9.3. イメージレジストリーリポジトリーのミラーリングについて
コンテナーレジストリーリポジトリーのミラーリングを設定すると、次のタスクを実行できます。
- ソースイメージのレジストリーのリポジトリーからイメージをプルする要求をリダイレクトするように OpenShift Container Platform クラスターを設定し、これをミラーリングされたイメージレジストリーのリポジトリーで解決できるようにします。
- 各ターゲットリポジトリーに対して複数のミラーリングされたリポジトリーを特定し、1 つのミラーがダウンした場合に別のミラーを使用できるようにします。
OpenShift Container Platform のリポジトリーミラーリングには、以下の属性が含まれます。
- イメージプルには、レジストリーのダウンタイムに対する回復性があります。
- 非接続環境のクラスターは、quay.io などの重要な場所からイメージをプルし、会社のファイアウォールの背後にあるレジストリーに要求されたイメージを提供することができます。
- イメージのプル要求時にレジストリーへの接続が特定の順序で試行され、通常は永続レジストリーが最後に試行されます。
-
入力したミラー情報は、OpenShift Container Platform クラスターの全ノードの
/etc/containers/registries.conf
ファイルに追加されます。 - ノードがソースリポジトリーからイメージの要求を行うと、要求されたコンテンツを見つけるまで、ミラーリングされた各リポジトリーに対する接続を順番に試行します。すべてのミラーで障害が発生した場合、クラスターはソースリポジトリーに対して試行します。成功すると、イメージはノードにプルされます。
リポジトリーミラーリングのセットアップは次の方法で実行できます。
OpenShift Container Platform のインストール時:
OpenShift Container Platform に必要なコンテナーイメージをプルし、それらのイメージを会社のファイアウォールの背後に配置することで、非接続環境にあるデータセンターに OpenShift Container Platform をインストールできます。
OpenShift Container Platform の新規インストール後:
OpenShift Container Platform のインストール中にミラーリングを設定しなかった場合は、以下のカスタムリソース (CR) オブジェクトのいずれかを使用して、インストール後に設定できます。
-
ImageDigestMirrorSet
(IDMS)。このオブジェクトを使用すると、ダイジェスト仕様を使用して、ミラーリングされたレジストリーからイメージを取得できます。IDMS CR を使用すると、イメージのプルが失敗した場合に、ソースレジストリーからのプルの継続的な試行を許可または停止するフォールバックポリシーを設定できます。 -
ImageTagMirrorSet
(ITMS)。このオブジェクトを使用すると、イメージタグを使用して、ミラーリングされたレジストリーからイメージをプルできます。ITMS CR を使用すると、イメージのプルが失敗した場合に、ソースレジストリーからのプルの継続的な試行を許可または停止するフォールバックポリシーを設定できます。 -
ImageContentSourcePolicy
(ICSP)。このオブジェクトを使用すると、ダイジェスト仕様を使用して、ミラーリングされたレジストリーからイメージを取得できます。ミラーが機能しない場合、ICSP CR は必ずソースレジストリーにフォールバックします。
重要ImageContentSourcePolicy
(ICSP) オブジェクトを使用してリポジトリーミラーリングを設定することは、非推奨の機能です。非推奨の機能は依然として OpenShift Container Platform に含まれており、引き続きサポートされますが、本製品の今後のリリースで削除されるため、新規デプロイメントでの使用は推奨されません。ImageContentSourcePolicy
オブジェクトの作成に使用した既存の YAML ファイルがある場合は、oc adm migrate icsp
コマンドを使用して、それらのファイルをImageDigestMirrorSet
YAML ファイルに変換できます。詳細は、次のセクションの「イメージレジストリーリポジトリーミラーリング用の ImageContentSourcePolicy (ICSP) ファイルの変換」を参照してください。-
これらのカスタムリソースオブジェクトはそれぞれ、次の情報を識別します。
- ミラーリングするコンテナーイメージリポジトリーのソース
- ソースリポジトリーから要求されたコンテンツを提供する各ミラーリポジトリーの個別のエントリー。
新しいクラスターの場合は、必要に応じて IDMS、ITMS、および ICSP CR オブジェクトを使用できます。ただし、IDMS と ITMS の使用を推奨します。
クラスターをアップグレードした場合、既存の ICSP オブジェクトは安定を維持し、IDMS オブジェクトと ICSP オブジェクトの両方がサポートされるようになります。ICSP オブジェクトを使用するワークロードは、引き続き期待どおりに機能します。一方、IDMS CR で導入されたフォールバックポリシーを利用する場合は、oc adm migrate icsp
コマンドを使用して、現在のワークロードを IDMS オブジェクトに移行できます。これについては、後述の イメージレジストリーリポジトリーミラーリング用の ImageContentSourcePolicy (ICSP) ファイルの変換 セクションで説明しています。IDMS オブジェクトへの移行に、クラスターの再起動は必要ありません。
クラスターで ImageDigestMirrorSet
、ImageTagMirrorSet
、または ImageContentSourcePolicy
オブジェクトを使用してリポジトリーミラーリングを設定する場合、ミラーリングされたレジストリーにはグローバルプルシークレットのみを使用できます。プロジェクトにプルシークレットを追加することはできません。
関連情報
- グローバルプルシークレットの詳細は、グローバルクラスタープルシークレットの更新 を参照してください。
9.3.1. イメージレジストリーのリポジトリーミラーリングの設定
インストール後のミラー設定カスタムリソース (CR) を作成して、ソースイメージレジストリーからミラーリングされたイメージレジストリーにイメージプル要求をリダイレクトできます。
