第4章 アップグレードチャネルとリリースを理解
OpenShift Container Platform 4.1 で、Red Hat はクラスターの更新の適切なリリースバージョンを推奨するためにチャネルという概念を導入しました。これらの更新チャネルでは、更新のペースを制御することで、更新戦略を選択できます。アップグレードチャネルは OpenShift Container Platform のマイナーバージョンに関連付けられます。たとえば、OpenShift Container Platform 4.7 アップグレードチャネルでは、4.7 への更新と 4.7 以内の更新が推奨されます。また、4.6 内および 4.6 から 4.7 への更新を推奨し、4.6 上のクラスターが最終的に 4.7 に更新できるようにします。4.8 以降のリリースへの更新は推奨していません。このストラテジーにより、管理者は OpenShift Container Platform の次のマイナーバージョンへの更新に関して明確な決定を行うことができます。
アップグレードチャネルはリリースの選択のみを制御し、インストールするクラスターのバージョンには影響を与えません。 OpenShift Container Platform の特定のバージョンの openshift-install
バイナリーファイルは常に該当バージョンをインストールします。
OpenShift Container Platform 4.7 は以下のアップグレードチャネルを提供します。
-
candidate-4.7
-
fast-4.7
-
stable-4.7
-
eus-4.y
(4.6 などの偶数番号の 4.y クラスターリリースを実行している場合のみ)
Red Hat は、Openshift Update Service によって提案されたバージョンにのみアップグレードすることが推奨されます。マイナーバージョン更新の場合、バージョンは連続している必要があります。Red Hat は、非連続バージョンへの更新をテストせず、以前のバージョンとの互換性を保証できません。
4.1. チャネルおよびリリースパスのアップグレード
クラスター管理者は、Web コンソールからアップグレードチャネルを設定できます。
4.1.1. candidate-4.7 チャネル
candidate-4.7
チャネルには、z-stream (4.7.z) リリースの候補となるビルドが含まれます。リリース候補には、製品のすべての機能が含まれますが、それらがサポートされる訳ではありません。リリース候補を使用して機能の受け入れテストを実行し、OpenShift Container Platform の次のバージョンへの対応を支援します。リリース候補は、名前に -rc
など、プレリリースバージョン を含まない、候補チャネルで利用可能なビルドを指します。候補チャネルでバージョンが利用可能になると、さらに品質のチェックが行われます。品質基準を満たす場合は、これは fast-4.7
または stable-4.7
チャネルにプロモートされます。このストラテジーにより、特定のリリースが candidate-4.7
チャネルと fast-4.7
または stable-4.7
チャネルの両方で利用可能な場合、そのリリースは Red Hat でサポートされるバージョンということになります。candidate-4.7
チャネルには、いずれのチャネルでも推奨されていないリリースバージョンを含めることができます。
candidate-4.7
チャネルを使用して、OpenShift Container Platform の直前のマイナーバージョンから更新できます。
4.1.2. fast-4.7 チャネル
fast-4.7
チャネルは、Red Hat が一般公開リリースとして指定のバージョンを宣言するとすぐに 4.7 の新規のバージョンおよびそれより前のマイナーバージョンで更新されます。そのため、これらのリリースは完全にサポートされ、実稼働用の品質があり、これらのリリースのプロモート元の candidate-4.7
チャネルのリリース候補として利用可能であった間のパフォーマンスにも問題はありませんでした。リリースは fast-4.7
チャネルに表示されてからしばらくすると、stable-4.7
チャネルに追加されます。リリースは fast-4.7
チャネルに表示される前に、stable-4.7
チャネルに表示されることはありません。
fast-4.7
チャネルを使用して、OpenShift Container Platform の以前のマイナーバージョンからの更新を実行できます。
4.1.3. stable-4.7 チャネル
fast-4.7
チャネルにはエラータの公開後すぐにリリースが組み込まれ、リリースの stable-4.7
チャネルへの追加は遅延します。この期間中、接続環境のカスタマープログラム (Connected Customer Program) に関わる Red Hat SRE チーム、Red Hat サポートサービス、および実稼働前および実稼働環境からリリースの安定性についてのデータが収集されます。stable-4.7
チャネルを使用して、OpenShift Container Platform の以前のマイナーバージョンからの更新を実行できます。
4.1.4. EUS-4.y チャネル
stable チャネルのほかに、番号が偶数の OpenShift Container Platform マイナーバージョンはすべて Extended Update Support (延長更新サポート) (EUS) を提供します。これらの EUS バージョンでは、標準およびプレミアムサブスクリプションをお持ちのお客様のサポートフェーズを 18 カ月に拡張します。
OpenShift Container Platform 4.y が EUS フェーズに移行するまで stable-4.y
と eus-4.y
チャネル間に相違はありませんが、 EUS チャネルが利用可能になり次第、eus-4.y
に切り換えることができます。
