13.2. クラスター内の IP フェイルオーバーの設定
クラスター管理者は、クラスター全体に IP フェイルオーバーを設定することも、ラベルセレクターの定義に基づいてノードのサブセットに IP フェイルオーバーを設定することもできます。クラスター内に IP フェイルオーバーのデプロイメントを複数設定して、それぞれを相互に切り離すこともできます。
IP フェイルオーバーのデプロイメントにより、使用される制約またはラベルに一致する各ノードでフェイルオーバー Pod が実行されるようになります。
この Pod は Keepalived を実行します。これは、最初のノードがサービスまたはエンドポイントに到達できない場合に、エンドポイントを監視し、Virtual Router Redundancy Protocol (VRRP) を使用して仮想 IP (VIP) を別のノードにフェイルオーバーできます。
実稼働環境で使用する場合は、少なくとも 2 つのノードを選択し、選択したノードの数に相当する replicas
を設定する selector
を設定します。
前提条件
-
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてクラスターにログインしている。 - プルシークレットを作成している。
Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) のみ:
- ターゲット環境に RHOSP クライアント (RHCOS ドキュメント) をインストールした。
-
RHOSP
openrc.sh
rc ファイル (RHCOS ドキュメント) をダウンロードした。
手順
IP フェイルオーバーのサービスアカウントを作成します。
$ oc create sa ipfailover
hostNetwork
の SCC (Security Context Constraints) を更新します。$ oc adm policy add-scc-to-user privileged -z ipfailover
$ oc adm policy add-scc-to-user hostnetwork -z ipfailover
Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) のみ: フェイルオーバー仮想 IP アドレスが RHOSP ポートに到達できるように、次の手順を実行します。
RHOSP CLI を使用して、RHOSP クラスターの
allowed_address_pairs
パラメーターのデフォルトの RHOSP API および仮想 IP アドレスを表示します。$ openstack port show <cluster_name> -c allowed_address_pairs
出力例
*Field* *Value* allowed_address_pairs ip_address='192.168.0.5', mac_address='fa:16:3e:31:f9:cb' ip_address='192.168.0.7', mac_address='fa:16:3e:31:f9:cb'
RHOSP CLI で次のコマンドを入力して、IP フェイルオーバーのデプロイメントに別の仮想 IP アドレスを設定し、RHOSP のポートでそのアドレスに到達できるようにします。デフォルトの RHOSP API および仮想 IP アドレスを、IP フェイルオーバーのデプロイメントのフェイルオーバー仮想 IP アドレスとして設定しないでください。
1.1.1.1
フェイルオーバー IP アドレスを RHOSP ポートの許可されたアドレスとして追加する例$ openstack port set <cluster_name> --allowed-address ip-address=1.1.1.1,mac-address=fa:fa:16:3e:31:f9:cb
- デプロイメントの IP フェイルオーバーを設定するためのデプロイメント YAML ファイルを作成します。後の手順の「IP フェイルオーバー設定のデプロイメント YAML の例」を参照してください。
IP フェイルオーバーのデプロイメントで次の仕様を指定して、フェイルオーバー仮想 IP アドレスを
OPENSHIFT_HA_VIRTUAL_IPS
環境変数に渡します。OPENSHIFT_HA_VIRTUAL_IPS
に1.1.1.1
仮想 IP アドレスを追加する例apiVersion: apps/v1 kind: Deployment metadata: name: ipfailover-keepalived # ... spec: env: - name: OPENSHIFT_HA_VIRTUAL_IPS value: "1.1.1.1" # ...