前提条件
-
cluster-admin
ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
手順
ミラーリングされたリポジトリーを設定します。以下のいずれかを実行します。
- Repository Mirroring in Red Hat Quay で説明されているように、Red Hat Quay でミラーリングされたリポジトリーを設定します。Red Hat Quay を使用すると、あるリポジトリーから別のリポジトリーにイメージをコピーでき、これらのリポジトリーを一定期間繰り返し自動的に同期することもできます。
skopeo
などのツールを使用して、ソースリポジトリーからミラーリングされたリポジトリーにイメージを手動でコピーします。たとえば、Red Hat Enterprise Linux (RHEL 7 または RHEL 8) システムに skopeo RPM パッケージをインストールした後、以下の例に示すように
skopeo
コマンドを使用します。$ skopeo copy --all \ docker://registry.access.redhat.com/ubi9/ubi-minimal:latest@sha256:5cf... \ docker://example.io/example/ubi-minimal
この例では、
example.io
いう名前のコンテナーイメージレジストリーとexample
という名前のイメージリポジトリーがあり、そこにregistry.access.redhat.com
からubi9/ubi-minimal
イメージをコピーします。ミラーリングされたレジストリーを作成した後、ソースリポジトリーに対する要求をミラーリングされたリポジトリーにリダイレクトするように OpenShift Container Platform クラスターを構成できます。
次の例のいずれかを使用して、インストール後のミラー設定 CR を作成します。
必要に応じて
ImageDigestMirrorSet
またはImageTagMirrorSet
CR を作成し、ソースとミラーを独自のレジストリーとリポジトリーのペアとイメージに置き換えます。apiVersion: config.openshift.io/v1 1 kind: ImageDigestMirrorSet 2 metadata: name: ubi9repo spec: imageDigestMirrors: 3 - mirrors: - example.io/example/ubi-minimal 4 - example.com/example/ubi-minimal 5 source: registry.access.redhat.com/ubi9/ubi-minimal 6 mirrorSourcePolicy: AllowContactingSource 7 - mirrors: - mirror.example.com/redhat source: registry.example.com/redhat 8 mirrorSourcePolicy: AllowContactingSource - mirrors: - mirror.example.com source: registry.example.com 9 mirrorSourcePolicy: AllowContactingSource - mirrors: - mirror.example.net/image source: registry.example.com/example/myimage 10 mirrorSourcePolicy: AllowContactingSource - mirrors: - mirror.example.net source: registry.example.com/example 11 mirrorSourcePolicy: AllowContactingSource - mirrors: - mirror.example.net/registry-example-com source: registry.example.com 12 mirrorSourcePolicy: AllowContactingSource
- 1
- この CR で使用する API を示します。これは
config.openshift.io/v1
である必要があります。 - 2
- プルタイプに応じてオブジェクトの種類を示します。
-
ImageDigestMirrorSet
: ダイジェスト参照イメージをプルします。 -
ImageTagMirrorSet
: タグ参照イメージをプルします。
-
- 3
- 次のいずれかのイメージプルメソッドのタイプを示します。
-
imageDigestMirrors
:ImageDigestMirrorSet
CR に使用します。 -
imageTagMirrors
:ImageTagMirrorSet
CR に使用します。
-
- 4
- ミラーリングされたイメージのレジストリーとリポジトリーの名前を示します。
- 5
- オプション: 各ターゲットリポジトリーのセカンダリーミラーリポジトリーを示します。1 つのミラーがダウンすると、ターゲットリポジトリーはセカンダリーミラーを使用できます。
- 6
- レジストリーとリポジトリーソースを示します。これは、イメージプル仕様で参照されるリポジトリーです。
- 7
- オプション: イメージのプルが失敗した場合のフォールバックポリシーを示します。
-
AllowContactingSource
: ソースリポジトリーからのイメージのプルの継続的な試行を許可します。これはデフォルトになります。 -
NeverContactSource
: ソースリポジトリーからのイメージのプルの継続的な試行を防ぎます。
-
- 8
- オプション: レジストリー内の namespace を示します。これにより、その namespace で任意のイメージを使用できます。レジストリードメインをソースとして使用する場合、オブジェクトはレジストリーからすべてのリポジトリーに適用されます。
- 9
- オプション: レジストリーを示し、そのレジストリー内の任意のイメージを使用できるようにします。レジストリー名を指定すると、ソースレジストリーからミラーレジストリーまでのすべてのリポジトリーにオブジェクトが適用されます。
- 10
- イメージ
registry.example.com/example/myimage@sha256:…
をミラーmirror.example.net/image@sha256:..
