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第26章 OVN-Kubernetes ネットワークプラグイン

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26.1. OVN-Kubernetes ネットワークプラグインについて

OpenShift Container Platform クラスターは、Pod およびサービスネットワークに仮想化ネットワークを使用します。

Red Hat OpenShift Networking の一部である OVN-Kubernetes ネットワークプラグインは、OpenShift Container Platform のデフォルトのネットワークプロバイダーです。OVN-Kubernetes は Open Virtual Network (OVN) をベースとしており、オーバーレイベースのネットワーク実装を提供します。

重要

--cloud-provider=external オプションが cloud-provider-vsphere に設定されているクラウドコントローラーマネージャー(CCM)の場合、複数のサブネットを持つネットワーク環境で動作するクラスターに対する既知の問題が存在します。

クラスターを OpenShift Container Platform 4.12 から OpenShift Container Platform 4.13 にアップグレードすると、CM は誤ったノード IP アドレスを選択し、この操作により namespace/openshift-cloud-controller-manager/pods/vsphere-cloud-controller-manager ログにエラーメッセージが生成されます。このエラーメッセージは、クラスターのノード IP アドレスと vsphere-cloud-controller-manager Pod IP アドレスと不一致を示しています。

既知の問題はクラスターのアップグレード操作に影響しない可能性がありますが、クラスターがネットワーク要件に使用する nodeNetworking.external.networkSubnetCidr パラメーターと nodeNetworking.internal.networkSubnetCidr パラメーターの両方に、正しい IP アドレスを設定できます。

OVN-Kubernetes プラグインを使用するクラスターは、各ノードで Open vSwitch (OVS) も実行します。OVN は、宣言ネットワーク設定を実装するように各ノードで OVS を設定します。

注記

OVN-Kubernetes は、OpenShift Container Platform および単一ノードの OpenShift デプロイメントのデフォルトのネットワークソリューションです。

OVS プロジェクトから生まれた OVN-Kubernetes は、オープンフロールールなど、同じコンストラクトの多くを使用して、パケットがネットワークを通過する方法を決定します。詳細は、Open Virtual Network の Web サイト を参照してください。

OVN-Kubernetes は、仮想ネットワーク設定を OpenFlow ルールに変換する OVS 用の一連のデーモンです。OpenFlow は、ネットワークスイッチおよびルーターと通信するためのプロトコルであり、ネットワークデバイス上のネットワークトラフィックのフローをリモートで制御する手段を提供し、ネットワーク管理者がネットワークトラフィックのフローを設定、管理、および監視できるようにします。

OVN-Kubernetes は、OpenFlow では利用できない高度な機能をさらに提供します。OVN は、分散仮想ルーター、分散論理スイッチ、アクセス制御、DHCP および DNS をサポートします。OVN は、オープンフローと同等のロジックフロー内に分散仮想ルーターを実装します。たとえば、ネットワーク上に DHCP リクエストを送信する Pod がある場合、Pod はそのブロードキャストを送信して DHCP アドレスを探します。また、そのパケットに一致するロジックフロールールが存在し、応答としてゲートウェイ、DNS サーバー、IP アドレスなどを提供します。

OVN-Kubernetes は、各ノードでデーモンを実行します。すべてのノードで実行されるデータベースおよび OVN コントローラー用のデーモンセットがあります。OVN コントローラーは、ネットワークプロバイダーの機能 (Egress IP、ファイアウォール、ルーター、ハイブリッドネットワーク、IPSEC 暗号化、IPv6、ネットワークポリシー、ネットワークポリシーログ、ハードウェアオフロード、およびマルチキャスト) をサポートするために、ノード上で Open vSwitch デーモンをプログラムします。

26.1.1. OVN-Kubernetes の目的

OVN-Kubernetes ネットワークプラグインは、Open Virtual Network (OVN) を使用してネットワークトラフィックフローを管理する、オープンソースのフル機能の Kubernetes CNI プラグインです。OVN はコミュニティーで開発され、ベンダーに依存しないネットワーク仮想化ソリューションです。OVN-Kubernetes ネットワークプラグイン:

  • Open Virtual Network (OVN) を使用してネットワークトラフィックフローを管理します。OVN はコミュニティーで開発され、ベンダーに依存しないネットワーク仮想化ソリューションです。
  • Ingress および Egress ルールを含む Kubernetes ネットワークポリシーのサポートを実装します。
  • ノード間にオーバーレイネットワークを作成するには、VXLAN ではなく GENEVE (Generic Network Virtualization Encapsulation) プロトコルを使用します。

OVN-Kubernetes ネットワークプラグインは、OpenShift SDN よりも次の利点があります。

  • サポートされているプラットフォームでの IPv6 シングルスタックおよび IPv4/IPv6 デュアルスタックネットワークの完全サポート
  • Linux と Microsoft Windows の両方のワークロードによるハイブリッドクラスターのサポート
  • クラスター内通信のオプションの IPsec 暗号化
  • ホスト CPU から互換性のあるネットワークカードおよびデータ処理ユニット (DPU) へのネットワークデータ処理のオフロード

