6.14. Node Tuning Operator の使用
Node Tuning Operator を理解し、これを使用します。
目的
Node Tuning Operator は、TuneD デーモンを調整することでノードレベルのチューニングを管理し、パフォーマンスプロファイルコントローラーを使用して低レイテンシーのパフォーマンスを実現するのに役立ちます。ほとんどの高パフォーマンスアプリケーションでは、一定レベルのカーネルのチューニングが必要です。Node Tuning Operator は、ノードレベルの sysctl の統一された管理インターフェイスをユーザーに提供し、ユーザーが指定するカスタムチューニングを追加できるよう柔軟性を提供します。
Operator は、コンテナー化された OpenShift Container Platform の TuneD デーモンを Kubernetes デーモンセットとして管理します。これにより、カスタムチューニング仕様が、デーモンが認識する形式でクラスターで実行されるすべてのコンテナー化された TuneD デーモンに渡されます。デーモンは、ノードごとに 1 つずつ、クラスターのすべてのノードで実行されます。
コンテナー化された TuneD デーモンによって適用されるノードレベルの設定は、プロファイルの変更をトリガーするイベントで、または終了シグナルの受信および処理によってコンテナー化された TuneD デーモンが正常に終了する際にロールバックされます。
Node Tuning Operator は、パフォーマンスプロファイルコントローラーを使用して自動チューニングを実装し、OpenShift Container Platform アプリケーションの低レイテンシーパフォーマンスを実現します。
クラスター管理者は、以下のようなノードレベルの設定を定義するパフォーマンスプロファイルを設定します。
- カーネルを kernel-rt に更新します。
- ハウスキーピング用の CPU を選択します。
- 実行中のワークロード用の CPU を選択します。
Node Tuning Operator は、バージョン 4.1 以降における標準的な OpenShift Container Platform インストールの一部となっています。
OpenShift Container Platform の以前のバージョンでは、Performance Addon Operator を使用して自動チューニングを実装し、OpenShift アプリケーションの低レイテンシーパフォーマンスを実現していました。OpenShift Container Platform 4.11 以降では、この機能は Node Tuning Operator の一部です。
6.14.1. Node Tuning Operator 仕様サンプルへのアクセス
このプロセスを使用して Node Tuning Operator 仕様サンプルにアクセスします。
手順
次のコマンドを実行して、Node Tuning Operator 仕様の例にアクセスします。
oc get tuned.tuned.openshift.io/default -o yaml -n openshift-cluster-node-tuning-operator
デフォルトの CR は、OpenShift Container Platform プラットフォームの標準的なノードレベルのチューニングを提供することを目的としており、Operator 管理の状態を設定するためにのみ変更できます。デフォルト CR へのその他のカスタム変更は、Operator によって上書きされます。カスタムチューニングの場合は、独自のチューニングされた CR を作成します。新規に作成された CR は、ノード/Pod ラベルおよびプロファイルの優先順位に基づいて OpenShift Container Platform ノードに適用されるデフォルトの CR およびカスタムチューニングと組み合わされます。
特定の状況で Pod ラベルのサポートは必要なチューニングを自動的に配信する便利な方法ですが、この方法は推奨されず、とくに大規模なクラスターにおいて注意が必要です。デフォルトの調整された CR は Pod ラベル一致のない状態で提供されます。カスタムプロファイルが Pod ラベル一致のある状態で作成される場合、この機能はその時点で有効になります。Pod ラベル機能は、Node Tuning Operator の将来のバージョンで非推奨になる予定です。
6.14.2. カスタムチューニング仕様
Operator のカスタムリソース (CR) には 2 つの重要なセクションがあります。1 つ目のセクションの profile:
は TuneD プロファイルおよびそれらの名前のリストです。2 つ目の recommend:
は、プロファイル選択ロジックを定義します。
複数のカスタムチューニング仕様は、Operator の namespace に複数の CR として共存できます。新規 CR の存在または古い CR の削除は Operator によって検出されます。既存のカスタムチューニング仕様はすべてマージされ、コンテナー化された TuneD デーモンの適切なオブジェクトは更新されます。
管理状態
Operator 管理の状態は、デフォルトの Tuned CR を調整して設定されます。デフォルトで、Operator は Managed 状態であり、spec.managementState
フィールドはデフォルトの Tuned CR に表示されません。Operator Management 状態の有効な値は以下のとおりです。
- Managed: Operator は設定リソースが更新されるとそのオペランドを更新します。
- Unmanaged: Operator は設定リソースへの変更を無視します。
- Removed: Operator は Operator がプロビジョニングしたオペランドおよびリソースを削除します。
プロファイルデータ
profile:
セクションは、TuneD プロファイルおよびそれらの名前をリスト表示します。
profile: - name: tuned_profile_1 data: | # TuneD profile specification [main] summary=Description of tuned_profile_1 profile [sysctl] net.ipv4.ip_forward=1 # ... other sysctl's or other TuneD daemon plugins supported by the containerized TuneD # ... - name: tuned_profile_n data: | # TuneD profile specification [main] summary=Description of tuned_profile_n profile # tuned_profile_n profile settings
推奨プロファイル
