23.2. 追加のネットワークの設定
クラスター管理者は、クラスターの追加のネットワークを設定できます。以下のネットワークタイプに対応しています。
23.2.1. 追加のネットワークを管理するためのアプローチ
OpenShift Container Platform で追加のネットワークのライフサイクルを管理するには、Cluster Network Operator (CNO) 設定を変更するか、YAML マニフェストを適用します。各アプローチは同時に使用できず、追加のネットワークを管理する場合に 1 つのアプローチしか使用できません。どちらのアプローチでも、追加のネットワークは、お客様が設定した Container Network Interface (CNI) プラグインによって管理されます。2 つの異なるアプローチを以下にまとめます。
-
Cluster Network Operator (CNO) 設定の変更: CNO を介して追加のネットワークを設定できるのは、クラスター管理者だけです。CNO は
NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを自動的に作成および管理します。このアプローチを使用すると、install-config
の設定により、インストール時にNetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを定義できます。 -
YAML マニフェストを適用する:
NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを作成することで、追加のネットワークを直接管理できます。このアプローチでは、CNO 設定を変更する場合と比較して、設定に関してよりきめ細かい制御と柔軟性が得られます。
OVN Kubernetes を使用して、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) に複数のネットワークインターフェイスを持つ OpenShift Container Platform ノードをデプロイすると、セカンダリーインターフェイスの DNS 設定がプライマリーインターフェイスの DNS 設定よりも優先される場合があります。この場合、セカンダリーインターフェイスに接続されているサブネット ID の DNS ネームサーバーを削除してください。
$ openstack subnet set --dns-nameserver 0.0.0.0 <subnet_id>
23.2.2. 追加のネットワークの IP アドレス割り当て
追加のネットワークでは、Dynamic Host Configuration Protocol (DHCP) や静的割り当てなど、さまざまな割り当て方法をサポートする IP アドレス管理 (IPAM) CNI プラグインを使用して IP アドレスを割り当てることができます。
IP アドレスの動的割り当てを担当する DHCP IPAM CNI プラグインは、2 つの異なるコンポーネントを使用して動作します。
- CNI プラグイン: Kubernetes ネットワークスタックと統合して IP アドレスを要求および解放する役割を担います。
- DHCP IPAM CNI デーモン: 環境内の既存の DHCP サーバーと連携して IP アドレス割り当て要求を処理する DHCP イベントのリスナー。このデーモン自体は DHCP サーバーでは ありません。
IPAM 設定で type: dhcp
を必要とするネットワークの場合は、次の点を確認してください。
- DHCP サーバーが環境内で利用可能かつ実行されている。DHCP サーバーはクラスターの外部にあり、お客様の既存のネットワークインフラストラクチャーの一部である必要があります。
- DHCP サーバーが、ノードに IP アドレスを提供するように適切に設定されている。
環境内で DHCP サーバーが利用可能でない場合は、代わりに Whereabouts IPAM CNI プラグインを使用することを推奨します。Whereabouts CNI は、外部 DHCP サーバーを必要とせずに同様の IP アドレス管理機能を提供します。
外部 DHCP サーバーがない場合、または静的 IP アドレス管理が望ましい場合は、Whereabouts CNI プラグインを使用してください。Whereabouts プラグインには、古くなった IP アドレスの割り当てを管理するためのリコンサイラーデーモンが含まれています。
コンテナーの有効期間中、DHCP リースを定期的に更新する必要があるため、別のデーモンである DHCP IPAM CNI デーモンが必要です。DHCP IPAM CNI デーモンをデプロイするには、追加のネットワーク設定の一部としてこのデーモンのデプロイをトリガーするように Cluster Network Operator (CNO) 設定を変更します。
23.2.3. ネットワーク追加割り当ての設定
追加のネットワークは、k8s.cni.cncf.io
API グループの NetworkAttachmentDefinition
API を使用して設定されます。
NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトには、プロジェクト管理ユーザーがアクセスできるので、機密情報やシークレットを保存しないでください。
API の設定は、以下の表で説明されています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
