32.4. MetalLB アドレスプールの設定
クラスター管理者は、アドレスプールを追加、変更、および削除できます。MetalLB Operator は、アドレスプールカスタムリソースを使用して、MetalLB がサービスに割り当てることのできる IP アドレスを設定します。例で使用されている namespace は、namespace が metallb-system
であることを前提としています。
32.4.1. IPAddressPool カスタムリソースについて
OpenShift Container Platform 4.10 の MetalLB を使用したロードバランシングに記載されているアドレスプールカスタムリソース定義 (CRD) および API は、4.14 でも引き続き使用できます。ただし、AddressPool
CRD を使用する場合、レイヤ 2 プロトコルまたは BGP プロトコルを使用した IPAddressPool
からの IP アドレスのアドバタイズに関連する拡張機能はサポートされません。
次の表では、IPAddressPool
カスタムリソースのフィールドについて説明します。
フィールド | 型 | 説明 |
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アドレスプールの名前を指定します。サービスを追加する場合は、 |
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| アドレスプールの namespace を指定します。MetalLB Operator が使用するものと同じ namespace を指定します。 |
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オプション: |
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| MetalLB Operator がサービスに割り当てる IP アドレスのリストを指定します。1 つのプールで複数の範囲を指定できます。それらはすべて同じ設定を共有します。CIDR 表記で各範囲を指定するか、開始および終了の IP アドレスをハイフンで区切って指定します。 |
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オプション: MetalLB がこのプールから IP アドレスを自動的に割り当てるかどうかを指定します。 |
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オプション: これを有効にすると、.0 および .255 で終わる IP アドレスがプールから割り当てられなくなります。デフォルト値は |
spec.serviceAllocation
仕様を設定することにより、IPAddressPool
からサービスおよび namespace に IP アドレスを割り当てることができます。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
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| オプション: 複数の IP アドレスプールがサービスまたは namespace に一致する場合の IP アドレスプール間の優先度を定義します。数字が小さいほど優先度が高いことを示します。 |
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| オプション: IP アドレスプール内の IP アドレスに割り当てることができる namespace のリストを指定します。 |
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| オプション: リスト形式のラベルセレクターを使用して、IP アドレスプールから IP アドレスに割り当てることができる namespace ラベルを指定します。 |
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| オプション: リスト形式のラベルセレクターを使用して、アドレスプールから IP アドレスに割り当てることができるサービスラベルを指定します。 |
32.4.2. アドレスプールの設定
クラスター管理者は、クラスターにアドレスプールを追加して、MetalLB がロードバランサーサービスに割り当てることのできる IP アドレスを制御できます。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてログインしている。
手順
以下の例のような内容で、
ipaddresspool.yaml
などのファイルを作成します。apiVersion: metallb.io/v1beta1 kind: IPAddressPool metadata: namespace: metallb-system name: doc-example labels: 1 zone: east spec: addresses: - 203.0.113.1-203.0.113.10 - 203.0.113.65-203.0.113.75
- 1
IPAddressPool
に割り当てられたこのラベルは、BGPAdvertisement
CRD のipAddressPoolSelectors
によって参照され、IPAddressPool
をアドバタイズメントに関連付けることができます。
IP アドレスプールの設定を適用します。
$ oc apply -f ipaddresspool.yaml
検証
アドレスプールを表示します。
$ oc describe -n metallb-system IPAddressPool doc-example
出力例
Name: doc-example Namespace: metallb-system Labels: zone=east Annotations: <none> API Version: metallb.io/v1beta1 Kind: IPAddressPool Metadata: ... Spec: Addresses: 203.0.113.1-203.0.113.10 203.0.113.65-203.0.113.75 Auto Assign: true Events: <none>
doc-example
などのアドレスプール名と IP アドレス範囲が出力に表示されることを確認します。
32.4.3. VLAN の MetalLB アドレスプールの設定
クラスター管理者は、クラスターにアドレスプールを追加することで、MetalLB がロードバランサーサービスに割り当てることのできる、作成された VLAN の IP アドレスを制御できます。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 - 別の VLAN を設定する。
-
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてログインしている。
手順
次の例のようなファイル (
ipaddresspool-vlan.yaml
など) を作成します。apiVersion: metallb.io/v1beta1 kind: IPAddressPool metadata: namespace: metallb-system name: doc-example-vlan labels: zone: east 1 spec: addresses: - 192.168.100.1-192.168.100.254 2
IP アドレスプールの設定を適用します。
$ oc apply -f ipaddresspool-vlan.yaml
この設定を VLAN に適用するために、
spec
のgatewayConfig.ipForwarding
をGlobal
に設定する必要があります。次のコマンドを実行して、ネットワーク設定カスタムリソース (CR) を編集します。
$ oc edit network.config.openshift/cluster
spec.defaultNetwork.ovnKubernetesConfig
セクションを更新して、gatewayConfig.ipForwarding
をGlobal
に設定します。次のようになります。例
... spec: clusterNetwork: - cidr: 10.128.0.0/14 hostPrefix: 23 defaultNetwork: type: OVNKubernetes ovnKubernetesConfig: gatewayConfig: ipForwarding: Global ...
