2.5. RHV でのマシンセットの作成
異なるマシンセットを作成して、Red Hat Virtualization (RHV) 上の OpenShift Container Platform クラスターで特定の目的で使用できます。たとえば、インフラストラクチャーマシンセットおよび関連マシンを作成して、サポートするワークロードを新しいマシンに移動できます。
このプロセスは、手動でプロビジョニングされたマシンを持つクラスターには適用されません。高度なマシン管理およびスケーリング機能は、マシン API が機能しているクラスターでのみ使用することができます。
2.5.1. マシン API の概要
マシン API は、アップストリームのクラスター API プロジェクトおよびカスタム OpenShift Container Platform リソースに基づく重要なリソースの組み合わせです。
OpenShift Container Platform 4.7 クラスターの場合、マシン API はクラスターインストールの終了後にすべてのノードホストのプロビジョニングの管理アクションを実行します。このシステムにより、OpenShift Container Platform 4.7 はパブリックまたはプライベートのクラウドインフラストラクチャーに加えて弾力性があり、動的なプロビジョニング方法を提供します。
以下の 2 つのリソースは重要なリソースになります。
- Machines
-
ノードのホストを記述する基本的なユニットです。マシンには、複数の異なるクラウドプラットフォーム用に提供されるコンピュートノードのタイプを記述する
providerSpec
仕様があります。たとえば、Amazon Web Services (AWS) 上のワーカーノードのマシンタイプは特定のマシンタイプおよび必要なメタデータを定義する場合があります。 - マシンセット
MachineSet
リソースはマシンのグループです。マシンセットとマシンの関係は、レプリカセットと Pod の関係と同様です。マシンを追加する必要がある場合や、マシンの数を縮小したりする必要がある場合、コンピューティングのニーズに応じてマシンセットの replicas フィールドを変更します。警告コントロールプレーンマシンは、マシンセットで管理することはできません。
以下のカスタムリソースは、クラスターに機能を追加します。
- Machine Autoscaler
-
MachineAutoscaler
リソースはマシンをクラウドで自動的にスケーリングします。ノードに対する最小および最大のスケーリングの境界を、指定されるマシンセットに設定でき、Machine Autoscaler はノードの該当範囲を維持します。MachineAutoscaler
オブジェクトはClusterAutoscaler
オブジェクトの設定後に有効になります。ClusterAutoscaler
およびMachineAutoscaler
リソースは、どちらもClusterAutoscalerOperator
オブジェクトによって利用可能にされます。 - Cluster Autoscaler
- このリソースはアップストリームの Cluster Autoscaler プロジェクトに基づいています。OpenShift Container Platform の実装では、これはマシンセット API を拡張することによってクラスター API に統合されます。コア、ノード、メモリー、および GPU などのリソースのクラスター全体でのスケーリング制限を設定できます。優先順位を設定することにより、重要度の低い Pod のために新規ノードがオンラインにならないようにクラスターで Pod の優先順位付けを実行できます。また、スケーリングポリシーを設定してノードをスケールダウンせずにスケールアップできるようにすることもできます。
- マシンのヘルスチェック
-
MachineHealthCheck
リソースはマシンの正常でない状態を検知し、マシンを削除し、サポートされているプラットフォームでは新規マシンを作成します。
OpenShift Container Platform バージョン 3.11 では、クラスターでマシンのプロビジョニングが管理されないためにマルチゾーンアーキテクチャーを容易に展開することができませんでした。しかし、OpenShift Container Platform バージョン 4.1 以降、このプロセスはより簡単になりました。それぞれのマシンセットのスコープが単一ゾーンに設定されるため、インストールプログラムはユーザーに代わって、アベイラビリティーゾーン全体にマシンセットを送信します。さらに、コンピューティングは動的に展開されるため、ゾーンに障害が発生した場合の、マシンのリバランスが必要な場合に使用するゾーンを常に確保できます。Autoscaler はクラスターの有効期間中にベストエフォートでバランシングを提供します。
2.5.2. RHV 上のマシンセットのカスタムリソースのサンプル YAML
このサンプル YAML は、RHV で実行され、node-role.kubernetes.io/<node_role>: ""
というラベルが付けられたノードを作成するマシンセットを定義します。
このサンプルでは、<infrastructure_id>
はクラスターのプロビジョニング時に設定したクラスター ID に基づくインフラストラクチャー ID であり、<role>
は追加するノードラベルです。
apiVersion: machine.openshift.io/v1beta1 kind: MachineSet metadata: labels: machine.openshift.io/cluster-api-cluster: <infrastructure_id> 1 machine.openshift.io/cluster-api-machine-role: <role> 2 machine.openshift.io/cluster-api-machine-type: <role> 3 name: <infrastructure_id>-<role> 4 namespace: openshift-machine-api spec: replicas: <number_of_replicas> 5 selector: 6 matchLabels: machine.openshift.io/cluster-api-cluster: <infrastructure_id> 7 machine.openshift.io/cluster-api-machineset: <infrastructure_id>-<role> 8 template: metadata: labels: machine.openshift.io/cluster-api-cluster: <infrastructure_id> 9 machine.openshift.io/cluster-api-machine-role: <role> 10 machine.openshift.io/cluster-api-machine-type: <role> 11 machine.openshift.io/cluster-api-machineset: <infrastructure_id>-<role> 12 spec: metadata: labels: node-role.kubernetes.io/<role>: "" 13 providerSpec: value: apiVersion: ovirtproviderconfig.machine.openshift.io/v1beta1 cluster_id: <ovirt_cluster_id> 14 template_name: <ovirt_template_name> 15 instance_type_id: <instance_type_id> 16 cpu: 17 sockets: <number_of_sockets> 18 cores: <number_of_cores> 19 threads: <number_of_threads> 20 memory_mb: <memory_size> 21 os_disk: 22 size_gb: <disk_size> 23 network_interfaces: 24 vnic_profile_id: <vnic_profile_id> 25 credentialsSecret: name: ovirt-credentials 26 kind: OvirtMachineProviderSpec type: <workload_type> 27 userDataSecret: name: worker-user-data
