10.2. クラスターネットワーク MTU の変更
クラスター管理者は、クラスターの最大伝送単位 (MTU) を増減できます。
移行には中断が伴うため、MTU 更新が有効になると、クラスター内のノードが一時的に使用できなくなる可能性があります。
次の手順では、マシン設定、Dynamic Host Configuration Protocol (DHCP)、または ISO イメージのいずれかを使用してクラスターネットワーク MTU を変更する方法を説明します。DHCP または ISO アプローチを使用する場合は、クラスターのインストール後に保持した設定アーティファクトを参照して、手順を完了する必要があります。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
権限を持つアカウントを使用してクラスターにアクセスできる。 -
クラスターのターゲット MTU を特定している。OVN-Kubernetes ネットワークプラグインの MTU は、クラスター内の最小のハードウェア MTU 値から
100
を引いた値に設定する必要があります。
手順
クラスターネットワークの現在の MTU を取得するには、次のコマンドを入力します。
$ oc describe network.config cluster
出力例
... Status: Cluster Network: Cidr: 10.217.0.0/22 Host Prefix: 23 Cluster Network MTU: 1400 Network Type: OVNKubernetes Service Network: 10.217.4.0/23 ...
ハードウェア MTU の設定を準備します。
ハードウェア MTU が DHCP で指定されている場合は、次の dnsmasq 設定などで DHCP 設定を更新します。
dhcp-option-force=26,<mtu>
ここでは、以下のようになります。
<mtu>
- DHCP サーバーがアドバタイズするハードウェア MTU を指定します。
- ハードウェア MTU が PXE を使用したカーネルコマンドラインで指定されている場合は、それに応じてその設定を更新します。
ハードウェア MTU が NetworkManager 接続設定で指定されている場合は、以下のステップを実行します。OpenShift Container Platform では、これは、DHCP、カーネルコマンドラインなどの方法でネットワーク設定を明示的に指定していない場合のデフォルトのアプローチです。変更なしで次の手順を機能させるには、全クラスターノードで、同じ基盤となるネットワーク設定を使用する必要があります。
プライマリーネットワークインターフェイスを見つけます。
OpenShift SDN ネットワークプラグインを使用している場合は、次のコマンドを入力します。
$ oc debug node/<node_name> -- chroot /host ip route list match 0.0.0.0/0 | awk '{print $5 }'
ここでは、以下のようになります。
<node_name>
- クラスター内のノードの名前を指定します。
OVN-Kubernetes ネットワークプラグインを使用している場合は、次のコマンドを入力します。
$ oc debug node/<node_name> -- chroot /host nmcli -g connection.interface-name c show ovs-if-phys0
ここでは、以下のようになります。
<node_name>
- クラスター内のノードの名前を指定します。
<interface>-mtu.conf
ファイルに次の NetworkManager 設定を作成します。NetworkManager 接続設定の例
[connection-<interface>-mtu] match-device=interface-name:<interface> ethernet.mtu=<mtu>
ここでは、以下のようになります。
<mtu>
- 新しいハードウェア MTU 値を指定します。
<interface>
- プライマリーネットワークインターフェイス名を指定します。
1 つはコントロールプレーンノード用、もう 1 つはクラスター内のワーカーノード用に、2 つの
MachineConfig
オブジェクトを作成します。control-plane-interface.bu
ファイルに次の Butane 設定を作成します。variant: openshift version: 4.16.0 metadata: name: 01-control-plane-interface labels: machineconfiguration.openshift.io/role: master storage: files: - path: /etc/NetworkManager/conf.d/99-<interface>-mtu.conf 1 contents: local: <interface>-mtu.conf 2 mode: 0600
worker-interface.bu
ファイルに次の Butane 設定を作成します。variant: openshift version: 4.16.0 metadata: name: 01-worker-interface labels: machineconfiguration.openshift.io/role: worker storage: files: - path: /etc/NetworkManager/conf.d/99-<interface>-mtu.conf 1 contents: local: <interface>-mtu.conf 2 mode: 0600
次のコマンドを実行して、Butane 設定から
MachineConfig
オブジェクトを作成します。$ for manifest in control-plane-interface worker-interface; do butane --files-dir . $manifest.bu > $manifest.yaml done
警告これらのマシン設定は、後で明示的に指示されるまで適用しないでください。これらのマシン設定を適用すると、クラスターの安定性が失われます。
MTU 移行を開始するには、次のコマンドを入力して移行設定を指定します。Machine Config Operator は、MTU の変更に備えて、クラスター内のノードをローリングリブートします。
$ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge --patch \ '{"spec": { "migration": { "mtu": { "network": { "from": <overlay_from>, "to": <overlay_to> } , "machine": { "to" : <machine_to> } } } } }'
ここでは、以下のようになります。
<overlay_from>
- 現在のクラスターネットワークの MTU 値を指定します。
<overlay_to>
-
クラスターネットワークのターゲット MTU を指定します。この値は、
<machine_to>
の値を基準にして設定します。OVN-Kubernetes の場合、この値は<machine_to>
の値から100
を引いた値である必要があります。 <machine_to>
- 基盤となるホストネットワークのプライマリーネットワークインターフェイスの MTU を指定します。
クラスター MTU を増やす例
$ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge --patch \ '{"spec": { "migration": { "mtu": { "network": { "from": 1400, "to": 9000 } , "machine": { "to" : 9100} } } } }'
Machine Config Operator (MCO) は、各マシン設定プール内のマシンを更新するときに、各ノードを 1 つずつ再起動します。すべてのノードが更新されるまで待機する必要があります。以下のコマンドを実行してマシン設定プールのステータスを確認します。
