14.13. 仮想マシンのカスタムメトリクスの公開


OpenShift Container Platform には、コアプラットフォームコンポーネントのモニタリングを提供する事前に設定され、事前にインストールされた自己更新型のモニタリングスタックが含まれます。このモニタリングスタックは、Prometheus モニタリングシステムをベースにしています。Prometheus は Time Series を使用するデータベースであり、メトリクスのルール評価エンジンです。

OpenShift Container Platform モニタリングスタックの使用のほかに、CLI を使用してユーザー定義プロジェクトのモニタリングを有効にし、node-exporter サービスで仮想マシン用に公開されるカスタムメトリックをクエリーできます。

14.13.1. ノードエクスポーターサービスの設定

node-exporter エージェントは、メトリクスを収集するクラスター内のすべての仮想マシンにデプロイされます。node-exporter エージェントをサービスとして設定し、仮想マシンに関連付けられた内部メトリクスおよびプロセスを公開します。

前提条件

  • OpenShift Container Platform CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin 権限を持つユーザーとしてクラスターにログインしている。
  • cluster-monitoring-config ConfigMap オブジェクトを openshift-monitoring プロジェクトに作成する。
  • enableUserWorkloadtrue に設定して、user-workload-monitoring-config ConfigMap オブジェクトを openshift-user-workload-monitoring プロジェクトに設定する。

手順

  1. Service YAML ファイルを作成します。以下の例では、このファイルは node-exporter-service.yaml という名前です。

    kind: Service
    apiVersion: v1
    metadata:
      name: node-exporter-service 1
      namespace: dynamation 2
      labels:
        servicetype: metrics 3
    spec:
      ports:
        - name: exmet 4
          protocol: TCP
          port: 9100 5
          targetPort: 9100 6
      type: ClusterIP
      selector:
        monitor: metrics 7
    1
    仮想マシンからメトリクスを公開する node-exporter サービス。
    2
    サービスが作成される namespace。
    3
    サービスのラベル。ServiceMonitor はこのラベルを使用してこのサービスを照会します。
    4
    ClusterIP サービスのポート 9100 でメトリクスを公開するポートに指定された名前。
    5
    リクエストをリッスンするために node-exporter-service によって使用されるターゲットポート。
    6
    monitor ラベルが設定された仮想マシンの TCP ポート番号。
    7
    仮想マシンの Pod を照会するために使用されるラベル。この例では、ラベル monitor のある仮想マシンの Pod と、metrics の値がマッチします。
  2. node-exporter サービスを作成します。

    $ oc create -f node-exporter-service.yaml

14.13.2. ノードエクスポーターサービスが設定された仮想マシンの設定

node-exporter ファイルを仮想マシンにダウンロードします。次に、仮想マシンの起動時に node-exporter サービスを実行する systemd サービスを作成します。

前提条件

  • コンポーネントの Pod は openshift-user-workload-monitoring プロジェクトで実行されます。
  • このユーザー定義プロジェクトをモニターする必要のあるユーザーに monitoring-edit ロールを付与します。

手順

  1. 仮想マシンにログインします。
  2. node-exporter ファイルのバージョンに適用されるディレクトリーパスを使用して、node-exporter ファイルを仮想マシンにダウンロードします。

    $ wget https://github.com/prometheus/node_exporter/releases/download/v1.3.1/node_exporter-1.3.1.linux-amd64.tar.gz
  3. 実行ファイルを展開して、/usr/bin ディレクトリーに配置します。

    $ sudo tar xvf node_exporter-1.3.1.linux-amd64.tar.gz \
        --directory /usr/bin --strip 1 "*/node_exporter"
  4. ディレクトリーのパス/etc/systemd/systemnode_exporter.service ファイルを作成します。この systemd サービスファイルは、仮想マシンの再起動時に node-exporter サービスを実行します。

    [Unit]
    Description=Prometheus Metrics Exporter
    After=network.target
    StartLimitIntervalSec=0
    
    [Service]
    Type=simple
    Restart=always
    RestartSec=1
    User=root
    ExecStart=/usr/bin/node_exporter
    
