1.26.3. 分散トレースプラットフォームのデプロイ
分散トレースプラットフォームには、事前に定義されたデプロイメントストラテジーがあります。Jaeger カスタムリソース (CR) ファイルでデプロイメントストラテジーを指定します。分散トレースプラットフォームインスタンスの作成時に、Red Hat OpenShift 分散トレースプラットフォーム Operator はこの設定ファイルを使用してデプロイメントに必要なオブジェクトを作成します。
Red Hat OpenShift 分散トレースプラットフォーム Operator は現時点で以下のデプロイメントストラテジーをサポートします。
allInOne (デフォルト): このストラテジーは、開発、テスト、およびデモを目的としたものであり、実稼働での使用を目的としたものではありません。主なバックエンドコンポーネントである Agent、Collector、および Query サービスはすべて、インメモリーストレージを使用するように (デフォルトで) 設定された単一の実行可能ファイルにパッケージ化されます。このデプロイメントストラテジーは、SMCP で設定できます。
注記インメモリーストレージには永続性がありません。つまり、Jaeger インスタンスがシャットダウンするか、再起動するか、または置き換えられると、トレースデータが失われます。各 Pod には独自のメモリーがあるため、インメモリーストレージはスケーリングできません。永続ストレージの場合、デフォルトのストレージとして Elasticsearch を使用する
production
またはstreaming
ストラテジーを使用する必要があります。- production: production ストラテジーは、実稼働環境向けのストラテジーであり、トレースデータの長期の保存が重要となり、より拡張性および高可用性のあるアーキテクチャーも必要になります。そのため、バックエンドの各コンポーネントは別々にデプロイされます。エージェントは、インストルメント化されたアプリケーションのサイドカーとして挿入できます。Query および Collector サービスは、サポートされているストレージタイプ (現時点では Elasticsearch) で設定されます。これらの各コンポーネントの複数のインスタンスは、パフォーマンスと回復性を確保するために、必要に応じてプロビジョニングできます。このデプロイメントストラテジーを SMCP に設定できますが、完全にカスタマイズするには、Jaeger CR で設定を指定し、SMCP にリンクする必要があります。
- streaming: streaming ストラテジーは、Collector と Elasticsearch バックエンドストレージ間に配置されるストリーミング機能を提供することで、production ストラテジーを増強する目的で設計されています。これにより、負荷の高い状況でバックエンドストレージに加わる圧力を軽減し、他のトレース処理後の機能がストリーミングプラットフォーム (AMQ Streams/ Kafka) から直接リアルタイムのスパンデータを利用できるようにします。このデプロイメントストラテジーを SMCP で設定することはできません。Jaeger CR を設定し、SMCP へのリンクを設定する必要があります。
streaming ストラテジーには、AMQ Streams 用の追加の Red Hat サブスクリプションが必要です。
1.26.3.1. デフォルトの分散トレースプラットフォームのデプロイ
Jaeger 設定オプションを指定しない場合、ServiceMeshControlPlane
リソースはデフォルトで allInOne
Jaeger デプロイメントストラテジーを使用します。デフォルトの allInOne
デプロイメントストラテジーを使用する場合は、spec.addons.jaeger.install.storage.type
を Memory
に設定します。デフォルトを使用するか、または install
で追加設定オプションを許可できます。
コントロールプレーンのデフォルト Jaeger パラメーター (Memory)
apiVersion: maistra.io/v2 kind: ServiceMeshControlPlane metadata: name: basic spec: version: v2.2 tracing: sampling: 10000 type: Jaeger addons: jaeger: name: jaeger install: storage: type: Memory