第13章 IP フェイルオーバーの設定


このトピックでは、OpenShift Container Platform クラスターの Pod およびサービスの IP フェイルオーバーの設定を説明します。

IP フェイルオーバーは Keepalived を使用して、一連のホストで外部からアクセスできる仮想 IP (VIP) アドレスのセットをホストします。各仮想 IP アドレスは、一度に 1 つのホストによってのみサービスされます。Keepalived は Virtual Router Redundancy Protocol (VRRP) を使用して、(一連のホストの) どのホストがどの VIP を提供するかを判別します。ホストが利用不可の場合や Keepalived が監視しているサービスが応答しない場合は、VIP は一連のホストの別のホストに切り換えられます。したがって、VIP はホストが利用可能である限り常に提供されます。

セットのすべての VIP はセットから選択されるノードによって提供されます。単一のノードが使用可能な場合は、仮想 IP が提供されます。ノード上で VIP を明示的に配布する方法がないため、VIP のないノードがある可能性も、多数の VIP を持つノードがある可能性もあります。ノードが 1 つのみ存在する場合は、すべての VIP がそのノードに配置されます。

管理者は、すべての仮想 IP アドレスが次の要件を満たしていることを確認する必要があります。

  • 設定されたホストでクラスター外からアクセスできる。
  • クラスター内でこれ以外の目的で使用されていない。

各ノードの Keepalived は、必要とされるサービスが実行中であるかどうかを判別します。実行中の場合、VIP がサポートされ、Keepalived はネゴシエーションに参加してどのノードが VIP を提供するかを決定します。これに参加するノードについては、このサービスが VIP の監視ポートでリッスンしている、またはチェックが無効にされている必要があります。

注記

セット内の各仮想 IP は、異なるノードによってサービスされる可能性があります。

IP フェイルオーバーは各 VIP のポートをモニターし、ポートがノードで到達可能かどうかを判別します。ポートが到達不能な場合、VIP はノードに割り当てられません。ポートが 0 に設定されている場合、このチェックは抑制されます。check スクリプトは必要なテストを実行します。

Keepalived を実行するノードが check スクリプトを渡す場合、ノードの VIP はプリエンプションストラテジーに応じて、その優先順位および現在のマスターの優先順位に基づいて master 状態になることができます。

クラスター管理者は OPENSHIFT_HA_NOTIFY_SCRIPT 変数を介してスクリプトを提供できます。このスクリプトは、ノードの VIP の状態が変更されるたびに呼び出されます。Keepalived は VIP を提供する場合は master 状態を、別のノードが VIP を提供する場合は backup 状態を、または check スクリプトが失敗する場合は fault 状態を使用します。notify スクリプトは、状態が変更されるたびに新規の状態で呼び出されます。

OpenShift Container Platform で IP フェイルオーバーのデプロイメント設定を作成できます。IP フェイルオーバーのデプロイメント設定は VIP アドレスのセットを指定し、それらの提供先となるノードのセットを指定します。クラスターには複数の IP フェイルオーバーのデプロイメント設定を持たせることができ、それぞれが固有な VIP アドレスの独自のセットを管理します。IP フェイルオーバー設定の各ノードは IP フェイルオーバー Pod として実行され、この Pod は Keepalived を実行します。

VIP を使用してホストネットワークを持つ Pod にアクセスする場合、アプリケーション Pod は IP フェイルオーバー Pod を実行しているすべてのノードで実行されます。これにより、いずれの IP フェイルオーバーノードもマスターになり、必要時に VIP を提供することができます。アプリケーション Pod が IP フェイルオーバーのすべてのノードで実行されていない場合、一部の IP フェイルオーバーノードが VIP を提供できないか、一部のアプリケーション Pod がトラフィックを受信できなくなります。この不一致を防ぐために、IP フェイルオーバーとアプリケーション Pod の両方に同じセレクターとレプリケーション数を使用します。

VIP を使用してサービスにアクセスしている間は、アプリケーション Pod が実行されている場所に関係なく、すべてのノードでサービスに到達できるため、任意のノードをノードの IP フェイルオーバーセットに含めることができます。いずれの IP フェイルオーバーノードも、いつでもマスターにすることができます。サービスは外部 IP およびサービスポートを使用するか、NodePort を使用することができます。NodePort のセットアップは特権付きの操作で実行されます。