| 追加のネットワークの名前です。 |
|
| オブジェクトが関連付けられる namespace。 |
|
| JSON 形式の CNI プラグイン設定。 |
23.2.3.1. Cluster Network Operator による追加ネットワークの設定
追加のネットワーク割り当ての設定は、Cluster Network Operator (CNO) の設定の一部として指定します。
以下の YAML は、CNO で追加のネットワークを管理するための設定パラメーターを記述しています。
Cluster Network Operator (CNO) の設定
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: # ... additionalNetworks: 1 - name: <name> 2 namespace: <namespace> 3 rawCNIConfig: |- 4 { ... } type: Raw
- 1
- 1 つまたは複数の追加ネットワーク設定の配列。
- 2
- 作成している追加ネットワーク割り当ての名前。名前は指定された
namespace
内で一意である必要があります。 - 3
- ネットワークの割り当てを作成する namespace。値を指定しない場合、
default
の namespace が使用されます。重要OVN-Kubernetes ネットワークプラグインの namespace の問題を阻止するには、追加のネットワークアタッチメントに
default
という名前を付けないでください。この namespace は、default
の追加のネットワークアタッチメント用に予約されているためです。 - 4
- JSON 形式の CNI プラグイン設定。
23.2.3.2. YAML マニフェストからの追加ネットワークの設定
追加ネットワークの設定は、以下の例のように YAML 設定ファイルから指定します。
apiVersion: k8s.cni.cncf.io/v1 kind: NetworkAttachmentDefinition metadata: name: <name> 1 spec: config: |- 2 { ... }
23.2.4. 追加のネットワークタイプの設定
次のセクションでは、追加のネットワークの具体的な設定フィールドを説明します。
23.2.4.1. ブリッジネットワークの追加設定
以下のオブジェクトは、ブリッジ CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
| IPAM CNI プラグインの設定オブジェクト。プラグインは、アタッチメント定義への IP アドレスの割り当てを管理します。 |
|
|
オプション: 使用する仮想ブリッジの名前を指定します。ブリッジインターフェイスがホストに存在しない場合は、これが作成されます。デフォルト値は |
|
|
オプション: 仮想ネットワークから外すトラフィックの IP マスカレードを有効にするには、 |
|
|
オプション: IP アドレスをブリッジに割り当てるには |
|
|
オプション: ブリッジを仮想ネットワークのデフォルトゲートウェイとして設定するには、 |
|
|
オプション: 仮想ブリッジの事前に割り当てられた IP アドレスの割り当てを許可するには、 |
|
|
オプション: 仮想ブリッジが受信時に使用した仮想ポートでイーサネットフレームを送信できるようにするには、 |
|
|
オプション: ブリッジで無作為検出モード (Promiscuous Mode) を有効にするには、 |
|
| オプション: 仮想 LAN (VLAN) タグを整数値として指定します。デフォルトで、VLAN タグは割り当てません。 |
|
|
オプション: デフォルトの VLAN をブリッジに接続されている |
|
| オプション: 最大転送単位 (MTU) を指定された値に設定します。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。 |
|
|
オプション: コンテナー側の |
|
|
オプション: MAC スプーフィングチェックを有効にして、コンテナーから発信されるトラフィックをインターフェイスの MAC アドレスに制限します。デフォルト値は |
VLAN パラメーターは、veth
のホスト側に VLAN タグを設定し、ブリッジインターフェイスで vlan_filtering
機能を有効にします。
L2 ネットワークのアップリンクを設定するには、以下のコマンドを使用してアップリンクインターフェイスで vlan を許可する必要があります。
$ bridge vlan add vid VLAN_ID dev DEV
23.2.4.1.1. ブリッジ設定の例
以下の例では、bridge-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "bridge-net", "type": "bridge", "isGateway": true, "vlan": 2, "ipam": { "type": "dhcp" } }
23.2.4.2. ホストデバイスの追加ネットワークの設定
device
、hwaddr
、kernelpath
、または pciBusID
のいずれかのパラメーターを設定してネットワークデバイスを指定します。
以下のオブジェクトは、ホストデバイス CNI プラグインの設定パラメーターを説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
