24.12. ハードウェアオフロードの設定


クラスター管理者は、互換性のあるノードでハードウェアオフロードを設定して、データ処理パフォーマンスを向上させ、ホスト CPU の負荷を軽減できます。

24.12.1. ハードウェアのオフロードについて

Open vSwitch ハードウェアオフロードは、ネットワークタスクを CPU から迂回させ、ネットワークインターフェイスコントローラー上の専用プロセッサーにオフロードすることにより、ネットワークタスクを処理する方法です。その結果、クラスターは、データ転送速度の高速化、CPU ワークロードの削減、およびコンピューティングコストの削減の恩恵を受けることができます。

この機能の重要な要素は、SmartNIC と呼ばれる最新クラスのネットワークインターフェイスコントローラーです。SmartNIC は、計算量の多いネットワーク処理タスクを処理できるネットワークインターフェイスコントローラーです。専用のグラフィックカードがグラフィックパフォーマンスを向上させるのと同じように、SmartNIC はネットワークパフォーマンスを向上させることができます。いずれの場合も、専用プロセッサーにより、特定のタイプの処理タスクのパフォーマンスが向上します。

OpenShift Container Platform では、互換性のある SmartNIC を持つベアメタルノードのハードウェアオフロードを設定できます。ハードウェアオフロードは、SR-IOV Network Operator によって設定および有効化されます。

ハードウェアのオフロードは、すべてのワークロードまたはアプリケーションタイプと互換性があるわけではありません。次の 2 つの通信タイプのみがサポートされています。

  • pod-to-pod
  • pod-to-service。サービスは通常の Pod に基づく ClusterIP サービスです。

すべての場合において、ハードウェアのオフロードは、それらの Pod とサービスが互換性のある SmartNIC を持つノードに割り当てられている場合にのみ行われます。たとえば、ハードウェアをオフロードしているノードの Pod が、通常のノードのサービスと通信しようとしているとします。通常のノードでは、すべての処理がカーネルで行われるため、Pod からサービスへの通信の全体的なパフォーマンスは、その通常のノードの最大パフォーマンスに制限されます。ハードウェアオフロードは、DPDK アプリケーションと互換性がありません。

ノードでのハードウェアのオフロードを有効にし、使用する Pod を設定しないと、Pod トラフィックのスループットパフォーマンスが低下する可能性があります。OpenShift Container Platform で管理される Pod のハードウェアオフロードを設定することはできません。

24.12.2. サポートされるデバイス

ハードウェアオフロードは、次のネットワークインターフェイスコントローラーでサポートされています。

表24.15 サポート対象のネットワークインターフェイスコントローラー
製造元モデルベンダー IDデバイス ID

Mellanox

MT27800 Family [ConnectX‑5]

15b3

1017

Mellanox

MT28880 Family [ConnectX‑5 Ex]

15b3

1019

Mellanox

MT2892 Family [ConnectX‑6 Dx]

15b3

101d

Mellanox

MT2894 ファミリー [ConnectX-6 Lx]

15b3

101f

Mellanox

ConnectX-6 NIC モードの MT42822 BlueField-2

15b3

a2d6

24.12.3. 前提条件

24.12.4. SR-IOV Network Operator の systemd モードへの設定

ハードウェアオフロードをサポートするには、まず SR-IOV Network Operator を systemd モードに設定する必要があります。

前提条件

  • OpenShift CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。

手順

  1. すべての SR-IOV Operator コンポーネントをデプロイするには、SriovOperatorConfig カスタムリソース (CR) を作成します。

    1. 次の YAML を含む sriovOperatorConfig.yaml という名前のファイルを作成します。

      apiVersion: sriovnetwork.openshift.io/v1
      kind: SriovOperatorConfig
      metadata:
        name: default 1
        namespace: openshift-sriov-network-operator
      spec:
        enableInjector: true
        enableOperatorWebhook: true
        configurationMode: "systemd" 2
        logLevel: 2
      1
      SriovOperatorConfig リソースの有効な名前は default のみであり、Operator がデプロイされている namespace 内にある必要があります。
      2
      SR-IOV Network Operator の systemd モードへの設定は、Open vSwitch ハードウェアオフロードのみが対象です。
    2. 次のコマンドを実行して、リソースを作成します。