$ oc get machineconfigpools
正常に更新されたノードには、
UPDATED=true
、UPDATING=false
、DEGRADED=false
のステータスがあります。注記Machine Config Operator は、デフォルトでプールごとに 1 つずつマシンを更新するため、クラスターのサイズに応じて移行にかかる合計時間が増加します。
ホスト上の新規マシン設定のステータスを確認します。
マシン設定の状態と適用されたマシン設定の名前をリスト表示するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc describe node | egrep "hostname|machineconfig"
出力例
kubernetes.io/hostname=master-0 machineconfiguration.openshift.io/currentConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b machineconfiguration.openshift.io/reason: machineconfiguration.openshift.io/state: Done
以下のステートメントが true であることを確認します。
-
machineconfiguration.openshift.io/state
フィールドの値はDone
です。 -
machineconfiguration.openshift.io/currentConfig
フィールドの値は、machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig
フィールドの値と等しくなります。
-
マシン設定が正しいことを確認するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc get machineconfig <config_name> -o yaml | grep ExecStart
ここで、
<config_name>
はmachineconfiguration.openshift.io/currentConfig
フィールドのマシン設定の名前になります。マシン設定には、systemd 設定に以下の更新を含める必要があります。
ExecStart=/usr/local/bin/mtu-migration.sh
基盤となるネットワークインターフェイスの MTU 値を更新します。
NetworkManager 接続設定で新しい MTU を指定する場合は、次のコマンドを入力します。MachineConfig Operator は、クラスター内のノードのローリングリブートを自動的に実行します。
$ for manifest in control-plane-interface worker-interface; do oc create -f $manifest.yaml done
- DHCP サーバーオプションまたはカーネルコマンドラインと PXE を使用して新しい MTU を指定する場合は、インフラストラクチャーに必要な変更を加えます。
Machine Config Operator (MCO) は、各マシン設定プール内のマシンを更新するときに、各ノードを 1 つずつ再起動します。すべてのノードが更新されるまで待機する必要があります。以下のコマンドを実行してマシン設定プールのステータスを確認します。
$ oc get machineconfigpools
正常に更新されたノードには、
UPDATED=true
、UPDATING=false
、DEGRADED=false
のステータスがあります。注記Machine Config Operator は、デフォルトでプールごとに 1 つずつマシンを更新するため、クラスターのサイズに応じて移行にかかる合計時間が増加します。
ホスト上の新規マシン設定のステータスを確認します。
マシン設定の状態と適用されたマシン設定の名前をリスト表示するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc describe node | egrep "hostname|machineconfig"
出力例
kubernetes.io/hostname=master-0 machineconfiguration.openshift.io/currentConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b machineconfiguration.openshift.io/reason: machineconfiguration.openshift.io/state: Done
以下のステートメントが true であることを確認します。
-
machineconfiguration.openshift.io/state
フィールドの値はDone
です。 -
machineconfiguration.openshift.io/currentConfig
フィールドの値は、machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig
フィールドの値と等しくなります。
-
マシン設定が正しいことを確認するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc get machineconfig <config_name> -o yaml | grep path:
ここで、
<config_name>
はmachineconfiguration.openshift.io/currentConfig
フィールドのマシン設定の名前になります。マシン設定が正常にデプロイされた場合、前の出力には
/etc/NetworkManager/conf.d/99-<interface>-mtu.conf
ファイルパスとExecStart=/usr/local/bin/mtu-migration.sh
行が含まれます。
MTU の移行を完了するために、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインに対して次のコマンドを入力します。
$ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge --patch \ '{"spec": { "migration": null, "defaultNetwork":{ "ovnKubernetesConfig": { "mtu": <mtu> }}}}'
ここでは、以下のようになります。
<mtu>
-
<overlay_to>
で指定した新しいクラスターネットワーク MTU を指定します。
MTU の移行が完了すると、各マシン設定プールノードが 1 つずつ再起動します。すべてのノードが更新されるまで待機する必要があります。以下のコマンドを実行してマシン設定プールのステータスを確認します。
$ oc get machineconfigpools
正常に更新されたノードには、
UPDATED=true
、UPDATING=false
、DEGRADED=false
のステータスがあります。
検証
クラスターネットワークの現在の MTU を取得するには、次のコマンドを入力します。
$ oc describe network.config cluster
ノードのプライマリーネットワークインターフェイスの現在の MTU を取得します。
クラスター内のノードをリスト表示するには、次のコマンドを入力します。
$ oc get nodes
ノードのプライマリーネットワークインターフェイスの現在の MTU 設定を取得するには、次のコマンドを入力します。
$ oc debug node/<node> -- chroot /host ip address show <interface>
ここでは、以下のようになります。
<node>
- 前のステップの出力をもとに、ノードを指定します。
<interface>
- ノードのプライマリーネットワークインターフェイス名を指定します。
出力例
ens3: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 8051