|
オプション: |
|
| オプション: デバイスハードウェアの MAC アドレス。 |
|
|
オプション: |
|
|
オプション: |
23.2.4.2.1. ホストデバイス設定例
以下の例では、hostdev-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "hostdev-net", "type": "host-device", "device": "eth1" }
23.2.4.3. VLAN 追加ネットワークの設定
以下のオブジェクトは、VLAN CNI プラグインの設定パラメーターを説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
|
ネットワーク割り当てに関連付けるイーサネットインターフェイス。 |
|
| vlan の ID を設定します。 |
|
| IPAM CNI プラグインの設定オブジェクト。プラグインは、アタッチメント定義への IP アドレスの割り当てを管理します。 |
|
| オプション: 最大転送単位 (MTU) を指定された値に設定します。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。 |
|
| オプション: 返す DNS 情報 (DNS ネームサーバーの優先順位リストなど)。 |
|
| オプション: マスターインターフェイスが、コンテナーネットワーク namespace とメインネットワーク namespace のどちらにあるかを指定します。 |
23.2.4.3.1. vlan 設定例
以下の例では、ipvlan-net
という名前の追加ネットワークを設定します。
{ "name": "vlan-net", "cniVersion": "0.3.1", "type": "vlan", "master": "eth0", "mtu": 1500, "vlanId": 5, "linkInContainer": false, "ipam": { "type": "host-local", "subnet": "10.1.1.0/24" }, "dns": { "nameservers": [ "10.1.1.1", "8.8.8.8" ] } }
23.2.4.4. IPVLAN 追加ネットワークの設定
以下のオブジェクトは、IPVLAN CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
| IPAM CNI プラグインの設定オブジェクト。プラグインは、アタッチメント定義への IP アドレスの割り当てを管理します。これは、プラグインが連鎖している場合を除き必要です。 |
|
|
オプション: 仮想ネットワークの操作モードを指定します。この値は、 |
|
|
オプション: ネットワーク割り当てに関連付けるイーサネットインターフェイスを指定します。 |
|
| オプション: 最大転送単位 (MTU) を指定された値に設定します。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。 |
-
ipvlan
オブジェクトは、仮想インターフェイスがmaster
インターフェイスと通信することを許可しません。したがって、コンテナーはipvlan
インターフェイスを使用してホストに到達できなくなります。コンテナーが、Precision Time Protocol (PTP
) をサポートするネットワークなど、ホストへの接続を提供するネットワークに参加していることを確認してください。 -
1 つのの
master
インターフェイスを、macvlan
とipvlan
の両方を使用するように同時に設定することはできません。 -
インターフェイスに依存できない IP 割り当てスキームの場合、
ipvlan
プラグインは、このロジックを処理する以前のプラグインと連鎖させることができます。master
が省略された場合、前の結果にはスレーブにするipvlan
プラグインのインターフェイス名が 1 つ含まれていなければなりません。ipam
が省略された場合、ipvlan
インターフェイスの設定には前の結果が使用されます。
23.2.4.4.1. IPVLAN 設定例
以下の例では、ipvlan-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "ipvlan-net", "type": "ipvlan", "master": "eth1", "mode": "l3", "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "192.168.10.10/24" } ] } }
23.2.4.5. MACVLAN 追加ネットワークの設定
以下のオブジェクトは、MAC 仮想 LAN (MACVLAN) Container Network Interface (CNI) プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
| IPAM CNI プラグインの設定オブジェクト。プラグインは、アタッチメント定義への IP アドレスの割り当てを管理します。 |
|
|
オプション: 仮想ネットワークのトラフィックの可視性を設定します。 |
|
| オプション: 新しく作成された macvlan インターフェイスに関連付けるホストネットワークインターフェイス。値が指定されていない場合は、デフォルトのルートインターフェイスが使用されます。 |
