23.2. サービスの ExternalIP の設定


クラスター管理者は、トラフィックをクラスター内のサービスに送信できるクラスター外の IP アドレスブロックを指定できます。

この機能は通常、ベアメタルハードウェアにインストールされているクラスターに最も役立ちます。

23.2.1. 前提条件

  • ネットワークインフラストラクチャーは、外部 IP アドレスのトラフィックをクラスターにルーティングする必要があります。

23.2.2. ExternalIP について

クラウド以外の環境では、OpenShift Container Platform は ExternalIP 機能を使用して外部 IP アドレスの Service オブジェクトの spec.externalIPs[] フィールドへの割り当てをサポートします。このフィールドを設定すると、OpenShift Container Platform は追加の仮想 IP アドレスをサービスに割り当てます。IP アドレスは、クラスターに定義されたサービスネットワーク外に指定できます。type=NodePort が設定されたサービスと同様に ExternalIP 機能で設定されたサービスにより、トラフィックを負荷分散のためにローカルノードに転送することができます。

ネットワークインフラストラクチャーを設定し、定義する外部 IP アドレスブロックがクラスターにルーティングされるようにする必要があります。そのため、IP アドレスがノードのネットワークインターフェイスに設定されません。トラフィックを処理するには、静的な Address Resolution Protocol (ARP) エントリーなどの方法を使用して、ルーティングと外部 IP へのアクセスを設定する必要があります。

OpenShift Container Platform は以下の機能を追加して Kubernetes の ExternalIP 機能を拡張します。

  • 設定可能なポリシーでの、ユーザーによる外部 IP アドレスの使用の制限
  • 要求時の外部 IP アドレスのサービスへの自動割り当て
警告

ExternalIP 機能の使用はデフォルトで無効にされます。これは、外部 IP アドレスへのクラスター内のトラフィックがそのサービスにダイレクトされるため、セキュリティー上のリスクを生じさせる可能性があります。これにより、クラスターユーザーは外部リソースに関する機密性の高いトラフィックをインターセプトできるようになります。

重要

この機能は、クラウド以外のデプロイメントでのみサポートされます。クラウドデプロイメントの場合、クラウドの自動デプロイメントのためにロードバランサーサービスを使用し、サービスのエンドポイントをターゲットに設定します。

MetalLB 実装または IP フェイルオーバーデプロイメントのいずれかを使用して、次の方法で ExternalIP リソースをサービスに接続できます。

外部 IP の自動割り当て
OpenShift Container Platform は、spec.type=LoadBalancer を設定して Service オブジェクトを作成する際に、IP アドレスを autoAssignCIDRs CIDR ブロックから spec.externalIPs[] 配列に自動的に割り当てます。この場合、OpenShift Container Platform はロードバランサーサービスタイプのクラウド以外のバージョンを実装し、IP アドレスをサービスに割り当てます。自動割り当てはデフォルトで無効にされており、以下のセクションで説明されているように、これはクラスター管理者が設定する必要があります。
外部 IP の手動割り当て
OpenShift Container Platform は Service オブジェクトの作成時に spec.externalIPs[] 配列に割り当てられた IP アドレスを使用します。別のサービスによってすでに使用されている IP アドレスを指定することはできません。

23.2.2.1. ExternalIP の設定

OpenShift Container Platform での外部 IP アドレスの使用は、cluster という名前の Network.config.openshift.io CR の以下のフィールドで管理されます。

  • spec.externalIP.autoAssignCIDRs は、サービスの外部 IP アドレスを選択する際にロードバランサーによって使用される IP アドレスブロックを定義します。OpenShift Container Platform は、自動割り当て用の単一 IP アドレスブロックのみをサポートします。これは、ExternalIP をサービスに手動で割り当てる際に、制限された数の共有 IP アドレスのポート領域を管理しなくてはならない場合よりも単純になります。自動割り当てが有効な場合には、spec.type=LoadBalancer が設定された Service オブジェクトには外部 IP アドレスが割り当てられます。
  • spec.externalIP.policy は、IP アドレスを手動で指定する際に許容される IP アドレスブロックを定義します。OpenShift Container Platform は、spec.externalIP.autoAssignCIDRs で定義される IP アドレスブロックにポリシールールを適用しません。

