2.3. Kernel Module Management (KMM) モジュールのプリフライト検証
KMM モジュールが適用されたクラスターでアップグレードを実行する前に、KMM を使用してインストールされたカーネルモジュールが、クラスターのアップグレード、および場合によってはカーネルのアップグレード後に、ノードにインストールできることを確認する必要があります。プリフライトは、クラスターにロードされたすべての Module
を並行して検証しようとします。プリフライトは、ある Module
の検証が完了するのを待たずに、別の Module
の検証を開始します。
2.3.1. 検証のキックオフ
プリフライト検証は、クラスター内に PreflightValidationOCP
リソースを作成することによってトリガーされます。この仕様には、次の 2 つのフィールドが含まれます。
releaseImage
- クラスターがアップグレードされる OpenShift Container Platform バージョンのリリースイメージの名前を提供する必須フィールド。
pushBuiltImage
-
true
の場合、ビルドおよび署名の検証中に作成されたイメージがリポジトリーにプッシュされます。このフィールドはデフォルトでfalse
です。
2.3.2. 検証のライフサイクル
プリフライト検証は、クラスターにロードされたすべてのモジュールの検証を試みます。検証が成功した後、プリフライトは Module
リソースでの検証の実行を停止します。モジュールの検証が失敗した場合は、モジュール定義を変更することができ、Preflight は次のループで再度モジュールの検証を試行します。
追加のカーネルにプリフライト検証を実行する場合は、そのカーネル用に別の PreflightValidationOCP
リソースを作成する必要があります。すべてのモジュールが検証されたら、PreflightValidationOCP
リソースを削除することを推奨します。
2.3.3. 検証のステータス
PreflightValidationOCP
リソースは、検証を試行している、または試行したクラスター内の各モジュールのステータスと進行状況を .status.modules
リストに報告します。そのリストの要素には次のフィールドが含まれます。
lastTransitionTime
-
Module
リソースのステータスが、別のステータスに移行した最後の時刻。これは、基礎となるステータスが変更されたときになります。不明な場合には、API フィールドが変更された時点を使用することも可能です。 name
-
Module
リソースの名前。 namespace
-
Module
リソースの namespace。 statusReason
- ステータスに関する動詞の説明。
verificationStage
実行されている検証段階を説明します。
-
image
: イメージの存在確認 -
build
: ビルドプロセスの検証 -
sign
: 署名プロセスの検証
-
verificationStatus
モジュール検証のステータス:
-
true
: 検証済みです -
false
: 検証に失敗しました -
error
: 検証プロセス中にエラーが発生しました -
unknown
: 検証が開始されていません
-
2.3.4. モジュールごとのプリフライト検証ステージ
プリフライトは、クラスター内に存在するすべての KMM モジュールに次の検証を実行します。
- イメージの検証ステージ
- ビルドの検証ステージ
- 署名の検証ステージ
2.3.4.1. イメージの検証ステージ
イメージの検証は常に、実行されるプリフライト検証の最初のステージです。イメージの検証が成功した場合、その特定のモジュールで他の検証は実行されません。
イメージの検証は、次の 2 つのステージで構成されます。
- イメージの存在とアクセシビリティー。コードは、モジュール内のアップグレードされたカーネル用に定義されたイメージにアクセスし、そのマニフェストを取得しようとします。
-
今後の
modprobe
の実行のために、Module
で定義されたカーネルモジュールが正しいパスに存在することを確認します。この検証が成功した場合は、カーネルモジュールが正しい Linux ヘッダーでコンパイルされた可能性が高いです。正しいパスは<dirname>/lib/modules/<upgraded_kernel>/
です。
2.3.4.2. ビルドの検証ステージ
ビルドの検証は、イメージの検証が失敗し、Module
にアップグレードされたカーネルに関連する build
セクションがある場合のみ、実行されます。ビルドの検証は、ビルドジョブを実行し、それが正常に終了したことを検証しようとします。
次に示すように、depmod
を実行する場合は、カーネルバージョンを指定する必要があります。
$ RUN depmod -b /opt ${KERNEL_VERSION}
PushBuiltImage
フラグが PreflightValidationOCP
カスタムリソース (CR) で定義されている場合は、結果のイメージをリポジトリーにプッシュしようとします。結果のイメージ名は、Module
CR の containerImage
フィールドの定義から取得されます。
アップグレードされたカーネルに sign
セクションが定義されている場合、結果のイメージは Module
CR の containerImage
フィールドではなく、一時的なイメージ名になります。これは、結果のイメージが Sign フローの製品である必要があるためです。
2.3.4.3. 署名の検証ステージ
署名検証は、イメージ検証が失敗した場合にのみ実行されます。Module
リソースにはアップグレードカーネルに関連する sign
セクションがあり、Module
にアップグレードされたカーネルに関連する build
セクションがあった場合は、ビルド検証が正常に終了します。署名検証では、署名ジョブを実行し、それが正常に完了したかどうかを検証します。
PushBuiltImage
フラグが PreflightValidationOCP
CR で定義されている場合、署名の検証は結果のイメージをレジストリーにプッシュしようとします。結果のイメージは、常に Module
の ContainerImage
フィールドで定義されたイメージです。入力イメージは、Build ステージの出力、または UnsignedImage
フィールドで定義されたイメージのいずれかです。
build
セクションが存在する場合、sign
セクションの入力イメージは、build
セクションの出力イメージになります。したがって、入力イメージを sign
セクションで使用できるようにするには、PreflightValidationOCP
CR で PushBuiltImage
フラグを定義する必要があります。
2.3.5. PreflightValidationOCP リソースの例
このセクションでは、YAML 形式の PreflightValidationOCP
リソースの例を示します。
この例では、現在存在するすべてのモジュールを、OpenShift Container Platform リリース 4.11.18 (以下のリリースイメージが指す) に含まれる今後のカーネルバージョンに対して検証します。
quay.io/openshift-release-dev/ocp-release@sha256:22e149142517dfccb47be828f012659b1ccf71d26620e6f62468c264a7ce7863
.spec.pushBuiltImage
が true
に設定されているため、KMM はビルド/署名の結果のイメージを定義済みのリポジトリーにプッシュします。
apiVersion: kmm.sigs.x-k8s.io/v1beta2 kind: PreflightValidationOCP metadata: name: preflight spec: releaseImage: quay.io/openshift-release-dev/ocp-release@sha256:22e149142517dfccb47be828f012659b1ccf71d26620e6f62468c264a7ce7863 pushBuiltImage: true