|
| オプション: 指定された値への最大転送単位 (MTU)。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。 |
プラグイン設定の master
キーを指定する場合は、競合の可能性を回避するために、プライマリーネットワークプラグインに関連付けられているものとは異なる物理ネットワークインターフェイスを使用してください。
23.2.4.5.1. macvlan 設定の例
以下の例では、macvlan-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "macvlan-net", "type": "macvlan", "master": "eth1", "mode": "bridge", "ipam": { "type": "dhcp" } }
23.2.4.6. OVN-Kubernetes 追加ネットワークの設定
Red Hat OpenShift Networking OVN-Kubernetes ネットワークプラグインを使用すると、Pod のセカンダリーネットワークインターフェイスを設定できます。セカンダリーネットワークインターフェイスを設定するには、NetworkAttachmentDefinition
カスタムリソース定義 (CRD) で設定を定義する必要があります。
OVN-Kubernetes 追加ネットワークの設定は、テクノロジープレビュー機能のみです。テクノロジープレビュー機能は、Red Hat 製品サポートのサービスレベルアグリーメント (SLA) の対象外であり、機能的に完全ではない場合があります。Red Hat は、実稼働環境でこれらを使用することを推奨していません。テクノロジープレビュー機能は、最新の製品機能をいち早く提供して、開発段階で機能のテストを行い、フィードバックを提供していただくことを目的としています。
Red Hat のテクノロジープレビュー機能のサポート範囲に関する詳細は、テクノロジープレビュー機能のサポート範囲 を参照してください。
Pod およびマルチネットワークポリシーの作成は、ノード内の OVN-Kubernetes コントロールプレーンエージェントが関連する network-attachment-definition
CR を処理するまで、保留状態のままになる場合があります。
次のセクションでは、OVN-Kubernetes で現在セカンダリーネットワークに許可されている各トポロジーの設定例を示します。
ネットワーク名は一意である必要があります。たとえば、同じネットワークを参照する異なる設定を持つ複数の NetworkAttachmentDefinition
CRD の作成はサポートされていません。
23.2.4.6.1. OVN-Kubernetes ネットワークプラグインの JSON 設定テーブル
次の表は、OVN-Kubernetes CNI ネットワークプラグインの設定パラメーターを示しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。必要な値は |
|
|
ネットワークの名前。これらのネットワークには namespace が使用されていません。たとえば、 |
|
|
設定する CNI プラグインの名前。必要な値は |
|
|
ネットワークのトポロジー設定。必要な値は |
|
| クラスター全体のネットワークに使用するサブネット。
|
|
|
最大転送単位 (MTU) を指定された値。デフォルト値 |
|
|
この設定が含まれるネットワーク接続定義オブジェクトのメタデータ |
|
| CIDR と IP のコンマ区切りリスト。IP は割り当て可能な IP プールから削除され、Pod に渡されることはありません。省略した場合、ネットワークを実装する論理スイッチはレイヤー 2 通信のみを提供し、ユーザーは Pod の IP を設定する必要があります。ポートセキュリティーは、MAC スプーフィングのみを防止します。 |
23.2.4.6.2. スイッチドトポロジーの設定
スイッチド (レイヤー 2) トポロジーネットワークは、クラスター全体の論理スイッチを介してワークロードを相互接続します。この設定は、IPv6 およびデュアルスタックデプロイメントに使用できます。
レイヤー 2 スイッチドトポロジーネットワークでは、クラスター内の Pod 間のデータパケットの転送のみが許可されます。
次の NetworkAttachmentDefinition
カスタムリソース定義 (CRD) YAML は、スイッチドセカンダリーネットワークを設定するために必要なフィールドを記述しています。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "l2-network", "type": "ovn-k8s-cni-overlay", "topology":"layer2", "subnets": "10.100.200.0/24", "mtu": 1300, "netAttachDefName": "ns1/l2-network", "excludeSubnets": "10.100.200.0/29" }
23.2.4.6.3. 追加ネットワーク用の Pod の設定
k8s.v1.cni.cncf.io/networks
アノテーションを使用して、セカンダリーネットワーク割り当てを指定する必要があります。
次の例では、このガイドに示されている割り当て設定ごとに 1 つずつ、2 つのセカンダリー割り当てを持つ Pod をプロビジョニングします。