    [Install]
    WantedBy=multi-user.target
  5. systemd サービスを有効にし、起動します。

    $ sudo systemctl enable node_exporter.service
    $ sudo systemctl start node_exporter.service

検証

  • node-exporter エージェントが仮想マシンからのメトリクスを報告していることを確認します。

    $ curl http://localhost:9100/metrics

    出力例

    go_gc_duration_seconds{quantile="0"} 1.5244e-05
    go_gc_duration_seconds{quantile="0.25"} 3.0449e-05
    go_gc_duration_seconds{quantile="0.5"} 3.7913e-05

14.13.3. 仮想マシンのカスタムモニタリングラベルの作成

単一サービスから複数の仮想マシンに対するクエリーを有効にするには、仮想マシンの YAML ファイルにカスタムラベルを追加します。

前提条件

  • OpenShift Container Platform CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin 権限を持つユーザーとしてログインしている。
  • 仮想マシンを停止および再起動するための Web コンソールへのアクセス権限がある。

手順

  1. 仮想マシン設定ファイルの template spec を編集します。この例では、ラベル monitor の値が metrics になります。

    spec:
      template:
        metadata:
          labels:
            monitor: metrics
  2. 仮想マシンを停止して再起動し、monitor ラベルに指定されたラベル名を持つ新しい Pod を作成します。

14.13.3.1. メトリクスを取得するための node-exporter サービスのクエリー

仮想マシンのメトリクスは、/metrics の正規名の下に HTTP サービスエンドポイント経由で公開されます。メトリクスのクエリー時に、Prometheus は仮想マシンによって公開されるメトリクスエンドポイントからメトリクスを直接収集し、これらのメトリクスを確認用に表示します。

前提条件

  • cluster-admin 権限を持つユーザーまたは monitoring-edit ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • node-exporter サービスを設定して、ユーザー定義プロジェクトのモニタリングを有効にしている。

手順

  1. サービスの namespace を指定して、HTTP サービスエンドポイントを取得します。

    $ oc get service -n <namespace> <node-exporter-service>
  2. node-exporter サービスの利用可能なすべてのメトリクスを一覧表示するには、metrics リソースをクエリーします。

    $ curl http://<172.30.226.162:9100>/metrics | grep -vE "^#|^$"

    出力例

    node_arp_entries{device="eth0"} 1
    node_boot_time_seconds 1.643153218e+09
    node_context_switches_total 4.4938158e+07
    node_cooling_device_cur_state{name="0",type="Processor"} 0
    node_cooling_device_max_state{name="0",type="Processor"} 0
    node_cpu_guest_seconds_total{cpu="0",mode="nice"} 0
    node_cpu_guest_seconds_total{cpu="0",mode="user"} 0
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="idle"} 1.10586485e+06
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="iowait"} 37.61
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="irq"} 233.91
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="nice"} 551.47
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="softirq"} 87.3
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="steal"} 86.12
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="system"} 464.15
    node_cpu_seconds_total{cpu="0",mode="user"} 1075.2
    node_disk_discard_time_seconds_total{device="vda"} 0
    node_disk_discard_time_seconds_total{device="vdb"} 0
    node_disk_discarded_sectors_total{device="vda"} 0
    node_disk_discarded_sectors_total{device="vdb"} 0
    node_disk_discards_completed_total{device="vda"} 0
    node_disk_discards_completed_total{device="vdb"} 0
    node_disk_discards_merged_total{device="vda"} 0
    node_disk_discards_merged_total{device="vdb"} 0
    node_disk_info{device="vda",major="252",minor="0"} 1
    node_disk_info{device="vdb",major="252",minor="16"} 1
    node_disk_io_now{device="vda"} 0
    node_disk_io_now{device="vdb"} 0
    node_disk_io_time_seconds_total{device="vda"} 174
    node_disk_io_time_seconds_total{device="vdb"} 0.054
    node_disk_io_time_weighted_seconds_total{device="vda"} 259.79200000000003
    node_disk_io_time_weighted_seconds_total{device="vdb"} 0.039
    node_disk_read_bytes_total{device="vda"} 3.71867136e+08
    node_disk_read_bytes_total{device="vdb"} 366592
    node_disk_read_time_seconds_total{device="vda"} 19.128
    node_disk_read_time_seconds_total{device="vdb"} 0.039
    node_disk_reads_completed_total{device="vda"} 5619
    node_disk_reads_completed_total{device="vdb"} 96
    node_disk_reads_merged_total{device="vda"} 5
    node_disk_reads_merged_total{device="vdb"} 0
    node_disk_write_time_seconds_total{device="vda"} 240.66400000000002
    node_disk_write_time_seconds_total{device="vdb"} 0
    node_disk_writes_completed_total{device="vda"} 71584
    node_disk_writes_completed_total{device="vdb"} 0
    node_disk_writes_merged_total{device="vda"} 19761
    node_disk_writes_merged_total{device="vdb"} 0
    node_disk_written_bytes_total{device="vda"} 2.007924224e+09
    node_disk_written_bytes_total{device="vdb"} 0

