5.10. Cluster Network Operator (CNO) の設定


クラスターネットワークの設定は、Cluster Network Operator (CNO) 設定の一部として指定され、cluster という名前のカスタムリソース (CR) オブジェクトに保存されます。CR は operator.openshift.io API グループの Network API のフィールドを指定します。

CNO 設定は、Network.config.openshift.io API グループの Network API からクラスターのインストール時に以下のフィールドを継承し、これらのフィールドは変更できません。

clusterNetwork
Pod IP アドレスの割り当てに使用する IP アドレスプール。
serviceNetwork
サービスの IP アドレスプール。
defaultNetwork.type
OpenShift SDN や OVN-Kubernetes などのクラスターネットワークプラグイン。

defaultNetwork オブジェクトのフィールドを cluster という名前の CNO オブジェクトに設定することにより、クラスターのクラスターネットワークプラグイン設定を指定できます。

5.10.1. Cluster Network Operator 設定オブジェクト

Cluster Network Operator (CNO) のフィールドは以下の表で説明されています。

表5.6 Cluster Network Operator 設定オブジェクト
フィールド説明

metadata.name

string

CNO オブジェクトの名前。この名前は常に cluster です。

spec.clusterNetwork

array

Pod ID アドレスの割り当て、サブネット接頭辞の長さのクラスター内の個別ノードへの割り当てに使用される IP アドレスのブロックを指定するリストです。以下に例を示します。

spec:
  clusterNetwork:
  - cidr: 10.128.0.0/19
    hostPrefix: 23
  - cidr: 10.128.32.0/19
    hostPrefix: 23

マニフェストを作成する前に、このフィールドを install-config.yaml ファイルでのみカスタマイズすることができます。この値は、マニフェストファイルでは読み取り専用です。

spec.serviceNetwork

array

サービスの IP アドレスのブロック。OpenShift SDN および OVN-Kubernetes ネットワークプラグインは、サービスネットワークの単一 IP アドレスブロックのみをサポートします。以下に例を示します。

spec:
  serviceNetwork:
  - 172.30.0.0/14

マニフェストを作成する前に、このフィールドを install-config.yaml ファイルでのみカスタマイズすることができます。この値は、マニフェストファイルでは読み取り専用です。

spec.defaultNetwork

object

クラスターネットワークのネットワークプラグインを設定します。

spec.kubeProxyConfig

object

このオブジェクトのフィールドは、kube-proxy 設定を指定します。OVN-Kubernetes クラスターネットワークプラグインを使用している場合、kube-proxy 設定は機能しません。

重要

複数のネットワークにオブジェクトをデプロイする必要があるクラスターの場合は、install-config.yaml ファイルで定義されている各ネットワークタイプの clusterNetwork.hostPrefix パラメーターに、必ず同じ値を指定してください。clusterNetwork.hostPrefix パラメーターにそれぞれ異なる値を設定すると、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインに影響が及び、異なるノード間のオブジェクトトラフィックをプラグインが効果的にルーティングできなくなる可能性があります。

defaultNetwork オブジェクト設定

defaultNetwork オブジェクトの値は、以下の表で定義されます。

表5.7 defaultNetwork オブジェクト
フィールド説明

type

string

OpenShiftSDN または OVNKubernetes のいずれか。Red Hat OpenShift Networking ネットワークプラグインは、インストール中に選択されます。この値は、クラスターのインストール後は変更できません。

注記

OpenShift Container Platform は、デフォルトで OVN-Kubernetes ネットワークプラグインを使用します。

openshiftSDNConfig

object

このオブジェクトは、OpenShift SDN ネットワークプラグインに対してのみ有効です。

ovnKubernetesConfig

object

このオブジェクトは、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインに対してのみ有効です。

OpenShift SDN ネットワークプラグインの設定

以下の表では、OpenShift SDN ネットワークプラグインの設定フィールドを説明します。

表5.8 openshiftSDNConfig オブジェクト
フィールド説明

mode

string

OpenShift SDN のネットワーク分離モードを設定します。デフォルト値は NetworkPolicy です。

Multitenant および Subnet の値は、OpenShift Container Platform 3.x との後方互換性を維持するために利用できますが、その使用は推奨されていません。この値は、クラスターのインストール後は変更できません。

mtu

integer

VXLAN オーバーレイネットワークの最大転送単位 (MTU)。これは、プライマリーネットワークインターフェイスの MTU に基づいて自動的に検出されます。通常、検出された MTU を上書きする必要はありません。