からプルします。 - 11
- ミラー
mirror.example.net/image@sha256:…
からソースレジストリー namespace のイメージregistry.example.com/example/image@sha256:…
をプルします。 - 12
- ミラーレジストリー
example.net/registry-example-com/myimage@sha256:…
からイメージregistry.example.com/myimage@sha256
をプルします。
ImageContentSourcePolicy
カスタムリソースを作成し、ソースとミラーを独自のレジストリーとリポジトリーのペアとイメージに置き換えます。apiVersion: operator.openshift.io/v1alpha1 kind: ImageContentSourcePolicy metadata: name: mirror-ocp spec: repositoryDigestMirrors: - mirrors: - mirror.registry.com:443/ocp/release 1 source: quay.io/openshift-release-dev/ocp-release 2 - mirrors: - mirror.registry.com:443/ocp/release source: quay.io/openshift-release-dev/ocp-v4.0-art-dev
新規オブジェクトを作成します。
$ oc create -f registryrepomirror.yaml
オブジェクトの作成後、Machine Config Operator (MCO) は
ImageTagMirrorSet
オブジェクトのみのノードをドレインします。MCO は、ImageDigestMirrorSet
オブジェクトとImageContentSourcePolicy
オブジェクトのノードをドレインしません。ミラーリングされた設定が適用されていることを確認するには、ノードのいずれかで以下を実行します。
ノードの一覧を表示します。
$ oc get node
出力例
NAME STATUS ROLES AGE VERSION ip-10-0-137-44.ec2.internal Ready worker 7m v1.29.4 ip-10-0-138-148.ec2.internal Ready master 11m v1.29.4 ip-10-0-139-122.ec2.internal Ready master 11m v1.29.4 ip-10-0-147-35.ec2.internal Ready worker 7m v1.29.4 ip-10-0-153-12.ec2.internal Ready worker 7m v1.29.4 ip-10-0-154-10.ec2.internal Ready master 11m v1.29.4
デバッグプロセスを開始し、ノードにアクセスします。
$ oc debug node/ip-10-0-147-35.ec2.internal
出力例
Starting pod/ip-10-0-147-35ec2internal-debug ... To use host binaries, run `chroot /host`
ルートディレクトリーを
/host
に変更します。sh-4.2# chroot /host
/etc/containers/registries.conf
ファイルをチェックして、変更が行われたことを確認します。sh-4.2# cat /etc/containers/registries.conf
次の出力は、インストール後のミラー設定 CR が適用された
registries.conf
ファイルを表しています。最後の 2 つのエントリーは、それぞれdigest-only
およびtag-only
とマークされています。出力例
unqualified-search-registries = ["registry.access.redhat.com", "docker.io"] short-name-mode = "" [[registry]] prefix = "" location = "registry.access.redhat.com/ubi9/ubi-minimal" 1 [[registry.mirror]] location = "example.io/example/ubi-minimal" 2 pull-from-mirror = "digest-only" 3 [[registry.mirror]] location = "example.com/example/ubi-minimal" pull-from-mirror = "digest-only" [[registry]] prefix = "" location = "registry.example.com" [[registry.mirror]] location = "mirror.example.net/registry-example-com" pull-from-mirror = "digest-only" [[registry]] prefix = "" location = "registry.example.com/example" [[registry.mirror]] location = "mirror.example.net" pull-from-mirror = "digest-only" [[registry]] prefix = "" location = "registry.example.com/example/myimage" [[registry.mirror]] location = "mirror.example.net/image" pull-from-mirror = "digest-only" [[registry]] prefix = "" location = "registry.example.com" [[registry.mirror]] location = "mirror.example.com" pull-from-mirror = "digest-only" [[registry]] prefix = "" location = "registry.example.com/redhat" [[registry.mirror]] location = "mirror.example.com/redhat" pull-from-mirror = "digest-only" [[registry]] prefix = "" location = "registry.access.redhat.com/ubi9/ubi-minimal" blocked = true 4 [[registry.mirror]] location = "example.io/example/ubi-minimal-tag" pull-from-mirror = "tag-only" 5
ソースからノードにイメージをプルし、ミラーによって解決されるかどうかを確認します。
sh-4.2# podman pull --log-level=debug registry.access.redhat.com/ubi9/ubi-minimal@sha256:5cf...