ルーティングが正しく行われると、設定された外部 IP アドレスブロックからの外部トラフィックは、サービスが公開する TCP ポートまたは UDP ポートを介してサービスのエンドポイントに到達できます。

重要

クラスター管理者は、OpenShiftSDN ネットワークタイプと OVN-Kubernetes ネットワークタイプの両方で externalIP へのルーティングを設定する必要があります。割り当てる IP アドレスブロックがクラスター内の 1 つ以上のノードで終了することを確認する必要もあります。詳細は、Kubernetes External IPs を参照してください。

OpenShift Container Platform は IP アドレスの自動および手動割り当ての両方をサポートしており、それぞれのアドレスは 1 つのサービスの最大数に割り当てられることが保証されます。これにより、各サービスは、ポートが他のサービスで公開されているかによらず、自らの選択したポートを公開できます。

注記

OpenShift Container Platform の autoAssignCIDRs で定義された IP アドレスブロックを使用するには、ホストのネットワークに必要な IP アドレスの割り当ておよびルーティングを設定する必要があります。

以下の YAML は、外部 IP アドレスが設定されたサービスを説明しています。

spec.externalIPs[] が設定された Service オブジェクトの例

apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
  name: http-service
spec:
  clusterIP: 172.30.163.110
  externalIPs:
  - 192.168.132.253
  externalTrafficPolicy: Cluster
  ports:
  - name: highport
    nodePort: 31903
    port: 30102
    protocol: TCP
    targetPort: 30102
  selector:
    app: web
  sessionAffinity: None
  type: LoadBalancer
status:
  loadBalancer:
    ingress:
    - ip: 192.168.132.253

23.2.2.2. 外部 IP アドレスの割り当ての制限

クラスター管理者は、IP アドレスブロックを指定して許可および拒否できます。

制限は、cluster-admin 権限を持たないユーザーにのみ適用されます。クラスター管理者は、サービスの spec.externalIPs[] フィールドを任意の IP アドレスに常に設定できます。

spec.ExternalIP.policy フィールドを指定して、policy オブジェクトが定義された IP アドレスポリシーを設定します。ポリシーオブジェクトには以下の形があります。

{
  "policy": {
    "allowedCIDRs": [],
    "rejectedCIDRs": []
  }
}

ポリシーの制限を設定する際に、以下のルールが適用されます。

  • policy={} が設定される場合、spec.ExternalIPs[] が設定されている Service オブジェクトの作成は失敗します。これは OpenShift Container Platform のデフォルトです。policy=null が設定される動作は同一です。
  • policy が設定され、policy.allowedCIDRs[] または policy.rejectedCIDRs[] のいずれかが設定される場合、以下のルールが適用されます。

    • allowedCIDRs[]rejectedCIDRs[] の両方が設定される場合、rejectedCIDRs[]allowedCIDRs[] よりも優先されます。
    • allowedCIDRs[] が設定される場合、spec.ExternalIPs[] が設定されている Service オブジェクトの作成は、指定された IP アドレスが許可される場合にのみ正常に実行されます。
    • rejectedCIDRs[] が設定される場合、spec.ExternalIPs[] が設定されている Service オブジェクトの作成は、指定された IP アドレスが拒否されていない場合にのみ正常に実行されます。

23.2.2.3. ポリシーオブジェクトの例

以下に続く例では、複数のポリシー設定の例を示します。

  • 以下の例では、ポリシーは OpenShift Container Platform が外部 IP アドレスが指定されたサービスを作成するのを防ぎます。

    Service オブジェクトの spec.externalIPs[] に指定された値を拒否するポリシーの例

    apiVersion: config.openshift.io/v1
    kind: Network
    metadata:
      name: cluster
    spec:
      externalIP:
        policy: {}
      ...

  • 以下の例では、allowedCIDRs および rejectedCIDRs フィールドの両方が設定されます。

    許可される、および拒否される CIDR ブロックの両方を含むポリシーの例

    apiVersion: config.openshift.io/v1
    kind: Network
    metadata:
      name: cluster
    spec:
      externalIP:
        policy:
          allowedCIDRs:
          - 172.16.66.10/23
          rejectedCIDRs:
          - 172.16.66.10/24
      ...