      $ oc apply -f sriovOperatorConfig.yaml

24.12.5. ハードウェアオフロード用のマシン設定プールの設定

ハードウェアオフロードを有効にするには、専用のマシン設定プールを作成し、SR-IOV Network Operator と連携するように設定する必要があります。

前提条件

  1. SR-IOV Network Operator がインストールされ、systemd モードに設定されている。

手順

  1. ハードウェアオフロードを使用するマシンのマシン設定プールを作成します。

    1. 次の例のようなコンテンツを含む mcp-offloading.yaml などのファイルを作成します。

      apiVersion: machineconfiguration.openshift.io/v1
      kind: MachineConfigPool
      metadata:
        name: mcp-offloading 1
      spec:
        machineConfigSelector:
          matchExpressions:
            - {key: machineconfiguration.openshift.io/role, operator: In, values: [worker,mcp-offloading]} 2
        nodeSelector:
          matchLabels:
            node-role.kubernetes.io/mcp-offloading: "" 3
      1 2
      ハードウェアオフロード用のマシン設定プールの名前。
      3
      このノードロールラベルは、マシン設定プールにノードを追加するために使用されます。
    2. マシン設定プールの設定を適用します。

      $ oc create -f mcp-offloading.yaml
  2. マシン設定プールにノードを追加します。プールのノードロールラベルで各ノードにラベルを付けます。

    $ oc label node worker-2 node-role.kubernetes.io/mcp-offloading=""
  3. オプション: 新しいプールが作成されたことを確認するには、次のコマンドを実行します。

    $ oc get nodes

    出力例

    NAME       STATUS   ROLES                   AGE   VERSION
    master-0   Ready    master                  2d    v1.26.0
    master-1   Ready    master                  2d    v1.26.0
    master-2   Ready    master                  2d    v1.26.0
    worker-0   Ready    worker                  2d    v1.26.0
    worker-1   Ready    worker                  2d    v1.26.0
    worker-2   Ready    mcp-offloading,worker   47h   v1.26.0
    worker-3   Ready    mcp-offloading,worker   47h   v1.26.0

  4. このマシン設定プールを SriovNetworkPoolConfig カスタムリソースに追加します。

    1. 次の例のようなコンテンツを含むファイル (sriov-pool-config.yamlなど) を作成します。

      apiVersion: sriovnetwork.openshift.io/v1
      kind: SriovNetworkPoolConfig
      metadata:
        name: sriovnetworkpoolconfig-offload
        namespace: openshift-sriov-network-operator
      spec:
        ovsHardwareOffloadConfig:
          name: mcp-offloading 1
      1
      ハードウェアオフロード用のマシン設定プールの名前。
    2. 設定を適用します。

      $ oc create -f <SriovNetworkPoolConfig_name>.yaml
      注記

      SriovNetworkPoolConfig オブジェクトで指定された設定を適用すると、SR-IOV Operator は、マシン設定プール内のノードをドレインして再起動します。

      設定の変更が適用されるまでに数分かかる場合があります。

24.12.6. SR-IOV ネットワークノードポリシーの設定

SR-IOV ネットワークノードポリシーを作成することにより、ノードの SR-IOV ネットワークデバイス設定を作成できます。ハードウェアオフロードを有効にするには、値 "switchdev" を使用して .spec.eSwitchMode フィールドを定義する必要があります。