apiVersion: v1 kind: Pod metadata: annotations: k8s.v1.cni.cncf.io/networks: l2-network name: tinypod namespace: ns1 spec: containers: - args: - pause image: k8s.gcr.io/e2e-test-images/agnhost:2.36 imagePullPolicy: IfNotPresent name: agnhost-container
23.2.4.6.4. 静的 IP アドレスを使用して Pod を設定する
次の例では、静的 IP アドレスを使用して Pod をプロビジョニングします。
- レイヤー 2 割り当てに対する Pod のセカンダリーネットワーク割り当ての IP アドレスのみを指定できます。
- Pod の静的 IP アドレスを指定できるのは、割り当て設定にサブネットが含まれていない場合のみです。
apiVersion: v1 kind: Pod metadata: annotations: k8s.v1.cni.cncf.io/networks: '[ { "name": "l2-network", 1 "mac": "02:03:04:05:06:07", 2 "interface": "myiface1", 3 "ips": [ "192.0.2.20/24" ] 4 } ]' name: tinypod namespace: ns1 spec: containers: - args: - pause image: k8s.gcr.io/e2e-test-images/agnhost:2.36 imagePullPolicy: IfNotPresent name: agnhost-container
23.2.5. 追加ネットワークの IP アドレス割り当ての設定
IPAM (IP アドレス管理) Container Network Interface (CNI) プラグインは、他の CNI プラグインの IP アドレスを提供します。
以下の IP アドレスの割り当てタイプを使用できます。
- 静的割り当て。
- DHCP サーバーを使用した動的割り当て。指定する DHCP サーバーは、追加のネットワークから到達可能である必要があります。
- Whereabouts IPAM CNI プラグインを使用した動的割り当て。
23.2.5.1. 静的 IP アドレス割り当ての設定
以下の表は、静的 IP アドレスの割り当ての設定を説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
IPAM のアドレスタイプ。値 |
|
| 仮想インターフェイスに割り当てる IP アドレスを指定するオブジェクトの配列。IPv4 と IPv6 の IP アドレスの両方がサポートされます。 |
|
| Pod 内で設定するルートを指定するオブジェクトの配列です。 |
|
| オプション: DNS の設定を指定するオブジェクトの配列です。 |
addresses
の配列には、以下のフィールドのあるオブジェクトが必要です。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
指定する IP アドレスおよびネットワーク接頭辞。たとえば、 |
|
| Egress ネットワークトラフィックをルーティングするデフォルトのゲートウェイ。 |
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CIDR 形式の IP アドレス範囲 ( |
|
| ネットワークトラフィックがルーティングされるゲートウェイ。 |
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
| DNS クエリーの送信先となる 1 つ以上の IP アドレスの配列。 |
|
|
ホスト名に追加するデフォルトのドメイン。たとえば、ドメインが |
|
|
DNS ルックアップのクエリー時に非修飾ホスト名に追加されるドメイン名の配列 (例: |
静的 IP アドレス割り当ての設定例
{ "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "191.168.1.7/24" } ] } }
23.2.5.2. 動的 IP アドレス (DHCP) 割り当ての設定
以下の JSON は、DHCP を使用した動的 IP アドレスの割り当ての設定を説明しています。
Pod は、作成時に元の DHCP リースを取得します。リースは、クラスターで実行している最小限の DHCP サーバーデプロイメントで定期的に更新する必要があります。
DHCP サーバーのデプロイメントをトリガーするには、以下の例にあるように Cluster Network Operator 設定を編集して shim ネットワーク割り当てを作成する必要があります。
shim ネットワーク割り当ての定義例
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: additionalNetworks: - name: dhcp-shim namespace: default type: Raw rawCNIConfig: |- { "name": "dhcp-shim", "cniVersion": "0.3.1", "type": "bridge", "ipam": { "type": "dhcp" } } # ...