自動検出した値が予想される値ではない場合は、ノード上のプライマリーネットワークインターフェイスの MTU が正しいことを確認します。このオプションを使用して、ノード上のプライマリーネットワークインターフェイスの MTU 値を変更することはできません。

クラスターで異なるノードに異なる MTU 値が必要な場合、この値をクラスター内の最小の MTU 値よりも 50 小さく設定する必要があります。たとえば、クラスター内の一部のノードでは MTU が 9001 であり、MTU が 1500 のクラスターもある場合には、この値を 1450 に設定する必要があります。

この値は、クラスターのインストール後は変更できません。

vxlanPort

integer

すべての VXLAN パケットに使用するポート。デフォルト値は 4789 です。この値は、クラスターのインストール後は変更できません。

別の VXLAN ネットワークの一部である既存ノードと共に仮想化環境で実行している場合は、これを変更する必要がある可能性があります。たとえば、OpenShift SDN オーバーレイを VMware NSX-T 上で実行する場合は、両方の SDN が同じデフォルトの VXLAN ポート番号を使用するため、VXLAN の別のポートを選択する必要があります。

Amazon Web Services (AWS) では、VXLAN にポート 9000 とポート 9999 間の代替ポートを選択できます。

OpenShift SDN 設定の例

defaultNetwork:
  type: OpenShiftSDN
  openshiftSDNConfig:
    mode: NetworkPolicy
    mtu: 1450
    vxlanPort: 4789

OVN-Kubernetes ネットワークプラグインの設定

次の表では、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインの設定フィールドを説明します。

表5.9 ovnKubernetesConfig オブジェクト
フィールド説明

mtu

integer

Geneve (Generic Network Virtualization Encapsulation) オーバーレイネットワークの MTU (maximum transmission unit)。これは、プライマリーネットワークインターフェイスの MTU に基づいて自動的に検出されます。通常、検出された MTU を上書きする必要はありません。

自動検出した値が予想される値ではない場合は、ノード上のプライマリーネットワークインターフェイスの MTU が正しいことを確認します。このオプションを使用して、ノード上のプライマリーネットワークインターフェイスの MTU 値を変更することはできません。

クラスターで異なるノードに異なる MTU 値が必要な場合、この値をクラスター内の最小の MTU 値よりも 100 小さく設定する必要があります。たとえば、クラスター内の一部のノードでは MTU が 9001 であり、MTU が 1500 のクラスターもある場合には、この値を 1400 に設定する必要があります。

genevePort

integer

すべての Geneve パケットに使用するポート。デフォルト値は 6081 です。この値は、クラスターのインストール後は変更できません。

policyAuditConfig

object

ネットワークポリシー監査ロギングをカスタマイズする設定オブジェクトを指定します。指定されていない場合は、デフォルトの監査ログ設定が使用されます。

gatewayConfig

object

オプション: Egress トラフィックのノードゲートウェイへの送信方法をカスタマイズするための設定オブジェクトを指定します。

注記

Egress トラフィックの移行中は、Cluster Network Operator (CNO) が変更を正常にロールアウトするまで、ワークロードとサービストラフィックに多少の中断が発生することが予想されます。

v4InternalSubnet

既存のネットワークインフラストラクチャーが 100.64.0.0/16 IPv4 サブネットと重複している場合は、OVN-Kubernetes による内部使用のために別の IP アドレス範囲を指定できます。IP アドレス範囲が、OpenShift Container Platform インストールで使用される他のサブネットと重複しないようにする必要があります。IP アドレス範囲は、クラスターに追加できるノードの最大数より大きくする必要があります。たとえば、clusterNetwork.cidr 値が 10.128.0.0/14 で、clusterNetwork.hostPrefix 値が /23 の場合、ノードの最大数は 2^(23-14)=512 です。