profile:
選択ロジックは、CR の recommend:
セクションによって定義されます。recommend:
セクションは、選択基準に基づくプロファイルの推奨項目のリストです。
recommend: <recommend-item-1> # ... <recommend-item-n>
リストの個別項目:
- machineConfigLabels: 1 <mcLabels> 2 match: 3 <match> 4 priority: <priority> 5 profile: <tuned_profile_name> 6 operand: 7 debug: <bool> 8 tunedConfig: reapply_sysctl: <bool> 9
- 1
- オプション:
- 2
- キー/値の
MachineConfig
ラベルのディクショナリー。キーは一意である必要があります。 - 3
- 省略する場合は、優先度の高いプロファイルが最初に一致するか、
machineConfigLabels
が設定されていない限り、プロファイルの一致が想定されます。 - 4
- オプションのリスト。
- 5
- プロファイルの順序付けの優先度。数値が小さいほど優先度が高くなります (
0
が最も高い優先度になります)。 - 6
- 一致に適用する TuneD プロファイル。例:
tuned_profile_1
- 7
- オプションのオペランド設定。
- 8
- TuneD デーモンのデバッグオンまたはオフを有効にします。オプションは、オンの場合は
true
、オフの場合はfalse
です。デフォルトはfalse
です。 - 9
- TuneD デーモンの
reapply_sysctl
機能をオンまたはオフにします。オプションは on でtrue
、オフの場合はfalse
です。
<match>
は、以下のように再帰的に定義されるオプションの一覧です。
- label: <label_name> 1 value: <label_value> 2 type: <label_type> 3 <match> 4
<match>
が省略されない場合、ネストされたすべての <match>
セクションが true
に評価される必要もあります。そうでない場合には false
が想定され、それぞれの <match>
セクションのあるプロファイルは適用されず、推奨されません。そのため、ネスト化 (子の <match>
セクション) は論理 AND 演算子として機能します。これとは逆に、<match>
一覧のいずれかの項目が一致する場合は、<match>
の一覧全体が true
に評価されます。そのため、リストは論理 OR 演算子として機能します。
machineConfigLabels
が定義されている場合は、マシン設定プールベースのマッチングが指定の recommend:
一覧の項目に対してオンになります。<mcLabels>
はマシン設定のラベルを指定します。マシン設定は、プロファイル <tuned_profile_name>
についてカーネル起動パラメーターなどのホスト設定を適用するために自動的に作成されます。この場合は、マシン設定セレクターが <mcLabels>
に一致するすべてのマシン設定プールを検索し、プロファイル <tuned_profile_name>
を確認されるマシン設定プールが割り当てられるすべてのノードに設定する必要があります。マスターロールとワーカーのロールの両方を持つノードをターゲットにするには、マスターロールを使用する必要があります。
リスト項目の match
および machineConfigLabels
は論理 OR 演算子によって接続されます。match
項目は、最初にショートサーキット方式で評価されます。そのため、true
と評価される場合、machineConfigLabels
項目は考慮されません。
マシン設定プールベースのマッチングを使用する場合は、同じハードウェア設定を持つノードを同じマシン設定プールにグループ化することが推奨されます。この方法に従わない場合は、TuneD オペランドが同じマシン設定プールを共有する 2 つ以上のノードの競合するカーネルパラメーターを計算する可能性があります。
例: ノードまたは Pod のラベルベースのマッチング
- match: - label: tuned.openshift.io/elasticsearch match: - label: node-role.kubernetes.io/master - label: node-role.kubernetes.io/infra type: pod priority: 10 profile: openshift-control-plane-es - match: - label: node-role.kubernetes.io/master - label: node-role.kubernetes.io/infra priority: 20 profile: openshift-control-plane - priority: 30 profile: openshift-node
上記のコンテナー化された TuneD デーモンの CR は、プロファイルの優先順位に基づいてその recommend.conf
ファイルに変換されます。最も高い優先順位 (10
) を持つプロファイルは openshift-control-plane-es
であるため、これが最初に考慮されます。指定されたノードで実行されるコンテナー化された TuneD デーモンは、同じノードに tuned.openshift.io/elasticsearch
ラベルが設定された Pod が実行されているかどうかを確認します。これがない場合は、<match>
セクション全体が false
として評価されます。このラベルを持つこのような Pod がある場合に、<match>
セクションが true
に評価されるようにするには、ノードラベルを node-role.kubernetes.io/master
または node-role.kubernetes.io/infra
にする必要もあります。
優先順位が 10
のプロファイルのラベルが一致した場合は、openshift-control-plane-es
プロファイルが適用され、その他のプロファイルは考慮されません。ノード/Pod ラベルの組み合わせが一致しない場合は、2 番目に高い優先順位プロファイル (openshift-control-plane
) が考慮されます。このプロファイルは、コンテナー化された TuneD Pod が node-role.kubernetes.io/master
または node-role.kubernetes.io/infra
ラベルを持つノードで実行される場合に適用されます。
最後に、プロファイル openshift-node
には最低の優先順位である 30
が設定されます。これには <match>
セクションがないため、常に一致します。これは、より高い優先順位の他のプロファイルが指定されたノードで一致しない場合に openshift-node