リポジトリーのミラーリングのトラブルシューティング
リポジトリーのミラーリング手順が説明どおりに機能しない場合は、リポジトリーミラーリングの動作方法に関する以下の情報を使用して、問題のトラブルシューティングを行うことができます。
- 最初に機能するミラーは、プルされるイメージを指定するために使用されます。
- メインレジストリーは、他のミラーが機能していない場合にのみ使用されます。
-
システムコンテキストによって、
Insecure
フラグがフォールバックとして使用されます。 -
/etc/containers/registries.conf
ファイルの形式が最近変更されました。現在のバージョンはバージョン 2 で、TOML 形式です。
9.3.2. イメージレジストリーリポジトリーミラーリング用の ImageContentSourcePolicy (ICSP) ファイルの変換
ImageContentSourcePolicy
(ICSP) オブジェクトを使用してリポジトリーミラーリングを設定することは、非推奨の機能です。この機能は引き続き OpenShift Container Platform に含まれており、引き続きサポートされます。ただし、この製品の将来のリリースでは削除される予定であり、新しいデプロイメントには推奨されません。
ICSP オブジェクトは、リポジトリーミラーリングを設定するために ImageDigestMirrorSet
および ImageTagMirrorSet
オブジェクトに置き換えられています。ImageContentSourcePolicy
オブジェクトの作成に使用した既存の YAML ファイルがある場合は、oc adm migrate icsp
コマンドを使用して、それらのファイルを ImageDigestMirrorSet
YAML ファイルに変換できます。このコマンドは、API を現在のバージョンに更新し、kind
値を ImageDigestMirrorSet
に変更し、spec.repositoryDigestMirrors
を spec.imageDigestMirrors
に変更します。ファイルの残りの部分は変更されません。
移行によって registries.conf
ファイルは変更されないため、クラスターを再起動する必要はありません。
ImageDigestMirrorSet
または ImageTagMirrorSet
オブジェクトの詳細は、前のセクションの「イメージレジストリーリポジトリーミラーリングの設定」を参照してください。
前提条件
-
cluster-admin
ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。 -
クラスターに
ImageContentSourcePolicy
オブジェクトがあることを確認します。
手順
次のコマンドを使用して、1 つ以上の
ImageContentSourcePolicy
YAML ファイルをImageDigestMirrorSet
YAML ファイルに変換します。$ oc adm migrate icsp <file_name>.yaml <file_name>.yaml <file_name>.yaml --dest-dir <path_to_the_directory>
ここでは、以下のようになります。
<file_name>
-
ソース
ImageContentSourcePolicy
YAML の名前を指定します。複数のファイル名をリストできます。 --dest-dir
-
オプション: 出力
ImageDigestMirrorSet
YAML のディレクトリーを指定します。設定されていない場合、ファイルは現在のディレクトリーに書き込まれます。
たとえば、次のコマンドは
icsp.yaml
およびicsp-2.yaml
ファイルを変換し、新しい YAML ファイルをidms-files
ディレクトリーに保存します。$ oc adm migrate icsp icsp.yaml icsp-2.yaml --dest-dir idms-files
出力例
wrote ImageDigestMirrorSet to idms-files/imagedigestmirrorset_ubi8repo.5911620242173376087.yaml wrote ImageDigestMirrorSet to idms-files/imagedigestmirrorset_ubi9repo.6456931852378115011.yaml
次のコマンドを実行して CR オブジェクトを作成します。
$ oc create -f <path_to_the_directory>/<file-name>.yaml
ここでは、以下のようになります。
<path_to_the_directory>
-
--dest-dir
フラグを使用した場合は、ディレクトリーへのパスを指定します。 <file_name>
-
ImageDigestMirrorSet
YAML の名前を指定します。
- IDMS オブジェクトがロールアウトされた後、ICSP オブジェクトを削除します。