第8章 ネットワーク
8.1. ネットワークの概要
OpenShift Virtualization は、カスタムリソースおよびプラグインを使用して高度なネットワーク機能を提供します。仮想マシン (VM) は、OpenShift Container Platform のネットワークおよびエコシステムと統合されています。
シングルスタックの IPv6 クラスターで OpenShift Virtualization は実行できません。
次の図は、OpenShift Virtualization の一般的なネットワーク設定を示しています。他の設定も可能です。
図8.1 OpenShift Virtualization ネットワークの概要
Pod と仮想マシンは同じネットワークインフラストラクチャー上で実行するため、コンテナー化されたワークロードと仮想化されたワークロードを簡単に接続できます。
仮想マシンをデフォルトの Pod ネットワークおよび任意の数のセカンダリーネットワークに接続できます。
デフォルトの Pod ネットワークは、すべてのメンバー間の接続、サービス抽象化、IP 管理、マイクロセグメンテーション、およびその他の機能を提供します。
Multus は、互換性のある他の CNI プラグインを使用して、Pod または仮想マシンが追加のネットワークインターフェイスに接続できるようにする "メタ" CNI プラグインです。
デフォルトの Pod ネットワークはオーバーレイベースであり、基盤となるマシンネットワークを介してトンネリングされます。
マシンネットワークは、選択したネットワークインターフェイスコントローラー (NIC) のセットを介して定義できます。
セカンダリー仮想マシンネットワークは通常、VLAN カプセル化の有無にかかわらず、物理ネットワークに直接ブリッジされます。
セカンダリー仮想マシンネットワークは、図 1 に示すように専用の NIC セットで定義することも、マシンネットワークを使用することもできます。
8.1.1. OpenShift Virtualization ネットワークの用語集
以下の用語は、OpenShift Virtualization ドキュメント全体で使用されています。
- Container Network Interface (CNI)
- コンテナーのネットワーク接続に重点を置く Cloud Native Computing Foundation プロジェクト。OpenShift Virtualization は CNI プラグインを使用して基本的な Kubernetes ネットワーク機能を強化します。
- Multus
- 複数の CNI の存在を可能にし、Pod または仮想マシンが必要なインターフェイスを使用できるようにする "メタ" CNI プラグイン。
- カスタムリソース定義 (CRD)
- カスタムリソースの定義を可能にする Kubernetes API リソース、または CRD API リソースを使用して定義されるオブジェクト。
- ネットワーク接続定義 (NAD)
- Multus プロジェクトによって導入された CRD。Pod、仮想マシン、および仮想マシンインスタンスを 1 つ以上のネットワークに接続できるようにします。
- ノードネットワーク設定ポリシー (NNCP)
-
nmstate プロジェクトによって導入された CRD。ノード上で要求されるネットワーク設定を表します。
NodeNetworkConfigurationPolicy
マニフェストをクラスターに適用して、インターフェイスの追加および削除など、ノードネットワーク設定を更新します。
8.1.2. デフォルトの Pod ネットワークの使用
- 仮想マシンをデフォルトの Pod ネットワークに接続する
- 各仮想マシンは、デフォルトの内部 Pod ネットワークにデフォルトで接続されます。仮想マシン仕様を編集することで、ネットワークインターフェイスを追加または削除できます。
- 仮想マシンをサービスとして公開する
-
Service
オブジェクトを作成することで、クラスター内またはクラスター外に仮想マシンを公開できます。オンプレミスクラスターの場合、MetalLB Operator を使用して負荷分散サービスを設定できます。OpenShift Container Platform Web コンソールまたは CLI を使用して、MetalLB Operator をインストール できます。
8.1.3. 仮想マシンのセカンダリーネットワークインターフェイスの設定
Linux ブリッジ、SR-IOV、OVN-Kubernetes CNI プラグインを使用して、仮想マシンをセカンダリーネットワークに接続できます。仮想マシン仕様では、複数のセカンダリーネットワークとインターフェイスをリストできます。セカンダリーネットワークインターフェイスに接続する場合、仮想マシン仕様でプライマリー Pod ネットワークを指定する必要はありません。
- Linux ブリッジネットワークへの仮想マシンの割り当て
Kubernetes NMState Operator をインストール して、セカンダリーネットワークの Linux ブリッジ、VLAN、およびボンディングを設定します。
次の手順を実行すると、Linux ブリッジネットワークを作成し、そのネットワークに仮想マシンを接続できます。
-
NodeNetworkConfigurationPolicy
カスタムリソース定義 (CRD) を作成して、Linux ブリッジネットワークデバイスを設定 します。 -
NetworkAttachmentDefinition
CRD を作成して、Linux ブリッジネットワークを設定 します。 - 仮想マシン設定にネットワークの詳細を追加して、仮想マシンを Linux ブリッジネットワークに接続 します。
-
- 仮想マシンの SR-IOV ネットワークへの接続
高帯域幅または低レイテンシーを必要とするアプリケーション向けに、ベアメタルまたは Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) インフラストラクチャーにインストールされた OpenShift Container Platform クラスター上の追加ネットワークで、Single Root I/O Virtualization (SR-IOV) ネットワークデバイスを使用できます。
SR-IOV ネットワークデバイスとネットワーク接続を管理するには、クラスターに SR-IOV Network Operator をインストール する必要があります。
次の手順を実行すると、仮想マシンを SR-IOV ネットワークに接続できます。
-
SriovNetworkNodePolicy
CRD を作成して、SR-IOV ネットワークデバイスを設定 します。 -
SriovNetwork