プロファイルを設定するために、最低の優先順位のノードが適用される汎用的な (catch-all) プロファイルとして機能します。
例: マシン設定プールベースのマッチング
apiVersion: tuned.openshift.io/v1 kind: Tuned metadata: name: openshift-node-custom namespace: openshift-cluster-node-tuning-operator spec: profile: - data: | [main] summary=Custom OpenShift node profile with an additional kernel parameter include=openshift-node [bootloader] cmdline_openshift_node_custom=+skew_tick=1 name: openshift-node-custom recommend: - machineConfigLabels: machineconfiguration.openshift.io/role: "worker-custom" priority: 20 profile: openshift-node-custom
ノードの再起動を最小限にするには、ターゲットノードにマシン設定プールのノードセレクターが一致するラベルを使用してラベルを付け、上記の Tuned CR を作成してから、最後にカスタムのマシン設定プール自体を作成します。
クラウドプロバイダー固有の TuneD プロファイル
この機能により、すべてのクラウドプロバイダー固有のノードに、OpenShift Container Platform クラスター上の特定のクラウドプロバイダーに合わせて特別に調整された TuneD プロファイルを簡単に割り当てることができます。これは、追加のノードラベルを追加したり、ノードをマシン設定プールにグループ化したりせずに実行できます。
この機能は、<cloud-provider>://<cloud-provider-specific-id>
の形式で spec.providerID
ノードオブジェクト値を利用して、NTO オペランドコンテナーの <cloud-provider>
の値で /var/lib/tuned/provider
ファイルを書き込みます。その後、このファイルのコンテンツは TuneD により、プロバイダー provider-<cloud-provider>
プロファイル (存在する場合) を読み込むために使用されます。
openshift-control-plane
および openshift-node
プロファイルの両方の設定を継承する openshift
プロファイルは、条件付きプロファイルの読み込みを使用してこの機能を使用するよう更新されるようになりました。現時点で、NTO や TuneD にクラウドプロバイダー固有のプロファイルは含まれていません。ただし、すべてのクラウドプロバイダー固有のクラスターノードに適用されるカスタムプロファイル provider-<cloud-provider>
を作成できます。
GCE クラウドプロバイダープロファイルの例
apiVersion: tuned.openshift.io/v1 kind: Tuned metadata: name: provider-gce namespace: openshift-cluster-node-tuning-operator spec: profile: - data: | [main] summary=GCE Cloud provider-specific profile # Your tuning for GCE Cloud provider goes here. name: provider-gce
プロファイルの継承により、provider-<cloud-provider>
プロファイルで指定された設定は、openshift
プロファイルとその子プロファイルによって上書きされます。
6.14.3. クラスターに設定されるデフォルトのプロファイル
以下は、クラスターに設定されるデフォルトのプロファイルです。
apiVersion: tuned.openshift.io/v1 kind: Tuned metadata: name: default namespace: openshift-cluster-node-tuning-operator spec: profile: - data: | [main] summary=Optimize systems running OpenShift (provider specific parent profile) include=-provider-${f:exec:cat:/var/lib/ocp-tuned/provider},openshift name: openshift recommend: - profile: openshift-control-plane priority: 30 match: - label: node-role.kubernetes.io/master - label: node-role.kubernetes.io/infra - profile: openshift-node priority: 40
OpenShift Container Platform 4.9 以降では、すべての OpenShift TuneD プロファイルが TuneD パッケージに含まれています。oc exec
コマンドを使用して、これらのプロファイルの内容を表示できます。
$ oc exec $tuned_pod -n openshift-cluster-node-tuning-operator -- find /usr/lib/tuned/openshift{,-control-plane,-node} -name tuned.conf -exec grep -H ^ {} \;
6.14.4. サポートされている TuneD デーモンプラグイン
[main]
セクションを除き、以下の TuneD プラグインは、Tuned CR の profile:
セクションで定義されたカスタムプロファイルを使用する場合にサポートされます。
- audio
- cpu
- disk
- eeepc_she
- modules
- mounts
- net
- scheduler
- scsi_host
- selinux
- sysctl
- sysfs
- usb
- video
- vm
- bootloader
これらのプラグインの一部によって提供される動的チューニング機能の中に、サポートされていない機能があります。以下の TuneD プラグインは現時点でサポートされていません。
- script
- systemd
TuneD ブートローダープラグインは、Red Hat Enterprise Linux CoreOS (RHCOS) ワーカーノードのみサポートします。