- 1 7 9
- クラスターのプロビジョニング時に設定したクラスター ID を基にするインフラストラクチャー ID を指定します。OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている場合は、以下のコマンドを実行してインフラストラクチャー ID を取得できます。$ oc get -o jsonpath='{.status.infrastructureName}{"\n"}' infrastructure cluster
- 2 3 10 11 13
- 追加するノードラベルを指定します。
- 4 8 12
- インフラストラクチャー ID およびノードラベルを指定します。これら 2 つの文字列は 35 文字を超えることができません。
- 5
- 作成するマシンの数を指定します。
- 6
- マシンのセレクター。
- 14
- この仮想マシンインスタンスが属する RHV クラスターの UUID を指定します。
- 15
- マシンの作成に使用する RHV 仮想マシンテンプレートを指定します。
- 16
- オプション: 仮想マシンインスタンスタイプを指定します。警告
instance_type_id
フィールドは非推奨となり、今後のリリースで削除されます。このパラメーターを含めると、CPU およびメモリーを含む仮想マシンのハードウェアパラメーターを指定する必要はありません。このパラメーターは、すべてのハードウェアパラメーターを上書きするためです。
- 17
- オプション: CPU フィールドには、ソケット、コア、スレッドを含む CPU の設定が含まれます。
- 18
- オプション: 仮想マシンのソケット数を指定します。
- 19
- オプション: ソケットあたりのコア数を指定します。
- 20
- オプション: コアあたりのスレッド数を指定します。
- 21
- オプション: 仮想マシンのメモリーサイズを MiB 単位で指定します。
- 22
- オプション: ノードのルートディスク。
- 23
- オプション: ブート可能なディスクのサイズを GiB 単位で指定します。
- 24
- オプション: 仮想マシンのネットワークインターフェイスの一覧。このパラメーターを含めると、OpenShift Container Platform はテンプレートからすべてのネットワークインターフェイスを破棄し、新規ネットワークインターフェイスを作成します。
- 25
- オプション: vNIC プロファイル ID を指定します。
- 26
- RHV 認証情報を保持するシークレットの名前を指定します。
- 27
- オプション: インスタンスが最適化されるワークロードタイプを指定します。この値は
RHV VM
パラメーターに影響します。サポートされる値:desktop
、server
(デフォルト)、high_performance
です。high_performance
により、仮想マシンのパフォーマンスが向上しますが、制限があります。たとえば、グラフィカルコンソールを使用して仮想マシンにはアクセスできません。詳細は、仮想マシン管理ガイドの ハイパフォーマンス仮想マシン、テンプレート、およびプールの設定 を参照してください。
RHV は仮想マシンの作成時にテンプレートを使用するため、任意のパラメーターの値を指定しない場合、RHV はテンプレートに指定されるパラメーターの値を使用します。
2.5.3. マシンセットの作成
インストールプログラムによって作成されるものに加え、独自のマシンセットを作成して、選択する特定のワークロードに対するマシンのコンピュートリソースを動的に管理することができます。
前提条件
- OpenShift Container Platform クラスターをデプロイすること。
-
OpenShift CLI (
oc
) をインストールしている。 -
cluster-admin
パーミッションを持つユーザーとして、oc
にログインする。
手順
説明されているようにマシンセット カスタムリソース (CR) サンプルを含む新規 YAML ファイルを作成し、そのファイルに
<file_name>.yaml
という名前を付けます。<clusterID>
および<role>
パラメーターの値を設定していることを確認します。特定のフィールドに設定する値が不明な場合は、クラスターから既存のマシンセットを確認できます。
$ oc get machinesets -n openshift-machine-api
出力例
NAME DESIRED CURRENT READY AVAILABLE AGE agl030519-vplxk-worker-us-east-1a 1 1 1 1 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1b 1 1 1 1 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1c 1 1 1 1 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1d 0 0 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1e 0 0 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1f 0 0 55m
特定のマシンセットの値を確認します。
$ oc get machineset <machineset_name> -n \ openshift-machine-api -o yaml
出力例
... template: metadata: labels: machine.openshift.io/cluster-api-cluster: agl030519-vplxk 1 machine.openshift.io/cluster-api-machine-role: worker 2 machine.openshift.io/cluster-api-machine-type: worker machine.openshift.io/cluster-api-machineset: agl030519-vplxk-worker-us-east-1a
新規
MachineSet
CR を作成します。$ oc create -f <file_name>.yaml
マシンセットの一覧を表示します。
$ oc get machineset -n openshift-machine-api
出力例
NAME DESIRED CURRENT READY AVAILABLE AGE agl030519-vplxk-infra-us-east-1a 1 1 1 1 11m agl030519-vplxk-worker-us-east-1a 1 1 1 1 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1b 1 1 1 1 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1c 1 1 1 1 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1d 0 0 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1e 0 0 55m agl030519-vplxk-worker-us-east-1f 0 0 55m
新規のマシンセットが利用可能な場合、
DESIRED
およびCURRENT
の値は一致します。マシンセットが利用可能でない場合、数分待機してからコマンドを再度実行します。