第4章 接続クラスターを使用したリモートヘルスモニターリング
4.1. リモートヘルスモニターリングについて
OpenShift Container Platform は、クラスターについての Telemetry および設定データを収集し、Telemeter Client および Insights Operator を使用してこれを Red Hat にレポートします。Red Hat に提供されるデータは、本書で説明されている利点を提供します。
Telemetry および Insights Operator 経由でデータを Red Hat にレポートするクラスターは 接続クラスター (connected cluster) と見なされます。
Telemetry は、Red Hat が OpenShift Container Platform Telemeter Client で Red Hat に送信される情報を記述するために使用する用語です。軽量の属性は、サブスクリプション管理の自動化、クラスターの健全性の監視、サポートの支援、お客様のエクスペリエンスの向上を図るために接続されたクラスターから Red Hat に送信されます。
Insights Operator は OpenShift Container Platform 設定データを収集し、これを Red Hat に送信します。データは、クラスターがさらされる可能性のある問題に関する洞察を生み出すために使用されます。これらの洞察は、console.redhat.com/openshift のクラスター管理者に通信されます。
これらの 2 つのプロセスについての詳細は、本書を参照してください。
Telemetry および Insights Operator の利点
Telemetry および Insights Operator はエンドユーザーに以下の利点を提供します。
- 問題の特定および解決の強化。エンドユーザーには正常と思われるイベントも、Red Hat が複数のお客様の幅広い視点から観察します。この視点により、一部の問題はより迅速に特定され、エンドユーザーがサポートケースを作成したり、Jira issue を作成しなくても解決することが可能です。
-
高度なリリース管理。OpenShift Container Platform は
candidate
、fast
、およびstable
リリースチャネルを提供し、これにより更新ストラテジーを選択することができます。リリースのfast
からstable
に移行できるかどうかは、更新の成功率やアップグレード時に確認されるイベントに依存します。接続されたクラスターが提供する情報により、Red Hat はリリースの品質をstable
チャネルに引き上げ、fast
チャネルで見つかった問題により迅速に対応することができます。 - ターゲットが絞られた新機能の優先付け。収集されるデータは、最も使用される OpenShift Container Platform の領域に関する洞察を提供します。この情報により、Red Hat はお客様に最も大きな影響を与える新機能の開発に重点的に取り組むことができます。
- 効率されたサポートエクスペリエンス。Red Hat カスタマーポータル でサポートチケットを作成する際に、接続されたクラスターのクラスター ID を指定できます。これにより、Red Hat は接続された情報を使用してクラスター固有の効率化されたサポートエクスペリエンスを提供することができます。本書には、強化されたサポートエクスペリエンスについての詳細情報を提供しています。
- 予測分析。console.redhat.com/openshift に表示されるクラスターについての洞察は、接続されたクラスターから収集される情報によって有効にされます。Red Hat は、OpenShift Container Platform クラスターがさらされる問題を特定するのに役立つディープラーニング (深層学習)、機械学習、および人工知能の自動化の適用に取り組んでいます。
4.1.1. Telemetry について
Telemetry は厳選されたクラスターモニターリングメトリクスのサブセットを Red Hat に送信します。Telemeter Client はメトリクス値を 4 分 30 秒ごとにフェッチし、データを Red Hat にアップロードします。これらのメトリクスについては、本書で説明しています。
このデータのストリームは、Red Hat によってリアルタイムでクラスターをモニターし、お客様に影響を与える問題に随時対応するために使用されます。またこれにより、Red Hat がサービスへの影響を最小限に抑えつつつアップグレードエクスペリエンスの継続的な改善に向けた OpenShift Container Platform のアップグレードの展開を可能にします。
このデバッグ情報は、サポートケースでレポートされるデータへのアクセスと同じ制限が適用された状態で Red Hat サポートおよびエンジニアリングチームが利用できます。接続クラスターのすべての情報は、OpenShift Container Platform をより使用しやすく、より直感的に使用できるようにするために Red Hat によって使用されます。
関連情報
- クラスターの更新またはアップグレードの詳細は、OpenShift Container Platform の更新についてのドキュメント を参照してください。