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
IPAM のアドレスタイプ。値 |
動的 IP アドレス (DHCP) 割り当ての設定例
{ "ipam": { "type": "dhcp" } }
23.2.5.3. Whereabouts を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定
Whereabouts CNI プラグインにより、DHCP サーバーを使用せずに IP アドレスを追加のネットワークに動的に割り当てることができます。
以下の表は、Whereabouts を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定について説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
IPAM のアドレスタイプ。値 |
|
| IP アドレスと範囲を CIDR 表記。IP アドレスは、この範囲内のアドレスから割り当てられます。 |
|
| オプション: CIDR 表記の IP アドレスと範囲 (0 個以上) のリスト。除外されたアドレス範囲内の IP アドレスは割り当てられません。 |
Whereabouts を使用する動的 IP アドレス割り当ての設定例
{ "ipam": { "type": "whereabouts", "range": "192.0.2.192/27", "exclude": [ "192.0.2.192/30", "192.0.2.196/32" ] } }
23.2.5.4. whereabouts-reconciler デーモンセットの作成
Whereabouts reconciler は、Whereabouts IP アドレス管理 (IPAM) ソリューションを使用して、クラスター内の Pod の動的 IP アドレス割り当てを管理します。これにより、各 Pod が指定の IP アドレス範囲から一意の IP アドレスを確実に取得します。また、Pod が削除またはスケールダウンされた場合の IP アドレスの解放も処理します。
NetworkAttachmentDefinition
カスタムリソース (CR) を使用して動的 IP アドレスを割り当てることもできます。
whereabouts-reconciler
デーモンセットは、Cluster Network Operator を通じて追加のネットワークを設定するときに自動的に作成されます。YAML マニフェストから追加のネットワークを設定する場合、これは自動的には作成されません。
whereabouts-reconciler
デーモンセットのデプロイをトリガーするには、Cluster Network Operator のカスタムリソース (CR) ファイルを編集して、whereabouts-shim
ネットワーク割り当てを手動で作成する必要があります。
whereabouts-reconciler
デーモンセットをデプロイするには、次の手順を使用します。
手順
以下のコマンドを実行して、
Network.operator.openshift.io
カスタムリソース (CR) を編集します。$ oc edit network.operator.openshift.io cluster
この例で展開されている YAML の
additionalNetworks
セクションを、カスタムリソース (CR) のspec
定義内に含めます。apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster # ... spec: additionalNetworks: - name: whereabouts-shim namespace: default rawCNIConfig: |- { "name": "whereabouts-shim", "cniVersion": "0.3.1", "type": "bridge", "ipam": { "type": "whereabouts" } } type: Raw # ...
- ファイルを保存し、テキストエディターを編集します。
次のコマンドを実行して、
whereabouts-reconciler
デーモンセットが正常にデプロイされたことを確認します。$ oc get all -n openshift-multus | grep whereabouts-reconciler
出力例
pod/whereabouts-reconciler-jnp6g 1/1 Running 0 6s pod/whereabouts-reconciler-k76gg 1/1 Running 0 6s pod/whereabouts-reconciler-k86t9 1/1 Running 0 6s pod/whereabouts-reconciler-p4sxw 1/1 Running 0 6s pod/whereabouts-reconciler-rvfdv 1/1 Running 0 6s pod/whereabouts-reconciler-svzw9 1/1 Running 0 6s daemonset.apps/whereabouts-reconciler 6 6 6 6 6 kubernetes.io/os=linux 6s
23.2.5.5. Whereabouts IP リコンサイラーのスケジュールの設定
Whereabouts IPAM CNI プラグインは、IP リコンサイラーを毎日実行します。このプロセスは、IP が枯渇して新しい Pod に IP が割り当てられなくなる状態を避けるために、完了せずに残っている IP 割り当てをクリーンアップします。
IP リコンサイラーを実行する頻度を変更するには、次の手順を使用します。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。 -
whereabouts-reconciler
デーモンセットがデプロイされており、whereabouts-reconciler
Pod が起動して実行されている。
手順
次のコマンドを実行して、IP リコンサイラー用の特定の cron 式を使用し、
openshift-multus
namespace にwhereabouts-config
という名前のConfigMap
オブジェクトを作成します。$ oc create configmap whereabouts-config -n openshift-multus --from-literal=reconciler_cron_expression="*/15 * * * *"
この cron 式は、IP リコンサイラーを 15 分ごとに実行するよう指定します。この式は固有の要件に基づいて調整してください。
注記whereabouts-reconciler
デーモンセットは、5 つのアスタリスクを含む cron 式パターンのみを使用できます。秒を表すために使用される 6 番目のアスタリスクは、現在サポートされていません。次のコマンドを実行して、
openshift-multus
namespace 内のwhereabouts-reconciler
デーモンセットおよび Pod に関連するリソースに関する情報を取得します。$ oc get all -n openshift-multus | grep whereabouts-reconciler
出力例