次の EUS チャンネルに更新する場合は、次の EUS バージョンに到達するまで、次の EUS チャンネルに切り替えて更新することができます。
この更新プロセスは、eus-4.6
チャネルには適用されません。
標準サブスクライバーと非 EUS サブスクライバーの両方が、すべての EUS リポジトリーと必要な RPM (rhel-*-eus-rpms
) にアクセスして、ドライバーのデバッグやビルドなどの重要な目的をサポートできます。
4.1.5. アップグレードバージョンパス
OpenShift Container Platform では、インストールされた OpenShift Container Platform のバージョンと、次のリリースにアクセスするために選択したチャネル内のパスの確認を可能にするアップグレード推奨サービスが提供されます。
fast-4.7
チャネルでは以下を確認できます。
- 4.7.0
- 4.7.1
- 4.7.3
- 4.7.4
このサービスは、テスト済みの重大な問題のない更新のみを推奨します。これは、既知の脆弱性を含む OpenShift Container Platform のバージョンへの更新を提案しません。たとえば、クラスターが 4.7.1 にあり、OpenShift Container Platform が 4.7.4 を提案している場合、4.7.1 から 4.7.4 に更新しても問題がありません。パッチの連続する番号のみに依存しないようにしてください。たとえば、この例では 4.7.2 はチャネルで利用可能な状態ではなく、これまで利用可能になったことがありません。
更新の安定性は、チャネルによって異なります。candidate-4.7
チャネルに更新についての推奨があるからといって、その更新が必ずしもサポートされる訳ではありません。つまり、更新について深刻な問題がまだ検出されていないものの、この更新の安定性についての提案を導くようなトラフィックの安定性はとくに確認されていない可能性があります。任意の時点で fast-4.7
または stable-4.7
チャネルの更新の推奨がある場合は、更新がサポートされていることを示します。リリースがチャネルから削除されることは決してありませんが、深刻な問題を示す更新の推奨はすべてのチャネルから削除されます。更新の推奨が削除された後に開始された更新は依然としてサポートされます。
Red Hat は最終的には、fast-4.7
または stable-4.7
チャネルのサポートされるリリースから 4.7.z の最新リリースへのサポートされる更新パスを提供します。ただし、問題のあるリリースからの安全なパスが構築され、検証される間に遅延が生じる可能性があります。
4.1.6. 高速かつ安定したチャネルの使用およびストラテジー
fast-4.7
および stable-4.7
チャネルでは、一般公開リリースが利用可能になり次第これを受信するか、または Red Hat がそれらの更新のロールアウトを制御するようにするかを選択することができます。問題がロールアウト時またはロールアウト後に検出される場合、該当バージョンへの更新は fast-4.7
および stable-4.7
チャネルの両方でブロックされ、新たに推奨される更新先の新規バージョンが導入される可能性があります。
fast-4.7
チャネルで実稼働前のシステムを設定し、stable-4.7
チャネルで実稼働システムを設定してから Red Hat の接続環境のカスタマープログラム (Connected Customer Program) に参加することで、お客様のプロセスを改善することができます。Red Hat はこのプログラムを使用して、ご使用の特定のハードウェアおよびソフトウェア設定に対する更新の影響の有無を確認します。今後のリリースでは、更新が fast-4.7
から stable-4.7
チャネルに移行するペースが改善されるか、変更される可能性があります。
4.1.7. ネットワークが制限された環境のクラスター
OpenShift Container Platform クラスターのコンテナーイメージを独自に管理する場合には、製品リリースに関連する Red Hat エラータを確認し、更新への影響に関するコメントに留意する必要があります。更新時に、インターフェイスにこれらのバージョン間の切り替えについての警告が表示される場合があります。そのため、これらの警告を無視するかどうかを決める前に適切なバージョンを選択していることを確認する必要があります。
4.1.8. CLI プロファイル間の切り替え
チャネルは、Web コンソールまたは patch
コマンドを使用して切り替えることができます。
$ oc patch clusterversion version --type json -p '[{"op": "add", "path": "/spec/channel", "value": "<channel>”}]'
Web コンソールは、現在のリリースを含まないチャネルに切り替えると、アラートを表示します。Web コンソールは、現在のリリースのないチャネルにある更新を推奨していません。ただし、任意の時点で元のチャネルに戻ることができます。
チャネルの変更は、クラスターのサポート可能性に影響を与える可能性があります。以下の条件が適用されます。
-
stable-4.7
チャネルからfast-4.7
チャネルに切り換える場合も、クラスターは引き続きサポートされます。 -
candidate-4.7
チャネルに切り換えることはできますが、このチャネルの一部のリリースはサポートされない可能性があります。 -
現在のリリースが一般利用公開リリースの場合、
candidate-4.7
チャネルからfast-4.7
チャネルに切り換えることができます。 -
fast-4.7
チャネルからstable-4.7
チャネルに常に切り換えることができます。現在のリリースが最近プロモートされた場合は、リリースがstable-4.7
にプロモートされるまでに最長 1 日分の遅延が生じる可能性があります。