オブジェクトを作成して、SR-IOV ネットワークを設定 します。 - 仮想マシン設定にネットワークの詳細を追加して、仮想マシンを SR-IOV ブリッジネットワークに接続 します。
-
- OVN-Kubernetes セカンダリーネットワークへの仮想マシンの接続
仮想マシンは Open Virtual Network (OVN)-Kubernetes セカンダリーネットワークに接続できます。OpenShift Virtualization は、OVN-Kubernetes のレイヤー 2 およびローカルネットトポロジーをサポートします。
- レイヤー 2 トポロジーは、クラスター全体の論理スイッチでワークロードを接続します。OVN-Kubernetes Container Network Interface (CNI) プラグインは、Geneve (Generic Network Virtualization Encapsulation) プロトコルを使用してノード間にオーバーレイネットワークを作成します。このオーバーレイネットワークを使用すると、追加の物理ネットワークインフラストラクチャーを設定することなく、さまざまなノード上の仮想マシンを接続できます。
- ローカルネットトポロジーは、セカンダリーネットワークを物理アンダーレイに接続します。これにより、east-west クラスタートラフィックとクラスター外で実行されているサービスへのアクセスの両方が可能になります。ただし、クラスターノード上の基盤となる Open vSwitch (OVS) システムの追加設定が必要です。
OVN-Kubernetes セカンダリーネットワークを設定し、そのネットワークに仮想マシンを接続するには、次の手順を実行します。
ネットワークアタッチメント定義 (NAD) を作成して、OVN-Kubernetes セカンダリーネットワークの設定 を行います。
注記ローカルネットトポロジーの場合は、NAD を作成する前に
NodeNetworkConfigurationPolicy
オブジェクトを作成して OVS ブリッジを設定する 必要があります。- ネットワークの詳細を仮想マシン仕様に追加して、仮想マシンを OVN-Kubernetes セカンダリーネットワークに接続 します。
8.1.3.1. Linux ブリッジ CNI と OVN-Kubernetes ローカルネットトポロジーの比較
次の表は、Linux ブリッジ CNI を使用する場合と OVN-Kubernetes プラグインのローカルネットトポロジーを使用する場合に利用できる機能の比較を示しています。
機能 | Linux ブリッジ CNI で利用可能 | OVN-Kubernetes ローカルネットで利用可能 |
---|---|---|
アンダーレイネイティブネットワークへのレイヤー 2 アクセス | セカンダリーネットワークインターフェイスコントローラー (NIC) のみ | はい |
アンダーレイ VLAN へのレイヤー 2 アクセス | はい | はい |
ネットワークポリシー | いいえ | はい |
管理された IP プール | いいえ | いいえ |
MAC スプーフィングフィルタリング | はい | はい |
- ホットプラグ対応のセカンダリーネットワークインターフェイス
- 仮想マシンを停止せずに、セカンダリーネットワークインターフェイスを追加または削除できます。OpenShift Virtualization は、VirtIO デバイスドライバーを使用する Linux ブリッジインターフェイスのホットプラグとホットアンプラグをサポートしています。
- SR-IOV での DPDK の使用
- Data Plane Development Kit (DPDK) は、高速パケット処理用のライブラリーとドライバーのセットを提供するものです。SR-IOV ネットワーク上で DPDK ワークロードを実行するようにクラスターと仮想マシンを設定できます。
- ライブマイグレーション用の専用ネットワークの設定
- ライブマイグレーション専用の Multus ネットワーク を設定できます。専用ネットワークは、ライブマイグレーション中のテナントワークロードに対するネットワークの飽和状態の影響を最小限に抑えます。
- クラスター FQDN を使用した仮想マシンへのアクセス
- 完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して、クラスターの外部からセカンダリーネットワークインターフェイスに接続されている仮想マシンにアクセスできます。
- IP アドレスの設定と表示
- 仮想マシンを作成するときに、セカンダリーネットワークインターフェイスの IP アドレスを設定できます。IP アドレスは、cloud-init でプロビジョニングされます。仮想マシンの IP アドレスは、OpenShift Container Platform Web コンソールまたはコマンドラインを使用して表示できます。ネットワーク情報は QEMU ゲストエージェントによって収集されます。
8.1.4. OpenShift Service Mesh との統合
- 仮想マシンのサービスメッシュへの接続
- OpenShift Virtualization は OpenShift Service Mesh と統合されています。Pod と仮想マシン間のトラフィックを監視、視覚化、制御できます。
8.1.5. MAC アドレスプールの管理
- ネットワークインターフェイスの MAC アドレスプールの管理
- KubeMacPool コンポーネントは、共有 MAC アドレスプールから仮想マシンネットワークインターフェイスの MAC アドレスを割り当てます。これにより、各ネットワークインターフェイスに一意の MAC アドレスが確実に割り当てられます。その仮想マシンから作成された仮想マシンインスタンスは、再起動後も割り当てられた MAC アドレスを保持します。
8.1.6. SSH アクセスの設定
- 仮想マシンへの SSH アクセスの設定
次の方法を使用して、仮想マシンへの SSH アクセスを設定できます。
SSH キーペアを作成し、公開キーを仮想マシンに追加し、秘密キーを使用して
virtctl ssh
コマンドを実行して仮想マシンに接続します。cloud-init データソースを使用して設定できるゲストオペレーティングシステムを使用して、実行時または最初の起動時に Red Hat Enterprise Linux (RHEL) 9 仮想マシンに公開 SSH キーを追加できます。
virtctl port-foward
コマンドを.ssh/config
ファイルに追加し、OpenSSH を使用して仮想マシンに接続します。サービスを作成し、そのサービスを仮想マシンに関連付け、サービスによって公開されている IP アドレスとポートに接続します。
セカンダリーネットワークを設定し、仮想マシンをセカンダリーネットワークインターフェイスに接続し、割り当てられた IP アドレスに接続します。