  • 以下の例では、policynull に設定されます。null に設定されている場合、oc get networks.config.openshift.io -o yaml を入力して設定オブジェクトを検査する際に、policy フィールドは出力に表示されません。

    Service オブジェクトの spec.externalIPs[] に指定された値を許可するポリシーの例

    apiVersion: config.openshift.io/v1
    kind: Network
    metadata:
      name: cluster
    spec:
      externalIP:
        policy: null
      ...

23.2.3. ExternalIP アドレスブロックの設定

ExternalIP アドレスブロックの設定は、cluster という名前の Network カスタムリソース (CR) で定義されます。ネットワーク CR は config.openshift.io API グループに含まれます。

重要

クラスターのインストール時に、Cluster Version Operator (CVO) は cluster という名前のネットワーク CR を自動的に作成します。このタイプのその他の CR オブジェクトの作成はサポートされていません。

以下の YAML は ExternalIP 設定を説明しています。

cluster という名前の network.config.openshift.io CR

apiVersion: config.openshift.io/v1
kind: Network
metadata:
  name: cluster
spec:
  externalIP:
    autoAssignCIDRs: [] 1
    policy: 2
      ...

1
外部 IP アドレスのサービスへの自動割り当てに使用できる CIDR 形式で IP アドレスブロックを定義します。1 つの IP アドレス範囲のみが許可されます。
2
IP アドレスのサービスへの手動割り当ての制限を定義します。制限が定義されていない場合は、Service オブジェクトに spec.externalIP フィールドを指定しても許可されません。デフォルトで、制限は定義されません。

以下の YAML は、policy スタンザのフィールドを説明しています。

Network.config.openshift.io policy スタンザ

policy:
  allowedCIDRs: [] 1
  rejectedCIDRs: [] 2

1
CIDR 形式の許可される IP アドレス範囲のリスト。
2
CIDR 形式の拒否される IP アドレス範囲のリスト。
外部 IP 設定の例

外部 IP アドレスプールの予想される複数の設定が以下の例で表示されています。

  • 以下の YAML は、自動的に割り当てられた外部 IP アドレスを有効にする設定を説明しています。

    spec.externalIP.autoAssignCIDRs が設定された設定例

    apiVersion: config.openshift.io/v1
    kind: Network
    metadata:
      name: cluster
    spec:
      ...
      externalIP:
        autoAssignCIDRs:
        - 192.168.132.254/29

  • 以下の YAML は、許可された、および拒否された CIDR 範囲のポリシールールを設定します。

    spec.externalIP.policy が設定された設定例

    apiVersion: config.openshift.io/v1
    kind: Network
    metadata:
      name: cluster
    spec:
      ...
      externalIP:
        policy:
          allowedCIDRs:
          - 192.168.132.0/29
          - 192.168.132.8/29
          rejectedCIDRs:
          - 192.168.132.7/32

23.2.4. クラスターの外部 IP アドレスブロックの設定

クラスター管理者は、以下の ExternalIP を設定できます。

  • Service オブジェクトの spec.clusterIP フィールドを自動的に設定するために OpenShift Container Platform によって使用される ExternalIP アドレスブロック。
  • IP アドレスを制限するポリシーオブジェクトは Service オブジェクトの spec.clusterIP 配列に手動で割り当てられます。

前提条件

  • OpenShift CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。

手順

  1. オプション: 現在の外部 IP 設定を表示するには、以下のコマンドを入力します。

    $ oc describe networks.config cluster
  2. 設定を編集するには、以下のコマンドを入力します。

    $ oc edit networks.config cluster
  3. 以下の例のように ExternalIP 設定を変更します。

    apiVersion: config.openshift.io/v1
    kind: Network
    metadata:
      name: cluster
    spec:
      ...
      externalIP: 1
      ...
    1
    externalIP スタンザの設定を指定します。
  4. 更新された ExternalIP 設定を確認するには、以下のコマンドを入力します。

    $ oc get networks.config cluster -o go-template='{{.spec.externalIP}}{{"\n"}}'

23.2.5. 次のステップ

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