4.1.1.1. Telemetry で収集される情報
以下の情報は、Telemetry によって収集されます。
- インストール時に生成される一意でランダムな識別子
- OpenShift Container Platform クラスターのバージョン情報、および更新バージョンの可用性を特定するために使用されるインストールの更新の詳細を含むバージョン情報
- クラスターごとに利用可能な更新の数、更新に使用されるチャネルおよびイメージリポジトリー、更新の進捗情報、および更新で発生するエラーの数などの更新情報
- OpenShift Container Platform がデプロイされているプラットフォームの名前およびデータセンターの場所
- CPU コアの数およびそれぞれに使用される RAM の容量を含む、クラスター、マシンタイプ、およびマシンについてのサイジング情報
- etcd メンバーの数および etcd クラスターに保存されるオブジェクトの数
- クラスターにインストールされている OpenShift Container Platform フレームワークコンポーネントおよびそれらの状態とステータス
- コンポーネント、機能および拡張機能に関する使用状況の情報
- テクノロジープレビューおよびサポート対象外の設定に関する使用状況の詳細
- 動作が低下したソフトウェアに関する情報
-
NotReady
とマークされているノードについての情報 - 動作が低下した Operator の関連オブジェクトとして一覧表示されるすべての namespace のイベント
- Red Hat サポートがお客様にとって有用なサポートを提供するのに役立つ設定の詳細。これには、クラウドインフラストラクチャーレベルのノード設定、ホスト名、IP アドレス、Kubernetes Pod 名、namespace、およびサービスが含まれます。
- 証明書の有効性についての情報
Telemetry は、ユーザー名やパスワードなどの識別情報を収集しません。Red Hat は、個人情報を収集することを意図していません。Red Hat は、個人情報が誤って受信したことを検知した場合に、該当情報を削除します。Telemetry データが個人データを設定する場合において、Red Hat のプライバシー方針については、Red Hat Privacy Statement を参照してください。
関連情報
- Telemetry が OpenShift Container Platform で Prometheus から収集する属性を一覧表示する方法についての詳細は、Telemetry によって収集されるデータの表示 を参照してください。
- Telemetry が Prometheus から収集する属性の一覧については、アップストリームの cluster-monitoring-operator ソースコード を参照してください。
- Telemetry はデフォルトでインストールされ、有効にされます。リモートヘルスレポートをオプトアウトする必要がある場合は、リモートヘルスレポートのオプトアウト を参照してください。
4.1.2. Insights Operator について
Insights Operator は設定およびコンポーネントの障害ステータスを定期的に収集し、デフォルトで 2 時間ごとにそのデータを Red Hat に報告します。この情報により、Red Hat は設定や Telemetry で報告されるデータよりも深層度の高いデータを評価できます。
OpenShift Container Platform のユーザーは、Red Hat Hybrid Cloud Console の Insights Advisor サービスで各クラスターのレポートを表示できます。問題が特定されると、Insights は詳細を提供します。利用可能な場合は、問題の解決方法に関する手順が提供されます。
Insights Operator は、ユーザー名、パスワード、または証明書などの識別情報を収集しません。Red Hat Insights のデータ収集とコントロールの詳細は、Red Hat Insights Data & Application Security を参照してください。
Red Hat は、接続されたすべてのクラスター情報を使用して、以下を実行します。
- Red Hat Hybrid Cloud Console の Insights Advisor サービスで、潜在的なクラスターの問題を特定し、解決策と予防措置を提供します。
- 集計される情報および重要な情報を製品およびサポートチームに提供し、OpenShift Container Platform の強化を図ります。
- OpenShift Container Platform の直感的な使用方法
関連情報
- Insights Operator はデフォルトでインストールされ、有効にされます。リモートヘルスレポートをオプトアウトする必要がある場合は、リモートヘルスレポートのオプトアウト を参照してください。
4.1.2.1. Insights Operator によって収集される情報
以下の情報は、Insights Operator によって収集されます。
- OpenShift Container Platform バージョンおよび環境に固有の問題を特定するためのクラスターおよびそのコンポーネントについての一般的な情報
