨のリソースなど、リソースによって生成される警告の個数。 |
| 依存関係解決の試行期間。 |
| サブスクリプションの数。 |
|
サブスクリプション同期の単調 (monotonic) カウント。 |
2.4.9. Operator Lifecycle Manager での Webhook の管理
Webhook により、リソースがオブジェクトストアに保存され、Operator コントローラーによって処理される前に、Operator の作成者はリソースのインターセプト、変更、許可、および拒否を実行することができます。Operator Lifecycle Manager (OLM) は、Operator と共に提供される際にこれらの Webhook のライフサイクルを管理できます。
Operator 開発者が自分の Operator に Webhook を定義する方法の詳細と、OLM で実行する場合の注意事項は、クラスターサービスのバージョン (CSV) を定義する を参照してください。
2.4.9.1. 関連情報
- Webhook 受付プラグインのタイプ
Kubernetes ドキュメント: