検索

27.3. OVN-Kubernetes ネットワークプラグインへのロールバック

download PDF

クラスター管理者は、OpenShift SDN への移行が失敗した場合に、OpenShift SDN ネットワークプラグインから OVN-Kubernetes ネットワークプラグインにロールバックできます。

OVN-Kubernetes の詳細は、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインについて を参照してください。

27.3.1. OVN-Kubernetes ネットワークプラグインへの移行

クラスター管理者は、クラスターのネットワークプラグインを OVN-Kubernetes に変更できます。移行時に、クラスター内のすべてのノードを再起動する必要があります。

重要

移行の実行中はクラスターを利用できず、ワークロードが中断される可能性があります。サービスの中断が許容可能な場合にのみ移行を実行します。

前提条件

  • ネットワークポリシー分離モードの OpenShift SDN CNI ネットワークプラグインで設定されたクラスターがある。
  • OpenShift CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • etcd データベースの最新のバックアップがある。
  • 各ノードを手動で再起動できる。
  • クラスターがエラーのない既知の良好な状態にあることを確認している。
  • すべてのクラウドプラットフォーム上のすべてのノードに対してポート 6081 上の User Datagram Protocol (UDP) パケットを許可するセキュリティーグループルールを作成している。

手順

  1. クラスターネットワークの設定のバックアップを作成するには、以下のコマンドを入力します。

    $ oc get Network.config.openshift.io cluster -o yaml > cluster-openshift-sdn.yaml
  2. 次のコマンドを実行して、OVN_SDN_MIGRATION_TIMEOUT 環境変数が設定され、0s になっていることを確認します。

    #!/bin/bash
    
    if [ -n "$OVN_SDN_MIGRATION_TIMEOUT" ] && [ "$OVN_SDN_MIGRATION_TIMEOUT" = "0s" ]; then
        unset OVN_SDN_MIGRATION_TIMEOUT
    fi
    
    #loops the timeout command of the script to repeatedly check the cluster Operators until all are available.
    
    co_timeout=${OVN_SDN_MIGRATION_TIMEOUT:-1200s}
    timeout "$co_timeout" bash <<EOT
    until
      oc wait co --all --for='condition=AVAILABLE=True' --timeout=10s && \
      oc wait co --all --for='condition=PROGRESSING=False' --timeout=10s && \
      oc wait co --all --for='condition=DEGRADED=False' --timeout=10s;
    do
      sleep 10
      echo "Some ClusterOperators Degraded=False,Progressing=True,or Available=False";
    done
    EOT
  3. 次のコマンドを実行して、Cluster Network Operator (CNO) 設定オブジェクトから設定を削除します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
    --patch '{"spec":{"migration":null}}'
  4. 以下の手順を実行して、OpenShift SDN ネットワークプラグインのプライマリーネットワークインターフェイスを定義する NodeNetworkConfigurationPolicy (NNCP) カスタムリソース (CR) を削除します。

    1. 次のコマンドを入力して、既存の NNCP CR がプライマリーインターフェイスをクラスターにボンディングしていることを確認します。

      $ oc get nncp

      出力例

      NAME          STATUS      REASON
      bondmaster0   Available   SuccessfullyConfigured

      Network Manager は、ボンディングされたプライマリーインターフェイスの接続プロファイルを /etc/NetworkManager/system-connections システムパスに保存します。

    2. クラスターから NNCP を削除します。

      $ oc delete nncp <nncp_manifest_filename>
  5. すべてのノードを移行用に準備するには、次のコマンドを実行して、CNO 設定オブジェクトの migration フィールドを設定します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
      --patch '{ "spec": { "migration": { "networkType": "OVNKubernetes" } } }'
    注記

    この手順では、OVN-Kubernetes はすぐにデプロイしません。その代わりに、migration フィールドを指定すると、新規マシン設定が OVN-Kubernetes デプロイメントの準備に向けてクラスター内のすべてのノードに適用されるように Machine Config Operator (MCO) がトリガーされます。

    1. 次のコマンドを実行して、再起動が完了したことを確認します。

      $ oc get mcp
    2. 次のコマンドを実行して、すべてのクラスター Operator が利用可能であることを確認します。

      $ oc get co
    3. あるいは、いくつかの OpenShift SDN 機能の OVN-Kubernetes 同等機能への自動移行を無効にすることができます。

      • Egress IP
      • Egress ファイアウォール
      • マルチキャスト

      前述の OpenShift SDN 機能の設定の自動移行を無効にするには、次のキーを指定します。

      $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
        --patch '{
          "spec": {
            "migration": {
              "networkType": "OVNKubernetes",
              "features": {
                "egressIP": <bool>,
                "egressFirewall": <bool>,
                "multicast": <bool>
              }
            }
          }
        }'

      ここでは、以下のようになります。

      bool: 機能の移行を有効にするかどうかを指定します。デフォルトは true です。

  6. オプション: ネットワークインフラストラクチャーの要件を満たすように OVN-Kubernetes の以下の設定をカスタマイズできます。

    • 最大伝送単位 (MTU)。このオプションの手順で MTU をカスタマイズする前に、以下を考慮してください。

      • デフォルトの MTU を使用しており、移行中にデフォルトの MTU を維持したい場合は、この手順を無視できます。
      • カスタム MTU を使用しており、移行中にカスタム MTU を維持する必要がある場合は、この手順でカスタム MTU 値を宣言する必要があります。
      • 移行中に MTU 値を変更する場合、この手順は機能しません。代わりに、まず「クラスター MTU の変更」に記載された指示に従う必要があります。その後、この手順を実行してカスタム MTU 値を宣言すると、カスタム MTU 値を維持できます。

        注記

        OpenShift-SDN と OVN-Kubernetes のオーバーレイオーバーヘッドは異なります。MTU 値は、「MTU 値の選択」ページにあるガイドラインに従って選択する必要があります。

    • Geneve (Generic Network Virtualization Encapsulation) オーバーレイネットワークポート
    • OVN-Kubernetes IPv4 内部サブネット
    • OVN-Kubernetes IPv6 内部サブネット

    以前の設定のいずれかをカスタマイズするには、以下のコマンドを入力してカスタマイズします。デフォルト値を変更する必要がない場合は、パッチのキーを省略します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge \
      --patch '{
        "spec":{
          "defaultNetwork":{
            "ovnKubernetesConfig":{
              "mtu":<mtu>,
              "genevePort":<port>,
              "v4InternalSubnet":"<ipv4_subnet>",
              "v6InternalSubnet":"<ipv6_subnet>"
        }}}}'

    ここでは、以下のようになります。

    mtu
    Geneve オーバーレイネットワークの MTU。この値は通常は自動的に設定されますが、クラスターにあるノードすべてが同じ MTU を使用しない場合、これを最小のノード MTU 値よりも 100 小さく設定する必要があります。
    port
    Geneve オーバーレイネットワークの UDP ポート。値が指定されない場合、デフォルトは 6081 になります。ポートは、OpenShift SDN で使用される VXLAN ポートと同じにすることはできません。VXLAN ポートのデフォルト値は 4789 です。
    ipv4_subnet
    OVN-Kubernetes による内部使用のための IPv4 アドレス範囲。IP アドレス範囲が、OpenShift Container Platform インストールで使用される他のサブネットと重複しないようにする必要があります。IP アドレス範囲は、クラスターに追加できるノードの最大数より大きくする必要があります。デフォルト値は 100.64.0.0/16 です。
    ipv6_subnet
    OVN-Kubernetes による内部使用のための IPv6 アドレス範囲。IP アドレス範囲が、OpenShift Container Platform インストールで使用される他のサブネットと重複しないようにする必要があります。IP アドレス範囲は、クラスターに追加できるノードの最大数より大きくする必要があります。デフォルト値は fd98::/48 です。

    mtu フィールドを更新するパッチコマンドの例

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge \
      --patch '{
        "spec":{
          "defaultNetwork":{
            "ovnKubernetesConfig":{
              "mtu":1200
        }}}}'