次の手順では、ハードウェアをオフロードするネットワークインターフェイスコントローラー用の SR-IOV インターフェイスを作成します。

前提条件

  • OpenShift CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。

手順

  1. 次の例のようなコンテンツを含むファイル (sriov-node-policy.yamlなど) を作成します。

    apiVersion: sriovnetwork.openshift.io/v1
    kind: SriovNetworkNodePolicy
    metadata:
      name: sriov-node-policy <.>
      namespace: openshift-sriov-network-operator
    spec:
      deviceType: netdevice <.>
      eSwitchMode: "switchdev" <.>
      nicSelector:
        deviceID: "1019"
        rootDevices:
        - 0000:d8:00.0
        vendor: "15b3"
        pfNames:
        - ens8f0
      nodeSelector:
        feature.node.kubernetes.io/network-sriov.capable: "true"
      numVfs: 6
      priority: 5
      resourceName: mlxnics

    <.> カスタムリソースオブジェクトの名前。<.> 必須。ハードウェアのオフロードは vfio-pci ではサポートされていません。<.> 必須。

  2. ポリシーの設定を適用します。

    $ oc create -f sriov-node-policy.yaml
    注記

    SriovNetworkPoolConfig オブジェクトで指定された設定を適用すると、SR-IOV Operator は、マシン設定プール内のノードをドレインして再起動します。

    設定の変更が適用されるまでに数分かかる場合があります。

24.12.6.1. OpenStack の SR-IOV ネットワークノードポリシーの例

次の例は、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) でハードウェアオフロードを使用するネットワークインターフェイスコントローラー (NIC) の SR-IOV インターフェイスを示しています。

RHOSP でのハードウェアオフロードを備えた NIC の SR-IOV インターフェイス

apiVersion: sriovnetwork.openshift.io/v1
kind: SriovNetworkNodePolicy
metadata:
  name: ${name}
  namespace: openshift-sriov-network-operator
spec:
  deviceType: switchdev
  isRdma: true
  nicSelector:
    netFilter: openstack/NetworkID:${net_id}
  nodeSelector:
    feature.node.kubernetes.io/network-sriov.capable: 'true'
  numVfs: 1
  priority: 99
  resourceName: ${name}

24.12.7. ネットワーク接続定義の作成

マシン設定プールと SR-IOV ネットワークノードポリシーを定義した後、指定したネットワークインターフェイスカードのネットワーク接続定義を作成できます。

前提条件

  • OpenShift CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。

手順

  1. 次の例のようなコンテンツを含むファイル (net-attach-def.yamlなど) を作成します。

    apiVersion: "k8s.cni.cncf.io/v1"
    kind: NetworkAttachmentDefinition
    metadata:
      name: net-attach-def <.>
      namespace: net-attach-def <.>
      annotations:
        k8s.v1.cni.cncf.io/resourceName: openshift.io/mlxnics <.>
    spec:
      config: '{"cniVersion":"0.3.1","name":"ovn-kubernetes","type":"ovn-k8s-cni-overlay","ipam":{},"dns":{}}'

    <.> ネットワーク接続定義の名前。<.> ネットワーク接続定義の namespace。<.> これは、SriovNetworkNodePolicy オブジェクトで指定した spec.resourceName フィールドの値です。

  2. ネットワーク接続定義の設定を適用します。

    $ oc create -f net-attach-def.yaml

検証

  • 次のコマンドを実行して、新しい定義が存在するかどうかを確認します。

    $ oc get net-attach-def -A

    出力例

    NAMESPACE         NAME             AGE
    net-attach-def    net-attach-def   43h

24.12.8. ネットワーク接続定義を Pod へ追加

マシン設定プール、SriovNetworkPoolConfig および SriovNetworkNodePolicy カスタムリソース、およびネットワーク接続定義を作成した後、ネットワーク接続定義を Pod 仕様に追加することにより、これらの設定を Pod に適用できます。

手順

  • Pod 仕様で、.metadata.annotations.k8s.v1.cni.cncf.io/networks フィールドを追加し、ハードウェアオフロード用に作成したネットワーク接続定義を指定します。

    ....
    metadata:
      annotations:
        v1.multus-cni.io/default-network: net-attach-def/net-attach-def <.>

    <.> 値は、ハードウェアオフロード用に作成したネットワーク接続定義の名前と namespace である必要があります。

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