IP フェイルオーバーを設定するためのデプロイメント YAML ファイルを作成します。
注記Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) の場合、デプロイメント YAML ファイルを再作成する必要はありません。このファイルは、以前の手順ですでに作成されています。
IP フェイルオーバー設定のデプロイメント YAML の例
apiVersion: apps/v1 kind: Deployment metadata: name: ipfailover-keepalived 1 labels: ipfailover: hello-openshift spec: strategy: type: Recreate replicas: 2 selector: matchLabels: ipfailover: hello-openshift template: metadata: labels: ipfailover: hello-openshift spec: serviceAccountName: ipfailover privileged: true hostNetwork: true nodeSelector: node-role.kubernetes.io/worker: "" containers: - name: openshift-ipfailover image: registry.redhat.io/openshift4/ose-keepalived-ipfailover-rhel9:v4.16 ports: - containerPort: 63000 hostPort: 63000 imagePullPolicy: IfNotPresent securityContext: privileged: true volumeMounts: - name: lib-modules mountPath: /lib/modules readOnly: true - name: host-slash mountPath: /host readOnly: true mountPropagation: HostToContainer - name: etc-sysconfig mountPath: /etc/sysconfig readOnly: true - name: config-volume mountPath: /etc/keepalive env: - name: OPENSHIFT_HA_CONFIG_NAME value: "ipfailover" - name: OPENSHIFT_HA_VIRTUAL_IPS 2 value: "1.1.1.1-2" - name: OPENSHIFT_HA_VIP_GROUPS 3 value: "10" - name: OPENSHIFT_HA_NETWORK_INTERFACE 4 value: "ens3" #The host interface to assign the VIPs - name: OPENSHIFT_HA_MONITOR_PORT 5 value: "30060" - name: OPENSHIFT_HA_VRRP_ID_OFFSET 6 value: "0" - name: OPENSHIFT_HA_REPLICA_COUNT 7 value: "2" #Must match the number of replicas in the deployment - name: OPENSHIFT_HA_USE_UNICAST value: "false" #- name: OPENSHIFT_HA_UNICAST_PEERS #value: "10.0.148.40,10.0.160.234,10.0.199.110" - name: OPENSHIFT_HA_IPTABLES_CHAIN 8 value: "INPUT" #- name: OPENSHIFT_HA_NOTIFY_SCRIPT 9 # value: /etc/keepalive/mynotifyscript.sh - name: OPENSHIFT_HA_CHECK_SCRIPT 10 value: "/etc/keepalive/mycheckscript.sh" - name: OPENSHIFT_HA_PREEMPTION 11 value: "preempt_delay 300" - name: OPENSHIFT_HA_CHECK_INTERVAL 12 value: "2" livenessProbe: initialDelaySeconds: 10 exec: command: - pgrep - keepalived volumes: - name: lib-modules hostPath: path: /lib/modules - name: host-slash hostPath: path: / - name: etc-sysconfig hostPath: path: /etc/sysconfig # config-volume contains the check script # created with `oc create configmap keepalived-checkscript --from-file=mycheckscript.sh` - configMap: defaultMode: 0755 name: keepalived-checkscript name: config-volume imagePullSecrets: - name: openshift-pull-secret 13
- 1
- IP フェイルオーバーデプロイメントの名前。
- 2
- レプリケートする IP アドレス範囲のリストです。これは指定する必要があります。例:
1.2.3.4-6,1.2.3.9
- 3
- VRRP に作成するグループの数です。これが設定されていない場合、グループは
OPENSHIFT_HA_VIP_GROUPS
変数で指定されている仮想 IP 範囲ごとに作成されます。 - 4
- IP フェイルオーバーが VRRP トラフィックの送信に使用するインターフェイス名。デフォルトで
eth0
が使用されます。 - 5
- IP フェイルオーバー Pod は、各 VIP のこのポートに対して TCP 接続を開こうとします。接続が設定されると、サービスは実行中であると見なされます。このポートが
0
に設定される場合、テストは常にパスします。デフォルト値は80
です。 - 6
- 仮想ルーター ID の設定に使用されるオフセット値。異なるオフセット値を使用すると、複数の IP フェイルオーバー設定が同じクラスター内に存在できるようになります。デフォルトのオフセットは
0
で、許可される範囲は0
から255
までです。 - 7
- 作成するレプリカの数です。これは、IP フェイルオーバーデプロイメント設定の
spec.replicas
値に一致する必要があります。デフォルト値は2
です。 - 8
iptables
チェーンの名前であり、iptables
ルールを自動的に追加し、VRRP トラフィックをオンにすることを許可するために使用されます。この値が設定されていない場合、iptables
ルールは追加されません。チェーンが存在しない場合は作成されず、Keepalived はユニキャストモードで動作します。デフォルトはINPUT
です。- 9
- 状態が変更されるたびに実行されるスクリプトの Pod ファイルシステム内の完全パス名です。
- 10
- アプリケーションが動作していることを確認するために定期的に実行されるスクリプトの Pod ファイルシステム内の完全パス名です。
- 11
- 新たな優先度の高いホストを処理するためのストラテジーです。デフォルト値は
preempt_delay 300
で、優先順位の低いマスターが VIP を保持する場合に、Keepalived インスタンスが VIP を 5 分後に引き継ぎます。 - 12
- check スクリプトが実行される期間 (秒単位) です。デフォルト値は
2
です。 - 13
- デプロイメントを作成する前にプルシークレットを作成します。作成しない場合には、デプロイメントの作成時にエラーが発生します。