サービス定義で外部 IP を使用する場合、VIP は外部 IP に設定され、IP フェイルオーバーのモニタリングポートはサービスポートに設定されます。ノードポートを使用する場合、ポートはクラスター内のすべてのノードで開かれ、サービスは、現在 VIP にサービスを提供しているあらゆるノードからのトラフィックの負荷を分散します。この場合、IP フェイルオーバーのモニタリングポートはサービス定義で NodePort に設定されます。

重要

サービス VIP の可用性が高い場合でも、パフォーマンスに影響が出る可能性があります。Keepalived は、各 VIP が設定内の一部のノードによってサービスされることを確認し、他のノードに VIP がない場合でも、複数の VIP が同じノードに配置される可能性があります。IP フェイルオーバーによって複数の VIP が同じノードに配置されると、VIP のセット全体で外部から負荷分散される戦略が妨げられる可能性があります。

ExternalIP を使用する場合は、ExternalIP 範囲と同じ仮想 IP 範囲を持つように IP フェイルオーバーを設定できます。また、モニタリングポートを無効にすることもできます。この場合、すべての VIP がクラスター内の同じノードに表示されます。どのユーザーでも、ExternalIP を使用してサービスをセットアップし、高可用性を実現できます。

重要

クラスター内の VIP の最大数は 254 です。

13.1. IP フェイルオーバーの環境変数

以下の表は、IP フェイルオーバーの設定に使用される変数を示しています。

表13.1 IP フェイルオーバーの環境変数
変数名デフォルト説明

OPENSHIFT_HA_MONITOR_PORT

80

IP フェイルオーバー Pod は、各仮想 IP (VIP) のこのポートに対して TCP 接続を開こうとします。接続が設定されると、サービスは実行中であると見なされます。このポートが 0 に設定される場合、テストは常にパスします。

OPENSHIFT_HA_NETWORK_INTERFACE

 

IP フェイルオーバーが Virtual Router Redundancy Protocol (VRRP) トラフィックの送信に使用するインターフェイス名。デフォルト値は eth0 です。

OPENSHIFT_HA_REPLICA_COUNT

2

作成するレプリカの数です。これは、IP フェイルオーバーデプロイメント設定の spec.replicas 値に一致する必要があります。

OPENSHIFT_HA_VIRTUAL_IPS

 

レプリケートする IP アドレス範囲のリストです。これは指定する必要があります。例: 1.2.3.4-6,1.2.3.9

OPENSHIFT_HA_VRRP_ID_OFFSET

0

仮想ルーター ID の設定に使用されるオフセット値。異なるオフセット値を使用すると、複数の IP フェイルオーバー設定が同じクラスター内に存在できるようになります。デフォルトのオフセットは 0 で、許可される範囲は 0 から 255 までです。

OPENSHIFT_HA_VIP_GROUPS

 

VRRP に作成するグループの数です。これが設定されていない場合、グループは OPENSHIFT_HA_VIP_GROUPS 変数で指定されている仮想 IP 範囲ごとに作成されます。

OPENSHIFT_HA_IPTABLES_CHAIN

INPUT

iptables チェーンの名前であり、iptables ルールを自動的に追加し、VRRP トラフィックをオンにすることを許可するために使用されます。この値が設定されていない場合、iptables ルールは追加されません。チェーンが存在しない場合は作成されません。

OPENSHIFT_HA_CHECK_SCRIPT

 

アプリケーションが動作していることを確認するために定期的に実行されるスクリプトの Pod ファイルシステム内の完全パス名です。

OPENSHIFT_HA_CHECK_INTERVAL

2

check スクリプトが実行される期間 (秒単位) です。

OPENSHIFT_HA_NOTIFY_SCRIPT

 

状態が変更されるたびに実行されるスクリプトの Pod ファイルシステム内の完全パス名です。

OPENSHIFT_HA_PREEMPTION

preempt_nodelay 300

新たな優先度の高いホストを処理するためのストラテジーです。nopreempt ストラテジーでは、マスターを優先度の低いホストから優先度の高いホストに移動しません。

Red Hat logoGithubRedditYoutubeTwitter

詳細情報

試用、購入および販売

コミュニティー

Red Hat ドキュメントについて

Red Hat をお使いのお客様が、信頼できるコンテンツが含まれている製品やサービスを活用することで、イノベーションを行い、目標を達成できるようにします。

多様性を受け入れるオープンソースの強化

Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。このような変更は、段階的に実施される予定です。詳細情報: Red Hat ブログ.

会社概要

Red Hat は、企業がコアとなるデータセンターからネットワークエッジに至るまで、各種プラットフォームや環境全体で作業を簡素化できるように、強化されたソリューションを提供しています。

© 2024 Red Hat, Inc.