第2章 Operator について
2.1. Operator について
概念的に言うと、Operator は人間の運用上のナレッジを使用し、これをコンシューマーと簡単に共有できるソフトウェアにエンコードします。
Operator は、ソフトウェアの他の部分を実行する運用上の複雑さを軽減するソフトウェアの特定の部分で設定されます。Operator はソフトウェアベンダーのエンジニアリングチームの拡張機能のように動作し、(OpenShift Container Platform などの) Kubernetes 環境を監視し、その最新状態に基づいてリアルタイムの意思決定を行います。高度な Operator はアップグレードをシームレスに実行し、障害に自動的に対応するように設計されており、時間の節約のためにソフトウェアのバックアッププロセスを省略するなどのショートカットを実行することはありません。
技術的に言うと、Operator は Kubernetes アプリケーションをパッケージ化し、デプロイし、管理する方法です。
Kubernetes アプリケーションは、Kubernetes にデプロイされ、Kubernetes API および kubectl
または oc
ツールを使用して管理されるアプリケーションです。Kubernetes を最大限に活用するには、Kubernetes 上で実行されるアプリケーションを提供し、管理するために拡張できるように一連の総合的な API が必要です。Operator は、Kubernetes 上でこのタイプのアプリケーションを管理するランタイムと見なすことができます。
2.1.1. Operator を使用する理由
Operator は以下を提供します。
- インストールおよびアップグレードの反復性。
- すべてのシステムコンポーネントの継続的なヘルスチェック。
- OpenShift コンポーネントおよび ISV コンテンツの OTA (Over-the-air) 更新。
- フィールドエンジニアの知識を凝縮し、1 人や 2 人だけでなくすべてのユーザーに広める場所。
- Kubernetes にデプロイする理由
- Kubernetes (延長線上で考えると OpenShift Container Platform も含まれる) には、シークレットの処理、負荷分散、サービスの検出、自動スケーリングなどの、オンプレミスおよびクラウドプロバイダーで機能する、複雑な分散システムをビルドするために必要なすべてのプリミティブが含まれます。
- アプリケーションを Kubernetes API および
kubectl
ツールで管理する理由 -
これらの API は機能的に充実しており、すべてのプラットフォームのクライアントを持ち、クラスターのアクセス制御/監査機能にプラグインします。Operator は Kubernetes の拡張メカニズム、カスタムリソース定義 (CRD、Custom Resource Definition ) を使用するため、
MongoDB
など のカスタムオブジェクトは、ビルトインされたネイティブ Kubernetes オブジェクトのように表示され、機能します。 - Operator とサービスブローカーとの比較
- サービスブローカーは、アプリケーションのプログラムによる検出およびデプロイメントを行うための 1 つの手段です。ただし、これは長期的に実行されるプロセスではないため、アップグレード、フェイルオーバー、またはスケーリングなどの Day 2 オペレーションを実行できません。カスタマイズおよびチューニング可能なパラメーターはインストール時に提供されるのに対し、Operator はクラスターの最新の状態を常に監視します。クラスター外のサービスを使用する場合は、Operator もこれらのクラスター外のサービスに使用できますが、これらをサービスブローカーで使用できます。
2.1.2. Operator Framework
Operator Framework は、上記のカスタマーエクスペリエンスに関連して提供されるツールおよび機能のファミリーです。これは、コードを作成するためだけにあるのではなく、Operator のテスト、実行、および更新などの重要な機能を実行します。Operator Framework コンポーネントは、これらの課題に対応するためのオープンソースツールで構成されています。
- Operator SDK
- Operator SDK は Kubernetes API の複雑性を把握していなくても、それぞれの専門知識に基づいて独自の Operator のブートストラップ、ビルド、テストおよびパッケージ化を実行できるよう Operator の作成者を支援します。
- Operator Lifecycle Manager
- Operator Lifecycle Manager (OLM) は、クラスター内の Operator のインストール、アップグレード、ロールベースのアクセス制御 (RBAC) を制御します。OpenShift Container Platform 4.16 では、デフォルトでデプロイされます。
- Operator レジストリー
- Operator レジストリーは、クラスターで作成するためのクラスターサービスバージョン (Cluster Service Version、CSV) およびカスタムリソース定義 (CRD) を保存し、パッケージおよびチャネルに関する Operator メタデータを保存します。これは Kubernetes または OpenShift クラスターで実行され、この Operator カタログデータを OLM に指定します。
- OperatorHub
- OperatorHub は、クラスター管理者がクラスター上にインストールする Operator を検出し、選択するための Web コンソールです。OpenShift Container Platform ではデフォルトでデプロイされます。
これらのツールは組み立て可能なツールとして設計されているため、役に立つと思われるツールを使用できます。
2.1.3. Operator 成熟度モデル
Operator 内にカプセル化されている管理ロジックの複雑さのレベルはさまざまです。また、このロジックは通常 Operator によって表されるサービスのタイプによって大きく変わります。
ただし、大半の Operator に含まれる特定の機能セットは、Operator のカプセル化された操作の成熟度の規模を一般化することができます。このため、以下の Operator 成熟度モデルは、Operator の一般的な Day 2 オペレーションに関する 5 つのフェーズの成熟度を定義しています。
図2.1 Operator 成熟度モデル
上記のモデルでは、これらの機能を Operator SDK の Helm、Go、および Ansible 機能で最適に開発する方法も示します。