このフィールドは、インストール後に変更できません。

デフォルト値は 100.64.0.0/16 です。

v6InternalSubnet

既存のネットワークインフラストラクチャーが fd98::/48 IPv6 サブネットと重複する場合は、OVN-Kubernetes による内部使用のために別の IP アドレス範囲を指定できます。IP アドレス範囲が、OpenShift Container Platform インストールで使用される他のサブネットと重複しないようにする必要があります。IP アドレス範囲は、クラスターに追加できるノードの最大数より大きくする必要があります。

このフィールドは、インストール後に変更できません。

デフォルト値は fd98::/48 です。

注記

IBM Cloud にクラスターをインストールする場合、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインの IPsec はサポートされません。

表5.10 policyAuditConfig object
フィールド説明

rateLimit

integer

ノードごとに毎秒生成されるメッセージの最大数。デフォルト値は、1 秒あたり 20 メッセージです。

maxFileSize

integer

監査ログの最大サイズ (バイト単位)。デフォルト値は 50000000 (50MB) です。

maxLogFiles

integer

保持されるログファイルの最大数。

比較先

string

以下の追加の監査ログターゲットのいずれかになります。

libc
ホスト上の journald プロセスの libc syslog() 関数。
udp:<host>:<port>
syslog サーバー。<host>:<port> を syslog サーバーのホストおよびポートに置き換えます。
unix:<file>
<file> で指定された Unix ドメインソケットファイル。
null
監査ログを追加のターゲットに送信しないでください。

syslogFacility

string

RFC5424 で定義される kern などの syslog ファシリティー。デフォルト値は local0 です。

表5.11 gatewayConfig オブジェクト
フィールド説明

routingViaHost

boolean

Pod からホストネットワークスタックへの Egress トラフィックを送信するには、このフィールドを true に設定します。インストールおよびアプリケーションがカーネルルーティングテーブルに手動設定されたルートに依存するなど非常に特化されている場合には、Egress トラフィックをホストネットワークスタックにルーティングすることを推奨します。デフォルトでは、Egress トラフィックは OVN で処理され、クラスターを終了するために処理され、トラフィックはカーネルルーティングテーブルの特殊なルートによる影響を受けません。デフォルト値は false です。

このフィールドで、Open vSwitch ハードウェアオフロード機能との対話が可能になりました。このフィールドを true に設定すると、egress トラフィックがホストネットワークスタックで処理されるため、パフォーマンス的に、オフロードによる利点は得られません。

IPsec が有効な OVN-Kubernetes 設定の例

defaultNetwork:
  type: OVNKubernetes
  ovnKubernetesConfig:
    mtu: 1400
    genevePort: 6081

kubeProxyConfig オブジェクト設定

kubeProxyConfig オブジェクトの値は以下の表で定義されます。

表5.12 kubeProxyConfig オブジェクト
フィールド説明

iptablesSyncPeriod

string

iptables ルールの更新期間。デフォルト値は 30s です。有効な接尾辞には、sm、および h などが含まれ、これらについては、Go time パッケージ ドキュメントで説明されています。

注記

OpenShift Container Platform 4.3 以降で強化されたパフォーマンスの向上により、iptablesSyncPeriod パラメーターを調整する必要はなくなりました。

proxyArguments.iptables-min-sync-period

array

iptables ルールを更新する前の最小期間。このフィールドにより、更新の頻度が高くなり過ぎないようにできます。有効な接尾辞には、sm、および h などが含まれ、これらについては、Go time パッケージ で説明されています。デフォルト値:

kubeProxyConfig:
  proxyArguments:
    iptables-min-sync-period:
    - 0s
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