- 誤った設定や設定するパラメーターに固有の問題の判別に使用するクラスターのイメージレジストリー設定などの設定ファイル
- クラスターコンポーネントで発生するエラー
- 実行中の更新の進捗情報、およびコンポーネントのアップグレードのステータス
- Amazon Web Services などの OpenShift Container Platform がデプロイされるプラットフォームや、クラスターが置かれるリージョンについての詳細情報
-
Operator が問題を報告する場合、
openshift-*
およびkube-*
プロジェクトのコア OpenShift Container Platform についての情報が収集されます。これには、状態、リソース、セキュリティーコンテキスト、ボリューム情報などが含まれます。
関連情報
- Insights Operator によって収集されるデータを確認する方法についての詳細は、 Insights Operator によって収集されるデータの表示 を参照してください。
- Insights Operator のソースコードは確認したり、提供したりできます。Insights Operator によって収集される項目の一覧については、Insights Operator のアップストリームプロジェクト を参照してください。
4.1.3. Telemetry および Insights Operator データフローについて
Telemeter Client は、Prometheus API から選択した時系列データを収集します。時系列データは、処理するために 4 分 30 秒ごとに api.openshift.com にアップロードされます。
Insights Operator は、選択したデータを Kubernetes API および Prometheus API からアーカイブに収集します。アーカイブは、処理するために 2 時間ごとに console.redhat.com にアップロードされます。さらに Insights Operator は、console.redhat.com から最新の Insights 分析をダウンロードします。これは、OpenShift Container Platform Web コンソールの Overview ページに含まれる Insights status ポップアップを設定するために使用されます。
Red Hat との通信はすべて、Transport Layer Security (TLS) および相互証明書認証を使用して、暗号化されたチャネル上で行われます。すべてのデータは移動中および停止中に暗号化されます。
顧客データを処理するシステムへのアクセスは、マルチファクター認証と厳格な認証制御によって制御されます。アクセスは関係者以外極秘で付与され、必要な操作に制限されます。
Telemetry および Insights Operator データフロー
関連情報
- OpenShift Container Platform モニターリングスタックの詳細は、Monitoring Overviewを参照してください。
- ファイアウォールを設定し、Telemetry および Insights のエンドポイントの有効にする方法についての詳細は、ファイアウォールの設定 を参照してください。
4.1.4. リモートヘルスモニターリングデータの使用方法に関する追加情報
リモートヘルスモニターリングを有効にするために収集される情報は、Telemetry および Insights Operator によって収集される情報を参照してください。
本書の前のセクションで説明したように、Red Hat は、サポートおよびアップグレードの提供、パフォーマンス/設定の最適化、サービスへの影響の最小化、脅威の特定および修復、トラブルシューティング、オファリングおよびユーザーエクスペリエンスの強化、問題への対応および課金の目的で (該当する場合)、Red Hat 製品のお客様の使用についてのデータを収集します。
収集における対策
Red Hat は、Telemetry および設定データを保護する目的で定められた技術および組織上の対策を講じます。
共有
Red Hat は、ユーザーエクスペリエンスの向上に向けて、Telemetry および Insights Operator で収集されるデータを内部で共有する場合があります。Red Hat は、以下の目的で Red Hat のビジネスパートナーと、お客様を特定しない集約された形式で Telemetry および設定データを共有する場合があります。つまり、パートナーが 市場およびお客様の Red Hat のオファリングの使用についてより良く理解できるように支援することを目的とするか、またはそれらのパートナーと共同でサポートしている製品の統合を効果的に行うことを目的としています。
サードパーティー
Red Hat は、Telemetry および設定データの収集、分析、および保管を支援するために、特定のサードパーティーと連携する場合があります。
ユーザーコントロール/Telemetry および設定データ収集の有効化および無効化
リモートヘルスレポートのオプトアウト の手順に従って、OpenShift Container Platform Telemetry および Insights Operator を無効にすることができ ます。