  7. MCO がそれぞれのマシン設定プールのマシンを更新すると、各ノードが 1 つずつ再起動します。すべてのノードが更新されるまで待機する必要があります。以下のコマンドを実行してマシン設定プールのステータスを確認します。

    $ oc get mcp

    正常に更新されたノードには、UPDATED=trueUPDATING=falseDEGRADED=false のステータスがあります。

    注記

    デフォルトで、MCO はプールごとに一度に 1 つのマシンを更新するため、移行にかかる合計時間がクラスターのサイズと共に増加します。

  8. ホスト上の新規マシン設定のステータスを確認します。

    1. マシン設定の状態と適用されたマシン設定の名前をリスト表示するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc describe node | egrep "hostname|machineconfig"

      出力例

      kubernetes.io/hostname=master-0
      machineconfiguration.openshift.io/currentConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b
      machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b
      machineconfiguration.openshift.io/reason:
      machineconfiguration.openshift.io/state: Done

      以下のステートメントが true であることを確認します。

      • machineconfiguration.openshift.io/state フィールドの値は Done です。
      • machineconfiguration.openshift.io/currentConfig フィールドの値は、machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig フィールドの値と等しくなります。
    2. マシン設定が正しいことを確認するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc get machineconfig <config_name> -o yaml | grep ExecStart

      ここで、<config_name>machineconfiguration.openshift.io/currentConfig フィールドのマシン設定の名前になります。

      マシン設定には、systemd 設定に以下の更新を含める必要があります。

      ExecStart=/usr/local/bin/configure-ovs.sh OVNKubernetes
    3. ノードが NotReady 状態のままになっている場合、マシン設定デーモン Pod のログを調べ、エラーを解決します。

      1. Pod をリスト表示するには、以下のコマンドを入力します。

        $ oc get pod -n openshift-machine-config-operator

        出力例

        NAME                                         READY   STATUS    RESTARTS   AGE
        machine-config-controller-75f756f89d-sjp8b   1/1     Running   0          37m
        machine-config-daemon-5cf4b                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-7wzcd                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-fc946                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-g2v28                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-gcl4f                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-l5tnv                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-operator-79d9c55d5-hth92      1/1     Running   0          37m
        machine-config-server-bsc8h                  1/1     Running   0          43h
        machine-config-server-hklrm                  1/1     Running   0          43h
        machine-config-server-k9rtx                  1/1     Running   0          43h

        設定デーモン Pod の名前は以下の形式になります。machine-config-daemon-<seq><seq> 値は、ランダムな 5 文字の英数字シーケンスになります。

      2. 以下のコマンドを入力して、直前の出力に表示される最初のマシン設定デーモン Pod の Pod ログを表示します。

        $ oc logs <pod> -n openshift-machine-config-operator

        ここで、pod はマシン設定デーモン Pod の名前になります。

      3. 直前のコマンドの出力で示されるログ内のエラーを解決します。
  9. 移行を開始するには、次のいずれかのコマンドを使用して OVN-Kubernetes ネットワークプラグインを設定します。

    • クラスターネットワークの IP アドレスブロックを変更せずにネットワークプロバイダーを指定するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.config.openshift.io cluster \
        --type='merge' --patch '{ "spec": { "networkType": "OVNKubernetes" } }'
    • 別のクラスターネットワーク IP アドレスブロックを指定するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.config.openshift.io cluster \
        --type='merge' --patch '{
          "spec": {
            "clusterNetwork": [
              {
                "cidr": "<cidr>",
                "hostPrefix": <prefix>
              }
            ],
            "networkType": "OVNKubernetes"
          }
        }'

      ここで、cidr は CIDR ブロックであり、prefix はクラスター内の各ノードに割り当てられる CIDR ブロックのスライスです。OVN-Kubernetes ネットワークプロバイダーはこのブロックを内部で使用するため、100.64.0.0/16 CIDR ブロックと重複する CIDR ブロックは使用できません。

      重要

      移行時に、サービスネットワークのアドレスブロックを変更することはできません。

  10. Multus デーモンセットのロールアウトが完了したことを確認してから、後続の手順を続行します。

    $ oc -n openshift-multus rollout status daemonset/multus

    Multus Pod の名前の形式は multus-<xxxxx> です。ここで、<xxxxx> は文字のランダムなシーケンスになります。Pod が再起動するまでにしばらく時間がかかる可能性があります。