32.4.4. アドレスプールの設定例
32.4.4.1. 例: IPv4 および CIDR 範囲
CIDR 表記で IP アドレスの範囲を指定できます。CIDR 表記と、ハイフンを使用する表記を組み合わせて下層と上限を分けることができます。
apiVersion: metallb.io/v1beta1 kind: IPAddressPool metadata: name: doc-example-cidr namespace: metallb-system spec: addresses: - 192.168.100.0/24 - 192.168.200.0/24 - 192.168.255.1-192.168.255.5
32.4.4.2. 例: IP アドレスの予約
MetalLB がプールから IP アドレスを自動的に割り当てないように autoAssign
フィールドを false
に設定できます。サービスを追加する場合は、プールから特定の IP アドレスを要求するか、そのプールから任意の IP アドレスを要求するためにアノテーションでプール名を指定できます。
apiVersion: metallb.io/v1beta1 kind: IPAddressPool metadata: name: doc-example-reserved namespace: metallb-system spec: addresses: - 10.0.100.0/28 autoAssign: false
32.4.4.3. 例: IPv4 および IPv6 アドレス
IPv4 および IPv6 を使用するアドレスプールを追加できます。複数の IPv4 の例と同様に、addresses
一覧で複数の範囲を指定できます。
サービスに、単一の IPv4 アドレス、単一の IPv6 アドレス、またはその両方を割り当てるかどうかは、サービスの追加方法によって決まります。spec.ipFamilies
フィールドと spec.ipFamilyPolicy
フィールドでは、IP アドレスをサービスに割り当てる方法を制御します。
apiVersion: metallb.io/v1beta1 kind: IPAddressPool metadata: name: doc-example-combined namespace: metallb-system spec: addresses: - 10.0.100.0/28 - 2002:2:2::1-2002:2:2::100
32.4.4.4. 例: IP アドレスプールをサービスまたは namespace に割り当てる
IPAddressPool
から指定したサービスと namespace に IP アドレスを割り当てることができます。
サービスまたは namespace を複数の IP アドレスプールに割り当てる場合、MetalLB は優先度の高い IP アドレスプールから使用可能な IP アドレスを使用します。割り当てられた優先度の高い IP アドレスプールから使用可能な IP アドレスがない場合、MetalLB は、優先度の低い、または優先度のない IP アドレスプールから使用可能な IP アドレスを使用します。
namespaceSelectors
と serviceSelectors
の仕様には、matchLabels
ラベルセレクター、matchExpressions
ラベルセレクター、またはその両方を使用できます。この例は、仕様ごとに 1 つのラベルセレクターを示しています。
apiVersion: metallb.io/v1beta1 kind: IPAddressPool metadata: name: doc-example-service-allocation namespace: metallb-system spec: addresses: - 192.168.20.0/24 serviceAllocation: priority: 50 1 namespaces: 2 - namespace-a - namespace-b namespaceSelectors: 3 - matchLabels: zone: east serviceSelectors: 4 - matchExpressions: - key: security operator: In values: - S1