14.13.4. ノードエクスポーターサービスの ServiceMonitor リソースの作成

Prometheus クライアントライブラリーを使用し、/metrics エンドポイントからメトリクスを収集して、node-exporter サービスが公開するメトリクスにアクセスし、表示できます。ServiceMonitor カスタムリソース定義 (CRD) を使用して、ノードエクスポーターサービスをモニターします。

前提条件

  • cluster-admin 権限を持つユーザーまたは monitoring-edit ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • node-exporter サービスを設定して、ユーザー定義プロジェクトのモニタリングを有効にしている。

手順

  1. ServiceMonitor リソース設定の YAML ファイルを作成します。この例では、サービスモニターはラベル metrics が指定されたサービスとマッチし、30 秒ごとに exmet ポートをクエリーします。

    apiVersion: monitoring.coreos.com/v1
    kind: ServiceMonitor
    metadata:
      labels:
        k8s-app: node-exporter-metrics-monitor
      name: node-exporter-metrics-monitor 1
      namespace: dynamation 2
    spec:
      endpoints:
      - interval: 30s 3
        port: exmet 4
        scheme: http
      selector:
        matchLabels:
          servicetype: metrics
    1
    ServiceMonitor の名前。
    2
    ServiceMonitor が作成される namespace。
    3
    ポートをクエリーする間隔。
    4
    30 秒ごとにクエリーされるポートの名前
  2. node-exporter サービスの ServiceMonitor 設定を作成します。

    $ oc create -f node-exporter-metrics-monitor.yaml

14.13.4.1. クラスター外のノードエクスポーターサービスへのアクセス

クラスター外の node-exporter サービスにアクセスし、公開されるメトリクスを表示できます。

前提条件

  • cluster-admin 権限を持つユーザーまたは monitoring-edit ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • node-exporter サービスを設定して、ユーザー定義プロジェクトのモニタリングを有効にしている。

手順

  1. node-exporter サービスを公開します。

    $ oc expose service -n <namespace> <node_exporter_service_name>
  2. ルートの FQDN(完全修飾ドメイン名) を取得します。

    $ oc get route -o=custom-columns=NAME:.metadata.name,DNS:.spec.host

    出力例

    NAME                    DNS
    node-exporter-service   node-exporter-service-dynamation.apps.cluster.example.org

  3. curl コマンドを使用して、node-exporter サービスのメトリクスを表示します。

    $ curl -s http://node-exporter-service-dynamation.apps.cluster.example.org/metrics

    出力例

    go_gc_duration_seconds{quantile="0"} 1.5382e-05
    go_gc_duration_seconds{quantile="0.25"} 3.1163e-05
    go_gc_duration_seconds{quantile="0.5"} 3.8546e-05
    go_gc_duration_seconds{quantile="0.75"} 4.9139e-05
    go_gc_duration_seconds{quantile="1"} 0.000189423

14.13.5. 関連情報

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