26.1.2. サポートされているネットワークプラグイン機能のマトリックス

Red Hat OpenShift Networking は、ネットワークプラグイン用に OpenShift SDN と OVN-Kubernetes の 2 つのオプションを提供します。以下の表は、両方のネットワークプラグインの現在の機能サポートをまとめたものです。

表26.1 デフォルトの CNI ネットワークプラグイン機能の比較
機能OVN-KubernetesOpenShift SDN

Egress IP

サポート対象

サポート対象

Egress ファイアウォール [1]

サポート対象

サポート対象

Egress ルーター

サポート対象 [2]

サポート対象

ハイブリッドネットワーク

サポート対象

サポート対象外

クラスター内通信の IPsec 暗号化

サポート対象

サポート対象外

IPv6

サポート対象 [3] [4]

サポート対象外

Kubernetes ネットワークポリシー

サポート対象

サポート対象

Kubernetes ネットワークポリシーログ

サポート対象

サポート対象外

ハードウェアのオフロード

サポート対象

サポート対象外

マルチキャスト

サポート対象

サポート対象

  1. Egress ファイアウォールは、OpenShift SDN では Egress ネットワークポリシーとしても知られています。これはネットワークポリシーの Egress とは異なります。
  2. OVN-Kubernetes の Egress ルーターはリダイレクトモードのみをサポートします。
  3. IPv6 は、ベアメタル、IBM Power、および IBM Z クラスターでのみサポートされます。
  4. IPv6 シングルスタックは、Kubernetes NMState をサポートしておらず、IBM Power および IBM Z クラスターでもサポートされていません。

26.1.3. OVN-Kubernetes IPv6 とデュアルスタックの制限

OVN-Kubernetes ネットワークプラグインには、次の制限があります。

  • デュアルスタックネットワークに設定されたクラスターでは、IPv4 と IPv6 の両方のトラフィックがデフォルトゲートウェイとして同じネットワークインターフェイスを使用する必要があります。この要件が満たされない場合には、ovnkube-node デーモンセットのホストにある Pod は、CrashLoopBackOff 状態になります。oc get pod -n openshift-ovn-kubernetes -l app=ovnkube-node -o yaml のようなコマンドで Pod を表示すると、以下の出力のように、status フィールドにデフォルトゲートウェイに関する複数のメッセージが表示されます。

    I1006 16:09:50.985852   60651 helper_linux.go:73] Found default gateway interface br-ex 192.168.127.1
    I1006 16:09:50.985923   60651 helper_linux.go:73] Found default gateway interface ens4 fe80::5054:ff:febe:bcd4
    F1006 16:09:50.985939   60651 ovnkube.go:130] multiple gateway interfaces detected: br-ex ens4

    唯一の解決策は、両方の IP ファミリーがデフォルトゲートウェイに同じネットワークインターフェイスを使用するように、ホストネットワークを再設定することです。

  • デュアルスタックネットワーク用に設定されたクラスターの場合、IPv4 と IPv6 の両方のルーティングテーブルにデフォルトゲートウェイが含まれている必要があります。この要件が満たされない場合には、ovnkube-node デーモンセットのホストにある Pod は、CrashLoopBackOff 状態になります。oc get pod -n openshift-ovn-kubernetes -l app=ovnkube-node -o yaml のようなコマンドで Pod を表示すると、以下の出力のように、status フィールドにデフォルトゲートウェイに関する複数のメッセージが表示されます。

    I0512 19:07:17.589083  108432 helper_linux.go:74] Found default gateway interface br-ex 192.168.123.1
    F0512 19:07:17.589141  108432 ovnkube.go:133] failed to get default gateway interface

    唯一の解決策として、両方の IP ファミリーにデフォルトゲートウェイが含まれるようにホストネットワークを再設定できます。

26.1.4. セッションアフィニティー

セッションアフィニティーは、Kubernetes Service オブジェクトに適用される機能です。<service_VIP>:<Port> に接続するたびに、トラフィックが常に同じバックエンドに負荷分散されるようにする場合は、セッションアフィニティー を使用できます。クライアントの IP アドレスに基づいてセッションアフィニティーを設定する方法など、詳細は、セッションアフィニティー を参照してください。

セッションアフィニティーのスティッキタイムアウト

OpenShift Container Platform の OVN-Kubernetes ネットワークプラグインは、最後のパケットに基づいて、クライアントからのセッションのスティッキタイムアウトを計算します。たとえば、curl コマンドを 10 回実行すると、スティッキーセッションタイマーは最初のパケットではなく 10 番目のパケットから開始します。その結果、クライアントが継続的にサービスに接続している場合でも、セッションがタイムアウトすることはありません。タイムアウトは、timeoutSeconds パラメーターで設定された時間、サービスがパケットを受信しなかった場合に開始されます。

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