pod/whereabouts-reconciler-2p7hw 1/1 Running 0 4m14s pod/whereabouts-reconciler-76jk7 1/1 Running 0 4m14s pod/whereabouts-reconciler-94zw6 1/1 Running 0 4m14s pod/whereabouts-reconciler-mfh68 1/1 Running 0 4m14s pod/whereabouts-reconciler-pgshz 1/1 Running 0 4m14s pod/whereabouts-reconciler-xn5xz 1/1 Running 0 4m14s daemonset.apps/whereabouts-reconciler 6 6 6 6 6 kubernetes.io/os=linux 4m16s
次のコマンドを実行して、設定した間隔で
whereabouts-reconciler
Pod が IP リコンサイラーを実行していることを確認します。$ oc -n openshift-multus logs whereabouts-reconciler-2p7hw
出力例
2024-02-02T16:33:54Z [debug] event not relevant: "/cron-schedule/..2024_02_02_16_33_54.1375928161": CREATE 2024-02-02T16:33:54Z [debug] event not relevant: "/cron-schedule/..2024_02_02_16_33_54.1375928161": CHMOD 2024-02-02T16:33:54Z [debug] event not relevant: "/cron-schedule/..data_tmp": RENAME 2024-02-02T16:33:54Z [verbose] using expression: */15 * * * * 2024-02-02T16:33:54Z [verbose] configuration updated to file "/cron-schedule/..data". New cron expression: */15 * * * * 2024-02-02T16:33:54Z [verbose] successfully updated CRON configuration id "00c2d1c9-631d-403f-bb86-73ad104a6817" - new cron expression: */15 * * * * 2024-02-02T16:33:54Z [debug] event not relevant: "/cron-schedule/config": CREATE 2024-02-02T16:33:54Z [debug] event not relevant: "/cron-schedule/..2024_02_02_16_26_17.3874177937": REMOVE 2024-02-02T16:45:00Z [verbose] starting reconciler run 2024-02-02T16:45:00Z [debug] NewReconcileLooper - inferred connection data 2024-02-02T16:45:00Z [debug] listing IP pools 2024-02-02T16:45:00Z [debug] no IP addresses to cleanup 2024-02-02T16:45:00Z [verbose] reconciler success
23.2.6. Cluster Network Operator による追加ネットワーク割り当ての作成
Cluster Network Operator (CNO) は追加ネットワークの定義を管理します。作成する追加ネットワークを指定する場合、CNO は NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを自動的に作成します。
Cluster Network Operator が管理する NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトは編集しないでください。これを実行すると、追加ネットワークのネットワークトラフィックが中断する可能性があります。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてログインしている。
手順
オプション: 追加のネットワークの namespace を作成します。
$ oc create namespace <namespace_name>
CNO 設定を編集するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc edit networks.operator.openshift.io cluster
以下のサンプル CR のように、作成される追加ネットワークの設定を追加して、作成している CR を変更します。
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: # ... additionalNetworks: - name: tertiary-net namespace: namespace2 type: Raw rawCNIConfig: |- { "cniVersion": "0.3.1", "name": "tertiary-net", "type": "ipvlan", "master": "eth1", "mode": "l2", "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "192.168.1.23/24" } ] } }
- 変更を保存し、テキストエディターを終了して、変更をコミットします。
検証
以下のコマンドを実行して、CNO が
NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを作成していることを確認します。CNO がオブジェクトを作成するまでに遅延が生じる可能性があります。$ oc get network-attachment-definitions -n <namespace>
ここでは、以下のようになります。
<namespace>
- CNO の設定に追加したネットワーク割り当ての namespace を指定します。
出力例
NAME AGE test-network-1 14m
23.2.7. YAML マニフェストを適用した追加のネットワーク割り当ての作成
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてログインしている。
手順
以下の例のように、追加のネットワーク設定を含む YAML ファイルを作成します。
apiVersion: k8s.cni.cncf.io/v1 kind: NetworkAttachmentDefinition metadata: name: next-net spec: config: |- { "cniVersion": "0.3.1", "name": "work-network", "type": "host-device", "device": "eth1", "ipam": { "type": "dhcp" } }
追加のネットワークを作成するには、次のコマンドを入力します。
$ oc apply -f <file>.yaml
ここでは、以下のようになります。
<file>
- YAML マニフェストを含むファイルの名前を指定します。