    出力例

    Waiting for daemon set "multus" rollout to finish: 1 out of 6 new pods have been updated...
    ...
    Waiting for daemon set "multus" rollout to finish: 5 of 6 updated pods are available...
    daemon set "multus" successfully rolled out

  11. ネットワークプラグインの変更を完了するには、クラスター内の各ノードを再起動します。次のいずれかの方法で、クラスター内のノードを再起動できます。

    重要

    次のスクリプトは、クラスター内のすべてのノードを同時に再起動します。これにより、クラスターが不安定になる可能性があります。もう 1 つのオプションとして、ノードを一度に 1 つずつ手動でリブートすることもできます。ノードを 1 つずつ再起動すると、多数のノードを持つクラスターではかなりのダウンタイムが発生します。

    ノードを再起動するまで、クラスター Operator は正しく動作しません。

    • oc rsh コマンドでは、次のような bash スクリプトを使用できます。

      #!/bin/bash
      readarray -t POD_NODES <<< "$(oc get pod -n openshift-machine-config-operator -o wide| grep daemon|awk '{print $1" "$7}')"
      
      for i in "${POD_NODES[@]}"
      do
        read -r POD NODE <<< "$i"
        until oc rsh -n openshift-machine-config-operator "$POD" chroot /rootfs shutdown -r +1
          do
            echo "cannot reboot node $NODE, retry" && sleep 3
          done
      done
    • ssh コマンドでは、次のような bash スクリプトを使用できます。このスクリプトは、パスワードの入力を求めないように sudo が設定されていることを前提としています。

      #!/bin/bash
      
      for ip in $(oc get nodes  -o jsonpath='{.items[*].status.addresses[?(@.type=="InternalIP")].address}')
      do
         echo "reboot node $ip"
         ssh -o StrictHostKeyChecking=no core@$ip sudo shutdown -r -t 3
      done
  12. 移行が正常に完了したことを確認します。

    1. ネットワークプラグインが OVN-Kubernetes であることを確認するには、次のコマンドを入力します。status.networkType の値は OVNKubernetes である必要があります。

      $ oc get network.config/cluster -o jsonpath='{.status.networkType}{"\n"}'
    2. クラスターノードが Ready 状態にあることを確認するには、以下のコマンドを実行します。

      $ oc get nodes
    3. Pod がエラー状態ではないことを確認するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc get pods --all-namespaces -o wide --sort-by='{.spec.nodeName}'

      ノードの Pod がエラー状態にある場合は、そのノードを再起動します。

    4. すべてのクラスター Operator が異常な状態にないことを確認するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc get co

      すべてのクラスター Operator のステータスは、AVAILABLE="True"PROGRESSING="False"DEGRADED="False" になります。クラスター Operator が利用できないか、そのパフォーマンスが低下する場合には、クラスター Operator のログで詳細を確認します。

  13. 以下の手順は、移行に成功し、クラスターの状態が正常である場合にのみ実行します。

    1. CNO 設定オブジェクトから移行設定を削除するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
        --patch '{ "spec": { "migration": null } }'
    2. OpenShift SDN ネットワークプロバイダーのカスタム設定を削除するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
        --patch '{ "spec": { "defaultNetwork": { "openshiftSDNConfig": null } } }'
    3. OpenShift SDN ネットワークプロバイダー namespace を削除するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc delete namespace openshift-sdn
Red Hat logoGithubRedditYoutubeTwitter

詳細情報

試用、購入および販売

コミュニティー

Red Hat ドキュメントについて

Red Hat をお使いのお客様が、信頼できるコンテンツが含まれている製品やサービスを活用することで、イノベーションを行い、目標を達成できるようにします。

多様性を受け入れるオープンソースの強化

Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。このような変更は、段階的に実施される予定です。詳細情報: Red Hat ブログ.

会社概要

Red Hat は、企業がコアとなるデータセンターからネットワークエッジに至るまで、各種プラットフォームや環境全体で作業を簡素化できるように、強化されたソリューションを提供しています。

© 2024 Red Hat, Inc.